「自分はバカだから」は嫌いなのにどうして虹村億泰は許せるのか

たまに出会う。自分が何かを出来ない事に対して「自分はバカだから」という理由をつけてしまう人を。
個人的には、理由がわかっているなら改善に努めてくれよ、それを言い訳にしないでくれ、とか思ってしまう。

そういう事を理由にせずに、じゃあどうやったら出来るようになるのか、自分でも出来る努力は何かとか探して欲しい。
じゃないと問題はずっと解決しないままだ。
自分はバカだからと決めつけて何も行動しないのが一番愚かだと感じる。

しかし、何事にも例外はある。
虹村億泰だ。

私はジョジョの奇妙な冒険が大好きである。
宇宙一面白い漫画だと思っている。
特に第4部「ダイヤモンドは砕けない」を好んでいる。

ジョジョの物語は、基本的にどの部も主要人物達が最初から明確な目的を掲げており、そのゴールに向かう道に沿って物語が進んでいく。
倒すべき敵を討つ為、刑務所から脱出する為、レースで優勝する為、など。
しかし四部に関しては、最初から目的が発生している訳ではない。
じわじわと日常に潜む恐怖が顕になっていき、時間を置いて最終的に倒すべき敵の正体が明らかになっていく。

上述の「日常に潜む恐怖」自体が四部のテーマの一つになっており、言葉通り日常にフォーカスしている描写が多い。
故に四部は登場人物の日頃の生活が垣間見えるのがとても好きなのだ。

虹村億泰は、その四部の主要人物である。
主人公である東方仗助の敵として登場するが、その後は仗助にとってかけがえのない仲間となる。触れた物全てを削り取るというめちゃくちゃ強い能力を持っておきながら、本人の頭が悪すぎるせいでその能力を最大限まで活かせないという、愛らしい一面を持つ憎めない不良少年だ。

彼は「おれはバカだからよぉ〜〜〜」と発する描写があるのだが、それに関しては許せてしまう。なんで?

冒頭にも記したが、そもそもその発言を好ましく思わないのは自分の頭の悪さを理由にしていると感じるからだ。
実際、今までそういう発言をしてきた人物はそういう気を感じた。
多分色々と考えたら目の前の問題に対して何かしら対策を打てる筈なのに、考える事自体を放棄している様に見えたからだ。

では何が違うのか。

億泰がこの発言をしたコマを見返し、彼の台詞を再確認してみる。

おれはバカだからよぉ〜〜〜  心の中に思ったことだけをする 一回だけだ 一回だけ借りを返すッ! あとは何もしねぇ! 兄貴も手伝わねえ! おめーにも何もしねえ これで おわりだ

この台詞を発した文脈としては、仗助と敵対した際、彼は兄である虹村形兆と共に仗助に襲いかかったが、運悪く兄の攻撃を受け倒れてしまう。しかし仗助の能力により一命を取り留めた。その後形兆の罠にかかりかけた仗助を助けた際に発した言葉だ。

とても好感が持てる人物である。

虹村億泰は自分の頭が悪いという事を認識しながらも、彼なりに考えて、彼なりの答えを出している。
この先の展開でも彼は彼の答えを出し、前に進んでいくし。
そういう所に嫌な所を感じないんだろうという気がしてきた。

要は、自分の短所を言い訳に使うか、自分の短所を認めつつも、どうしていくかという所で差を感じるのだろう。

ひょっとしたらこの先そういう発言をする人に実際会ったら、億泰に対する思いと同じものを感じるかもしれない。

そう考えたらひとえにそういう発言をする人に対しても一概に決めつけるのは良くないなとも思った。


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