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【超短編物語】江戸の夜に舞うしましまの影

 江戸時代、田舎の小さな村「満月村」は、かつて穏やかで平和な場所だった。しかし今では、暴君の村長・大福与三郎とその取り巻きが牛耳り、村民から重税を巻き上げ、若者を無理やり徴兵して隣村へ攻め入る日々。村民の悲鳴は、夜の風に乗って遠くまで響いていた。

 そんな満月村にひっそりと住んでいるのが、一匹のしましま模様の猫、ミーである。普段はおばあさんの膝の上でゴロゴロと喉を鳴らし、愛らしい姿で村人たちに癒しを与える存在。だが、実は彼女の正体は伝説の暗殺者「ニャンニャンアサシン55号」。その名を知る者はほとんどいないが、彼女の暗殺術は数々の悪党たちを闇に葬り去ってきたのだ。

ミッション開始

 ミーはある晩、おばあさんに一声鳴いて別れを告げ、静かに満月村の中心にある村長の屋敷へと向かった。目に宿る光は、まるで月の輝きそのもの。しなやかな身体は音を立てず、屋根の上を跳び、影のように移動する。

 屋敷の屋根裏に潜り込むと、ミーは耳をピンと立てて村長一味の会話を盗み聞きした。
 「明日は新しい税を導入するぞ!今度は“空気税”だ!村の連中、息をするたびに金を払う羽目になるってわけだ!」
 その笑い声にミーの尻尾がピクンと動いた。爪を研ぎ澄ませ、ミッションの開始を告げる心の鐘が鳴る。

影の中の襲撃

 暗闇の中、ミーは音もなく村長の部屋へ忍び込んだ。村長が油断しきって茶をすすっている隙を突き、いきなり顔面に飛びかかる!
ふぎゃあああ!」  
 高らかな叫び声とともに、ミーの鋭い爪が村長の顔を引き裂く。血まみれになった村長はパニック状態で逃げ回るが、ミーは次々と取り巻きにも襲いかかる。刀を持つ者の手元を狙い、ランタンを倒して暗闇を作り出す。その間に、次々と敵を無力化していった。
 取り巻きが一人も逃げられないよう屋敷の入口を封じるミーの動きは、まるで舞踊のようだった。

最後の勝負

 残るは村長のみ。追い詰められた村長は震える声で叫ぶ。  
「おのれ!たかが猫一匹に……!」
 次の瞬間、ミーは迷いもせず、跳び上がって村長の顔に飛びつき、最後の爪を一閃。大福与三郎の暴政に終止符を打ったのだった。

静かな余生

 ミッションを終えたミーは、体中が傷だらけで、毛並みもボロボロ。そんな体を引きずりながらおばあさんの元へ帰った。

「あらまあ!ミーちゃん、どうしたの!?」
「にゃ~(ちょっと、すごい喧嘩してきただけです)」
 おばあさんは心配そうに、ミーの傷を手当てした。その優しい手つきに、ミーは幸せそうにゴロゴロと喉を鳴らし静かに目を閉じた。

 その後、満月村は平和を取り戻し、村人たちは笑顔で暮らすようになった。そしてしましま模様の猫は、おばあさんと一緒にのどかな余生を過ごしながら、再び村人たちの心を癒す存在となった。

 しかし、誰も知らない。いつか村が危機に陥ったとき、ミーの鋭い爪が再び光を放つことを。  

「ニャンニャン、ネコニャン、ネコニャンニャン…」


この物語の原作の歌
ニャンニャンアサシン55号 朱烈苦 Hei 1号


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