バイオメカニクスと合気道
バイオメカニクスという学問領域を知っているだろうか。「生体力学」と訳され、物理学や解剖学等の知見をもとに、人体の動きを複合的に捉える学問である。私は専門家ではないが、合気道を考えるきっかけになるかもと以下の本を読んでみた。
一万円弱する教科書だが、体系的かつ基礎的なバイオメカニクスを学ぶという意味で非常に良い本である。
この本を読んで、合気道の稽古のアプローチの一つとして、技の理合を物理学的に理解することも大切ではないかと考えている。理合を科学的に捉えるという発想自体は以下の本から得たものだが、今自分なりにも研究中である。
まだ研究中なので具体的なことは書けないが、バイオメカニクス的に合気道を捉えると、重心の移動によるエネルギーの伝達、相手の運動量のベクトルから外れる(=相手の攻撃の捌き、入身・転換)、相手の重心を相手に気づかれることなくCOPから動かす(=崩し)等が技術の根幹にあると言えるだろう。
逆に筋肉が発揮するパワー(これは筋肉の収縮力×筋肉の長さで求められ、収縮力は筋肉の断面積に比例する)を積極的に活用することは想定されていないとも言える。
上記の技術の根幹は全て物理学で説明でき、現象を数式で表現できる類のものである。もちろん全ての技を単純に物理学に還元することは難しいが、理合をシンプルに捉えることで、技をいつもとは違う観点から捉えることはできるのではないだろうか。合気道は試合がない分、型稽古を通じて理合を理解し、体現していくことに非常に重きを置く武道である。だからこそ合気道を学ぶ者として、科学的に理合を捉え、それを再現できるようになることを追求していきたい。