中世ヨーロッパの武術
私は合気道を長らく嗜んでいるが、最近以下の本に出会った。中世ヨーロッパの武術書を絵と共に現代語訳している良書である。
雑感であるが、以下のような気づきがあった。
①中世ヨーロッパの武術は、現代まで継承されているものではない。戦争が続く地域かつ兵器技術の変化が激しく、武術として洗練されずまた文化として残っていかなかった
②ただ、レイピアや徒手格闘はフェンシング、レスリングとしてスポーツになっている。あくまでもスポーツとして残り、ボクシングなどは興行、ショーとして発展していった節もある。
③技術書の記述としてはかなりロジカルで、手•足•体の時間などという各部位の時間という概念を用いて、相手の最も遅い部位の時間で攻撃は到達するので、それよりも早く自分の部位を組み合わせて動くべきという考える。また、攻撃線という概念を導入し、相手の攻撃線を外し、自分の攻撃線を当てることを主としている
④アームレバーや背負い投げなど共通の技術も存在する。アームレバーは一教に近い
特に興味深いのは③の視点で、ドイツの技術書で書かれていたものだが、格闘•戦闘をロジカルに要素分解する考え方は西洋らしいと感じた。日本の武術書では(主語が大きいが)、身体の各部の働きを個別に捉えるというより、身体の全身の統一、心身の関係性を示すものが多い気がしている。
オイゲンヘルデルが『弓と禅』で語ったように、「日本文化や思想を真に学ぶ上では、書物だけではなく、芸道に触れる必要がある」ということがなんとなく分かったように思う。