withコロナ時代のフリーランスエンジニアの生存戦略
フリーランスでiOSエンジニアをやっています。実はこのコロナ禍のちょっと前、今年の始めぐらいからお仕事が減ってきていました。昨年は常時5〜7クライアントとお付き合いがあったのが、2クライアントに。
いやいや、クライアント数が減ったぶん、それぞれのお客さんのお仕事をじっくり取り組めるようになったし、やりたくても時間がなくて後回しになってしまっていた新しい技術分野の勉強もできる。全然平気だわ〜と過ごすこと3ヶ月。
(いやまじで新規の仕事の依頼来ないんだけど.......え?これってコロナの影響?それとも単純におれがオワコン?確かに単価は高いし仕事は選ぶしわりと必須な技術をキャッチアップしないしで、技術のコモディティ化が早く参入障壁が低く常に優秀な若手が出てくるこの世界、いつ需要がなくなってもおかしくないしな...)
と、ちょっとずつ不安になってきました。
そこで試しにやってみてうまくいったのが本記事で紹介する手法です。個人的にはめちゃくちゃ画期的だと思っていて、一石五鳥ぐらいのメリットがある気がしています。
その方法とは・・・
「勉強したい分野の仕事」を、「既存のお客さんに」「成功報酬型で」「提案」する
です。
「勉強したい分野の仕事」「既存のお客さんに」「成功報酬型で」「提案」どれもがポイントで、次のような意味があります。
「成功報酬型」・・・お客さんは成果が出て満足いくときだけお金を払えばいいのでリスクがない → 提案を受け入れてもらいやすい
「勉強したい分野の仕事」・・・もともとタダでも勉強したいと思っていた分野/もしくは実装したいもの。最悪お金もらえなくても知見・経験になる。
「提案」・・・こちらからの提案なので、純度100%やりたい部分だけできる。自分の都合の良いタイミングに動ける。
「既存のお客さんに」・・・新規だと「うまくいかなかったらお代はいただきません」とはいえソースコードの共有とかの問題がある。そもそも相手が抱えている問題や温度感もわからないので、刺さる提案をしづらい。
・・・とはいえお金がもらえないと困る
と思った人もいるかもしれません。しかし成功報酬とはいえ、ある程度うまくいく算段があるから提案するわけで、実際はほぼ100%成功すると思っています。実際、成功報酬型で提案するのは海外からの依頼では昔からよくやりますが、報酬がもらえなかったことはありません。
というか、フィージビリティスタディと同様、最初にまずいちばん不安なところから手を付けるので、「こりゃ無理だな」という判断をすることになってもロスになるのはせいぜい1日とかだと思います。
今回の提案も無事成果が出て、お客さんにも喜んでいただけました。なお、単価については安くしたりはしていません。
一石五鳥
前述した通りこの方法は
1. 自分が欲しいスキル・経験を得られる
2. 稼げる
の一石二鳥以外にも多くの付随するメリットがあるなと。
3. 不況も平気になる ・仕事量が自分で調整できる
4. 多くのお客さんと信頼関係を築くことがインセンティブになる
5. 興味があって勉強していることを仕事にする確度を上げられる
等々。
僕は働き方の好みから基本的に長期契約はせずタスクベースでのお付き合いが多く、必然的に多くのお客さんとお仕事することになるのですが、これが期せずして4のような効果も生んだなと。
また今年は機械学習を勉強するにあたってまずCore ML Toolsまわりを掘り下げていたのですが、その過程で書いた本はあまり売れず、そのへんの知見を必要とする仕事の依頼も来ないので、勉強は楽しいけど仕事にできないかもなぁ、というモヤモヤもあったのですが、5の効果によりいまとなっては「仕事が来なかったらこちらから提案すればいいや」という気分です。
まとめ
需要が減ってきたフリーランスエンジニアが、成功報酬型で自分から興味のある技術を使う仕事の提案をしてみたらコロナ不景気の不安も吹き飛んでめちゃくちゃ楽しくなった、ということを書きました。
手法というより、選択肢といったほうが近いかもしれません。手法自体に目新しさがあるわけではなく、「こういうのもアリなんだ」というのが今回の発見なので。今まで通り興味のある分野でアウトプットしつつおもしろい仕事が舞い込むのを待つというのはもはや自分の基本の型として続けるだろうし、それはそれとして自分から取りに行く選択肢も得たわけです。
提案内容は都度最適なものを考える前提ですが、この手法自体は再現性もあると思っています。需要があれば(秘密保持の範疇で)もうちょっと具体的な提案内容、ポイント等も解説したいと思います。
前提となる条件が特殊だったり、個人的だったりする部分も多くあるかもしれませんが、不安を抱えているどなたかの参考になれば幸いです。
(2020.5.2追記)具体的な提案内容・方法・コツ
やっぱり具体的な提案内容が知りたい、という意見がありました。良さそうなんだけど、具体例がないといまいちピンと来ない、と。支障のない範囲で書いてみます。
提案先
過去のお手伝いしたことのある会社の事業責任者の方にDMしました。決裁権があり、かつ技術がわかる方です。
提案内容
事業のメインプロダクトとなるアプリの、わりとコアな機能のところで十分な処理速度が出ていないことは把握していました。で、そこを高速化しませんか?という提案をしました。現状はCPUでの処理となっていることを指摘した上で、GPUやNeural Engineも働かせることで高速化が見込めます、と。
ここでポイントとなってくるのが「成功報酬型」です。どれぐらいの工数でどれぐらい速くなるのか、というのはそもそもやってみないとわからないですし、それ以前に何かしらの思わぬ壁にぶつかって頓挫してしまう可能性もあります。仮に成功したとしても、fpsがほんのちょっと向上したぐらいで「○時間かかったので○百万ください」とか言われても先方も嫌でしょう。
そんなわけで、「成果を見て、工数との兼ね合いでアリと判断したときにだけ受け入れる」形を提案しました。
とはいえ結果が出るのは明日なのか1ヶ月後なのか、という目安は欲しいと思うので、これをやるなら1〜3日、これは1〜2週間、というざっくりした見込み工数も提示しました。
当初の先方の反応はどうだったか?
最初の返信から「ぜひ」という反応でした。
上に書いたようなことをすべて最初のメッセージの時点で盛り込んでいたのが良かったのではと思います。どの情報が欠けても、「よし、やってみよう」とはなりにくいためです。
たとえば成功報酬型と書いてなければ、「高速化自体は悪いことじゃないんだけど、堤さん高いし、今はいいかなぁ...」となったかもしれません。最初から「結果を見てから判断してください」と書いてあったからこそ、「じゃあとりあえず結果を見てみるか」というGoサインを出せたのかなと。
どうやって進めたか?
先方に聞いたわけではないのであくまで僕の想像でしかないですが、成功報酬型でうまくいかなかったら先方は何も失うものがないとしても、しばらく音沙汰がなかったら気持ち悪いのではないかと思います。ソースコードこそpushしないものの、作業する日は毎日状況を報告していました。
3日目ぐらいで明らかな成果が出たので、速報として改善度合いが見た目でわかるスクリーンキャプチャ動画と、数値的な改善結果を先方に送付。これはいい、と受理いただき、もろもろ整えて納品(PR作成)という流れでした。
(2020.5.3追記)実際の請求額
エゴサーチしていると、『これはつまり3日分の工賃もらったということ?』という疑問を見かけました。
3日で成果が出て先方から成果受理の返事をいただいたと上述しましたが、そこはあくまでこの仕事の価値が見えた時点であり、そこから実際に先方のリポジトリにマージされるまでに発生した諸々の作業(たとえば今回は評価用アプリも作成した)の工数も含めての請求となります。そのへんも「あとはこういう作業が残っています」と報告しつつ進めました。請求書は無事受理されています。
提案のコツ
どんな提案をしたか、どんな内容を盛り込んだかを書きましたが、要は「先方の不安に先回りして答える」ことが提案のコツだと思います。
高速化しますよ、と提案されれば、どれぐらい速くなるの?時間はどれぐらい?工賃はいくらぐらい?というのは当然判断に必要となるでしょう。で、僕としてはやってみないとわからないので、その不安を解消する意味での「成功報酬型」というわけです。
また今回のケースは適合しませんが、社内のエンジニアで十分では?(フリーランスに外注する必要もないのでは)と先方が疑問に思いそうであれば、
・どのあたりが一筋縄でいかないのか
・どういう知見が必要で、なぜ自分にはそれがあるのか、社内のエンジニアより早く(≒安く)うまくできるのか
といった「自分に任せるべき理由」の説明もあったほうが良いかもしれません。
自分としてはめちゃくちゃ良い提案だと思っていても、先方がいまいち食いついてこない可能性もあります。百聞は一見にしかず、先にプロトタイプをつくってしまうのもありだと思います。実際に動いているものをみると食いつきがまったく変わるということは多々あります。僕の場合は日々お金にならないプロトタイプやサンプルをつくっているので、最悪先方が気に入らずお金につながらなくてもむしろ平常運転です。
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