
【ネタバレ有】ヨネダコウ『囀る鳥は羽ばたかない』59話感想〜だいたいの絵図(え)が見えてきたかな〜
ihr HerZ 2025年1月号掲載のヨネダコウ『囀る鳥は羽ばたかない』59話を読んだので、その感想&自分的解釈です。
7巻発売前にこの作品を知り、ずっと単行本派だったけど、次が2年後とかになりそうなので9巻以降は本誌を追っかけることにしました。1話1話がかなり濃いので正解だった。
当然のようにネタバレ注意です。
そしてBL的な部分にはあまり目を向けておらずヤクザものとしてのストーリー解釈になってますのでそっちには期待しないよう。
まず、59話にて綱川、とうとう奥山と対峙。
奥山は癌を患っていて余命わずか(病室に入ってきた時の顔がみんないかつい・・・笑)。
奥山が桜一家を離れた経緯、その後どうしていたのか、甲斐はどこからきた人物かなどの謎が本人の口から直接語られる。
綱川は仁姫誘拐事件は甲斐の独断と知って、奥山組ではなく甲斐と竜頭をターゲットにする。
とざっくりこんなあらすじでしたね。
奥山は奥山で筋を通していたのと、娘誘拐は彼の指示ではなかった。しかし死にかけの彼に、いまさら組をどうすることもできず・・・という内容。
また世襲の件については自分の野心で出世を狙っていたわけではなく、子分に頼まれて担がれただけなんだという示唆がありますが、そこは黙って余計なことを言わない彼がかっこよかったです。私は男でも女でも無駄なことを言わない人が好き。
ちなみに今回の話で8巻にちらっと出てきた甲斐、奥山組の若頭のセリフの意味がわかるようになっています。(「こんな時ってのはどんな時ですかね、カシラ」「親不孝もんが」)
そして、井波の奥山不在情報も珍しく当たっていた笑。
そして甲斐の生い立ちも判明。甲斐も百目鬼と同じく「行き場がなかった」上に、綱川と同じくヤクザの家に生まれて父が組長。と、実は甲斐は「落ちぶれた方のサラブレッド」だったわけで、この勝負どちらが勝つのか見もの!
まあ、ボンボンなだけじゃなく正当な努力もしている綱川が勝つんだろうけど、そこが一筋縄ではいかなそうなんですよね。それにしても綱川は切れ物で、如才ないところが実にクレバー。こいつがこの作品で一番怖いよ。
で、自分が桜一家編で不思議に思っていたのは百目鬼が三角に持ってきた2億なんですよね。
・まずどこから2億用意してきたか?(ヒント:三角「ただのタタキじゃねえな」、天羽が喫茶店で聞いた興生会須藤組の会話「1億!?盗まれた!?どうやって・・・」)
・百目鬼を突き放した以上三角が2億受けとるはずないので、あのスーツケースの現金たちはどこにあるのか
私としては、奥山が語った「極道としての天秤」に百目鬼の2億が絡んでるんだろうなと思っています。なぜなら桜一家編で回収されていない大事な伏線だからです。
百目鬼の2億は、ヤクザ相手のタタキであることは作中表現から間違いないので、おそらくこれに共生会が絡んでいたんじゃないかなーと思ったんですよね。
三角に献上するための2億を、百目鬼があるヤクザ組織(or闇金とかの企業舎弟)から奪った。それが共生会絡みだった。
共生会、百目鬼を突き詰め、桜一家の構成員と判断。
甲斐出所、桜一家に恨みを持つものを探していたところ共生会と目的一致。彼らを焚き付けて綱川殺害(失敗)、娘誘拐をさせる。
桜一家も黙っておらず首謀者は殺されるが、共生会の残党が竜頭に名称変更し、正式に奥山組(一次団体は極星会。極星会は過去、道心会と抗争経験あり)ケツ持ちの半グレに。
そして今回の桜一家轢き逃げ事件。山川の借金から竜頭〜甲斐〜奥山組(矢代側は極星会vs道心会)へと繋がる。
この解釈で繋がる部分はもうひとつあって、それはなぜ百目鬼は仁姫の居場所がわかったのか?ということ。
元警察官だからという理由だけでは弱いから、やはり因縁があって百目鬼には心当たりがあったんじゃないかと思ったんですよね。前から呼び出されてたとかね。
で、さらにもう一つ。現金の2億たちはどこへ?
これ、平田と同じで女の家かな?と思ったんですよね。
自分の家に現金を置くにはとても危ないし、ガサなんか入ったときにはたまったもんじゃないから、クラブのママの家に隠してて、だから「ちょいちょい通っている」んではないかな?と。
百目鬼が今更女性と性的関係になることは、彼の行動原理的にも妹のトラウマ的にも考えにくいので、ママと付き合っているというのはやはりブラフなんだろうなと。
わかりやすく時系列にするとこう。
10年前【甲斐、奥山の伝手で桜一家へ】
→わざとタタキをして綱川の怒りを買い、片目を報復される(矢代と同じだね)。綱川への恨みアリ。
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6年前【奥山、世襲復活により桜一家を離れる/綱川が父親を継いで桜一家五代目就任】
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5年前【奥山、癌が見つかる。組員には内緒で以後療養生活へ】
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4年前【平田との抗争終結/真誠会解散/三角は道心会会長に】
→百目鬼、矢代に捨てられ組も解散し行き場がなく、三角を頼るも袖にされる。
→百目鬼、共生会関係の場から2億盗んでくる。三角は結局断るが、天羽の伝手で桜一家の部屋住みへ。
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共生会、2億の犯人を突き止め、百目鬼が桜一家の構成員だと判断。桜一家への恨みを募らせる。
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1年前【奥山、癌再発。余命わずかな状態に】
1年前、夏【甲斐が出所】
→甲斐、弱りきった奥山の姿に失望。色んなところで暴れ回って荒く稼いでいるところ、数年前に共生会が桜一家の組員から大金を盗まれたことを知る。同じく桜一家を恨む者同士、甲斐は奥山には何も言わず独断で共生会を焚き付けて、事件を起こさせる。
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1年前、10月【綱川撃たれる/仁姫誘拐事件】
→部屋住み3年目だった百目鬼、自分に恨みを持つ共生会の仕業とあたりをつけ、5人を倒して仁姫を連れ戻してくる。以後綱川に気に入られ、本家からは離れ正式な組員へ昇格。
→共生会の首謀者は桜一家に殺害されるものの、残った者で渋谷の武闘派半グレ集団「竜頭」を結成し、奥山組がケツ持ちになる。
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現在【山川の借金→桜一家の轢き逃げ事件から奥山組と誘拐事件が繋がる】
→竜頭と甲斐は以前百目鬼に奪われた金を取り返すかのごとく、甲斐が以前桜一家にいたときの情報を利用して桜一家のケツ持ちのクラブや産廃処理場の金庫から金を強奪。
【59話】
→奥山は病室におり見る影もない状況。一連の流れを知った綱川は甲斐の殺害を決意。桜一家、竜頭と甲斐に報復開始(「奥山組は狙わなくていいが、竜頭と甲斐に力を貸してるようなら遠慮なくいけ」)
→奥山、天秤の話を聞いて甲斐を呼ぶよう指示。
今後の予想【綱川、竜頭と甲斐に復讐】
→しかし、その過程で竜頭(元共生会)と百目鬼の2億の因縁が暴かれる。つまり、仁姫誘拐事件の発端が百目鬼だったことになる。
→さて、綱川どうする? 百目鬼を見放した三角や矢代の責任も問われるか?
って感じになるんじゃないかな〜〜と予想してます。
そしてその後百目鬼と矢代の関係も当然、綱川の前に露呈するだろうし、それだけでなく矢代と三角の関係にも繋がっていくはず。
三角が矢代を手離してカタギになるのを認める(=羽ばたく)のか、そうでないのか。
結局二人は結ばれるのか・・・。
桜一家も桜一家で勢力拡大のため色んなところを敵に回して天秤の重りが溜まっているので、綱川も無傷で完全勝利とはならないでしょうね。
あとは奥山の命がどこまで持つかも鍵。
ただ、奥山は結局甲斐をどうするんだろう。それが全然わからん。甲斐はやりたい放題なので守ってあげるつもりはなさそうだけど、自分で手をかけるわけでもなさそう。先代(綱川父)も亡くなっているから、義理立てる相手もいないし。
60話がいつになるのかわからないけど非常に楽しみです。
囀る〜はヤクザものとして、大変インテリジェンスかつ、男同士のドロドロした関係がしっかり描かれていて本当に面白い。
Vシネとか任侠ものドラマってアクションに振りすぎだし、多少の男同士の嫉妬とか描かれていても、男性が演じるとかっこつけてしまうのか?、泥臭くないから全然面白くないんですよね。
あと無駄に群像劇。頭数を揃えりゃいいってもんじゃない。
もっとこれくらい、男同士の人間関係を真正面から向き合える任侠ものが増え、せいぜいメインが6~7人くらいの人数でもしっかりヤクザのやり取りを描ける作品が増えることを願います。
ヨネダコウ先生万歳。最後まで、この作品を見守らせてくださいね。