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「ねぇ、奈於は?!」
お昼休み。
"ねぇ、一緒にご飯食べよ!
" 『お、葉月!いいよ』
隣の席の葉月に誘われると、
「ねぇ〜!奈於はぁ〜??」
と、顔を膨らませた彼女がやってくる。
『あ、やべ。傘忘れた。』
『困ったなぁ…』
靴箱の前で迷っていると
"一緒に傘、入る?"
『いいの?』
『助かる〜、ありがとう麗乃』
隣に住む麗乃が助け舟を出してくれた。
「ねぇ、奈於と一緒に帰るんじゃないの?!」
『奈於は部活じゃん』
「ずーるーいー!」
『はい、文句言わずに部活行く!』
「むぅぅ…」
奈於は肩をガクンと落としながら 登校口の奥へ消えていった。
さらさらとした雨が降り続く帰り道。
"奈於は相変わらずだね"
笑いながら、麗乃は俺に話しかける。
『まぁ、あの性格は昔からだし、あれはあれでかわいいんだけどさ』
『程々にしてよ、と思う時はあるよね』
"まぁ、確かに"
麗乃は笑いながら前を向く。
『でも、その点で言えば、麗乃は昔から優しいよな』
『しかも綺麗だし、かわいいし』
"本当に?嬉しい…"
『ありがと、じゃあまた明日』
"うん、じゃあねー"
麗乃と家の前で別れる。
自分の部屋でくつろいでいると
ガチャンと音を立てて、ドアが開いた。
待て。
この家に今は俺しかいないはず。
扉の向こうには、
部活に行っていたはずの、奈於がいた。
「ねぇ、なんで奈於の前で、他の女の名前出すの?」
「奈於以外の別の女と帰ってるの?」
『いや、それは…』
『嫉妬してるのが、かわいいなぁ…って』
「理由になってない」
「しかも何?あれ」
「麗乃のこと、かわいい、だの何だの」
『いや、それは…』
「許せない」
そう言った奈於の右手に、
光るものがあるのを、俺は見逃さなかった。
『ちょっと待って、落ち着こ?』
「じゃあ、一度だけ聞くよ?」
「私のこと、好き?」
「す、好きだった」
『だった?』
「いや間違えた、好きだ、好きだってい」
俺の記憶は、ここで途絶えている。