「忘れるなんて、出来る訳ない」
「『さよなら。』その言葉が言えなくて。」 (https://note.com/shrakusai_saka/n/n60f782342c25)の続きです。
彼に見送られ、ゆっくりと新幹線が動き出す。
最終だからか、周りは皆、眠りについている。
ふと、窓を見る。
町の中心地を離れれば、あっという間に真っ暗闇だ。
しばらくして、ワゴンを持った女性がゆっくり周ってきた。
何となく飲みたい気分になって、ホットコーヒーを頼んだ。
"お砂糖とミルクはどうされますか?"
「あ、結構です」
苦いはずのコーヒーは、やけに温かく、甘く感じられた。
そう、まるで彼の心みたいに。
彼は、いつもそうだった。
いつも優しくて、甘くて、温かくて。
そして、最後の最後まで、私のわがままに付き合ってくれた。
普通の人なら、きっと我慢できないだろう。
でも彼は違った。
最後に、『またね』と言ってくれたから。
私の一方的な都合で別れたのに、
彼は私を、まだ好きでいてくれた。
人によっては、未練がましいと言うかもしれない。
でも、それでいいと思う。
私も、同じ気持ちだから。
忘れようなんて、しなくていい。
いつかまた、会えるよ。
きっとね。