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「SmartHR版サステナブル人事」をはじめます
こんにちは。SmartHR人事企画室の副島(@tomosoe)です。人事労務研究所と二足の草鞋を履いておりまして、このnoteは「人事統括本部/人事企画室人格」で執筆しております。さて、このたびSmartHR人事統括本部では新しいnoteを開設いたしました。1本目となるこの記事は、SmartHRは「サステナブル人事をやっていきます!」という宣言と、この考えに行き着くまでの経緯、試行錯誤をお届けできたらと思います。
サステナブル人事、ご存知ですか?
「サステナブル」という言葉を耳にする機会が増えています。SDGs(Sustainable Development Goals)の浸透により、サステナブル(持続可能)であることが企業活動において重要視され、SmartHRにおいてもその意識はもちろん高まりつつあります。
そんな中、2024年7月にVP of HRに就任した宮下さんから「サステナブル人事が注目されつつあるらしいぞ」との投げかけがありました。
サステナブル人事とは
サステナブル人事を調べてみると、このように解されているようです。
「短期的な利益を追求するだけでなく長期的な企業価値向上の視点を持って、顧客や投資家はもとより、従業員、行政、社会などさまざまなステークホルダーに応える人材マネジメント
「企業が目指す目標を利益だけに限定せず、その活動を通じて、地球環境、働く人々、様々なコミュニティに良い影響をもたらすための人事のあり方」
短期的な利益追求だけでなく、長期的な企業価値向上の視点を持ち、企業を取り巻くさまざまなステークホルダーの要請に応えるために行われる持続可能な人材マネジメントのこと。SDGsやESG投資への関心が高まっている中、企業の経営目標も変化しつつあります。これまで企業は利益を上げることを最優先してきましたが、昨今は環境への配慮やダイバーシティ推進のための取り組み、従業員の幸福の実現など、多角的な視点での経営が求められるようになりました。それを実現するためには人事戦略も変化させる必要があり、サステナビリティ経営に資する人材戦略がサステナブル人事と呼ばれます。
なるほど。サステナブル人事とはそういった概念なのですね。
浮かび上がる2つの疑問
ここで私の中で疑問が2つ浮上します。人的資本開示との違いと、サステナブル人事という言葉が初耳、つまりサステナブル人事はなぜ浸透していないのか?という点です。
■ 疑問1:人的資本開示とサステナブル人事の違い
人的資本開示とサステナブル人事の違いは「焦点の違い」があるようです。
人的資本開示:主に組織内の従業員の能力とパフォーマンスに焦点を当てる
サステナブル人事:組織全体の持続可能性と社会的責任に焦点を当てる
人的資本開示は「個人」、サステブル人事は「組織全体」といったイメージでしょうか。
■ 疑問2:サステナブル人事はなぜ浸透していないのか
「サステナブル人事」という言葉が初耳だった方も多いのではないでしょうか。安心してください。私たちも初耳です。人的資本開示については有価証券報告書への掲載義務が始まったことで、よく耳にする言葉となりました。しかし、サステナブル人事をインターネットで検索をしたり、Amazonで本を検索してみても、サステナブル人事に関連する話しは主に上記でご紹介した3つの場所からの発信が中心で、日本ではまだ浸透していないといっても過言ではないでしょうか。
でも、上記でご紹介した書籍やWebの記事にはとても重要なことが語られています。なのになぜ、サステナブル人事が浸透していないのか。この疑問をサステナブル人事を知るきっかけとなった記事を執筆された、日本総研の林さまに投げかけたところ、次のような回答をいただきました。
・人権、D&I、人的資本開示などは認知されつつあるが、単発での打ち返しになっている。
・これらは日本では黒船来襲のように捉えられているため、これら単発に対して「やっている」というポーズが優先となっており、自社で戦略的にどう捉えられるかが考えられていない。
・経営方針(経営戦略)に対してどうサステナ要素を入れるか、という考え方が大事だが、単発施策になっているので体系化されずにいる。
このお話を聞き、「なるほど!」となりました。
経営戦略 → 人事戦略から紐解いた上で、組織全体の持続可能性と社会的責任がどう連動するのかを考えていく必要があるということのようです。単発対応では手段が目的となってしまい、それぞれの対応が連動もしないので、メリットサイクルも回らなくなってしまうということなんです。
Unipos(ユニポス)代表取締役社長CEOの田中弦氏のインタビュー記事で2023年度の有価証券報告書(有報)や統合報告書の約5000社分を5段階評価をした際、全体の半数が最低ランクの1だったとの記事を拝見し、単発対応となっている企業や、何をどうやって対応(開示)したらいいのかわからない企業はまだまだ多いことが語られています。
SmartHRもスケールアップ企業として急成長していく中で、組織全体の持続可能性を強化していくための課題が山積みです。目の前の指標や業績だけを見て突っ走るフェーズは通過し、組織の持続可能性を追求しなければこの先の成長はないと考えています。人的資本開示も、D&Iも、人権問題も、環境問題も「サステナブル人事」の中の1つとして考え、それらが経営戦略→人事戦略からどうブレイクダウンされて実施されているものなのか、まずはそこを語れるようになり、それぞれの活動が連動し、体系化させていくことの必要性を林さまから学ばせていただきました。
もっとシンプルに! サステナブル人事ってつまり何!?
少しずつわかってきたサステナブル人事。でも、もう少しシンプルに、ぱっとイメージがつかみやすい表現ができないかなあ。それができれば、もっと自分たちごとになり、腹落ち感が高められるんだけどなあ。この記事を書いている私自身が「サステナブル人事ってつまりこういうこと!」を求めたくなりました。そこで改めてすでにたくさんの情報が出ている人的資本関連の書籍や記事で学んだ結果、「これでは!」というまとめができました。
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サステナブル人事とは、戦略人事と人的資本経営を連動させること。
これがサステナブル人事だと表現して良いのではと思ったのです。(※ ひとことで表すならば)
人的資本経営は「人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」として、少しずつ日本の企業に浸透してきています。(しかし単発対応になっており、体系化されていない課題あり)
一方で戦略人事とは、「企業の経営戦略の推進に資するための人材マネジメント」と解されており、戦略人事を実現するためには、人材の採用や育成、評価、報酬等の人事施策を会社の経営戦略に即して推進することが必要です。経営戦略だけを追い求めてしまうと、顧客や投資家に向けた利益の追求となり、企業が目指す目標が利益だけに限定となってしまう恐れがあると言われています。利益追求だけでなく、長期的な企業価値向上の視点を持ち、企業を取り巻くさまざまなステークホルダーの要請に応えていくために、
戦略人事 ✕ 人的資本経営=サステナブル人事
が必要であるとの解釈をしています。
つまり、戦略人事と人的資本をしっかり連動させられているか、ということを考えれば、何をしていくべきなのかは見えやすくなるのではと思ったのです。実は新しい概念でもなく、本来あるべき姿に向けた活動指針のようにシンプルに捉えていけば、さまざまなステークホルダーに応える人材マネジメントへの道は切り開いていけるのではと考えています。
サステナブルな人事を目指して
さて、ここまで長々とした私の思考整理にお付き合いいただきありがとうございました。私たちは日々、こんな感じで悩み、模索し、私たちなりの答えを導き発信をしています。「みんな悩みながら進んでいるんだ」と感じていただけましたら幸いです。
そして、サステナブル人事はSmartHRだけが行っていくものではありません。組織全体の持続可能性と社会的責任に焦点を当てることの取り組みとして、多くの企業にこの指針を知っていただき、どんな企業でもサステナブル人事に取り組んでいけるようになったらいいなと思っています。
また、サステナブル人事は「さまざまなコミュニティに良い影響をもたらすための人事のあり方」でもあります。同じ「人事」の業務に従事する皆さまにも良い影響がもたらすことができたらと、SmartHRのバリューでもあった「オープン」にお伝えしていく場所として、この「SmartHR版サステナブル人事」を開設いたしました。
本記事は「サステナブル人事をはじめます」という宣言のみとなりますが、これからスケールアップ企業としての組織全体の持続可能性強化の奮闘ぶりをお届けしていきます。ぜひこの新noteをフォローしてお待ちください。
編集後記
アウトプットができてしまえばとってもシンプルな考え方なのですが、ここに行き着くまでに実はかなりの時間を要しています。私は当初、「戦略人事」「サステナブル人事」「人的資本経営」の3つの関係性を次のように捉えていました。
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この関係性で解説をされている記事もあり、お互いの補完関係としてはこっちの表現が正解なのかもとも思ったりするのですが、この関係値となると人的資本経営との違いや戦略人事への影響に対しての説明が難しくなり、「サステナ人事って何だ?」が自分でも堂々巡りになり、筆が止まった時期がありました。
少しのクールダウン期間を経たことにより「戦略人事と人的資本経営の連動」という表現に行き着き、本noteのスタートが切れたのでした。
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SmartHR版サステナブル人事note 編集部
編集長 兼 執筆:人事企画室 副島智子
顧問:VP of HR 宮下 竜蔵
サポート:CEO室 荒木 彰