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『ガリバー旅行記』スウィフト 読書リストvol.2

青空文庫で無料で読めたので、ざっと一読。
童話として有名な作品だが、原作は18世紀に書かれた社会風刺本。

作品は4つのパートで構成されている。
・小人の国、大人の国、ラピュタの国、(日本)、馬の国

主人公ガリバーがそれぞれの国に漂流して、生活するというお話。一般的に有名なのは一つ目の小人の国。ただ、作品としてはこの小人の国は、物語のフックでしかなく、国ごとの違いが相対化されていくところが作品の醍醐味。

小人の国で、巨人として比較的自由に生活したガリバーだが、次の大人の国ではガリバー自身が小人として扱われる。見世物にされたり、巨大な動物たちに襲われる。そういう点で、小人の国の話は大人の国の話とセットで考えるべきものであり、そこにある寓意は、ある集団における特異性・異質性は、異なる集団の中では、別の異質性になりうるということ。つまり、人間社会における優位性や劣後性は当たり前だが、相対的なものでしかなく、場所を変えると性質自体が異なる可能性がある。地元の小学校では、運動も勉強もできたクラスの人気者が、都心の学校に進学した途端、運動も勉強もできない、落ちこぼれ扱いを受ける。大航海時代に書かれた作品であることを鑑みると、開拓した現地民を遅れているという決め付ける先進国の独善性へのアンチテーゼと言える。

その次に描かれる、ラピュタの国だが、この国は技術や価値観が特殊である例。ここで死なない人種が出てくる。彼らは不死ではあるが、不老ではない。80歳を超えると記憶が曖昧になり、頑固になり、嫉妬深くなる。不死に感銘を受けたガリバーだが、彼らの生活を見て、ガッカリする。また、pcycopassで牧島が引用した「政党間の争いを終わらせるために、A党の政治家の右脳とB党の政治家の左脳を繋ぎ合わせる」という事例もこの国の例。ある種、SFチックなものの負の側面を描く、スペキュラティブデザインに近いものを感じた。

最後に、馬の国。これは馬に知性があり、その馬が家畜として知性のない人間(ヤーフ)を家畜として飼っているという国。作品の中では、スウィフトは、ここに最も言いたいことを詰め込んだのではと思う。主人公は、自分はヤーフとは異なり、知性的な人間であると主張するが、ヤーフの実態を知るうちに、そこに大きな差がないことに気づく。ヤーフは武器こそないものの、キラキラひかる石に群がり、大喧嘩を始める。何もさせないと元気がなくなり、そういう時はいつも以上に働かせると元気になるなど。帝国主義、資本主義に走る人間の本質が、動物・家畜と何ら変わりないと痛烈な批判を展開する。

●感想
作品構成としてよくできているなと思った。くどい説明はなく、特徴的な描写で読者を引き込む。その上で、寓意性の高い、いくつもの国を紹介しながら、社会・人間の本質に切り込む。アニメでいうと、キノの国などは近い手法を使っている。

今の自分に引き直して考えると少し面白いかもしれない。
自分は、他者を虐げうる巨人なのか、見世物にされる小人か、不死の人間か、ヤーフか。スウィストが言いたいのは、我々はそのどれにもなりうるということなのだろう。そしてそのどれであるかも極めて相対的なものでしかないということ。

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