米国市場:1/16週の振返りと1/23週の予定
市場概況
前週のS&P500指数は金曜日に前日比+1.89%と大幅上昇し、前週比-0.66%と何とか1月のラリーを継続できるような形になりました。前週は4000を超えると弱気筋が復活し、週半ばは大きく下げました。週末の大幅上昇によって、4000に迫りましたが次週はこれをクリアし、4100をターゲットにできるかが今後の伸びにも影響してくると思います。
景気後退の深さや期間、FRB金利の終値については、市場関係者内ではコンセンサスが出来上がりつつも、まだ悲観シナリオは残されていると思います。今週、アルファベットが12000人のレイオフを発表するなど、ハイテク系企業の新たなレイオフの発表や米国の債務上限突破が懸念されます。また、予想を下回る業績も懸念材料となってきています。EPSの伸びが低位に推移することからS&P500指数の伸びもEPSのサポートは期待できず、金利の低下に伴うPERの伸びでしかカバーできないため、金利の低下が市場の予想通りに動かないとサプライズとして相場が荒れるかもしれません。
金利もインフレプレッシャーがなくなったことが確認される必要があります。このところ、CPI、PPI等がインフレが収まりつつあるシグナルを発信してくれていますが、FRBが目標としている2%まではまだもうしばらくかかりそうです。
中国の景気回復と「短く浅い」と予想されている景気後退は、FRB の施策にとっては厄介なものかもしれません。金曜日の朝、ラガルドECB総裁は、中国の景気回復がエネルギー需要に拍車をかけ、価格も上昇する可能性があると指摘しました。特に欧州ではインフレが続くことととらえられることもできるかと思います。プロクター・アンド・ギャンブルは2月に再値上げを行うと発表しており、他の企業も追随する可能性があります。2月1日のFOMCの後の記者会見では、今後の金融政策の動きと、金利を高止まりさせ、制限的な水準に保つ期間に大きな注目が集まるものと思われます。
ただ、今週はいくつかの重要な経済指標があり、また四半期決算を発表する企業の数も急増してくるため、これらの結果をもって市場は景気後退や業績、その他の予想を見直すことになりそうです。
米国経済
1/18(水):小売売上高、生産者物価指数(PPI)、設備稼働率、鉱工業生産指数
小売売上高は前月比‐1.1%と予想-0.9%を下回りました。前回修正値は-1.0%でした。
PPIは6.2%と予想6.8%を下回りました。前回修正値は7.3%でした。こちらも前月ベースでは-0.5 %でした。
設備稼働率は78.8%と予想79.5%を下回りました。前回修正値は79.4%でした。
鉱工業生産指数は前月比-0.7%と予想‐0.2%を下回りました。前回修正値は‐0.6%でした。
1/19(木):住宅建築許可件数・住宅着工件数、新規失業保険申請件数
住宅建築許可件数は133万件と予想137.1万件を下回りました。前回修正値は135.1万件でした。住宅着工件数は138.2万件と予想136万件を上回りました。前回修正値は140.1万件(修正前142.7万件)でした。住宅着工件数、建築許可件数ともに下げています。業界としては冬ですね。
新規失業保険申請件数は19万件と予想21.3万件を下回りました。前回値は20.5万件でした。
1/20(金):中古住宅販売件数
中古住宅販売件数は400万件と予想と一致しました。前回値は410万件でした。販売価格中央値は$366,900でした。価格はようやく落ち着いてきました。販売件数は低迷してますが、そろそろボトムでしょうかね。
ファクトセットによると、S&P500に属する企業のうち11%が2022年第4四半期の決算を1月20日時点までに発表しています。これらの企業のうち、67%が予想を上回る実績EPSを発表していますが、5年平均の77%、10年平均の73%を下回っている状況です。企業全体では、予想を3.3%上回る利益を報告しており、5年平均の8.6%、10年平均の6.4%を下回っています。
第4四半期の混合型(発表済みの企業の実績と未発表の企業の推定結果を組み合わせたもの)の減益率は、先週末が-4.0%、第4四半期末(12月31日)が-3.2%だったのに対し、20日時点では-4.6%とさらに下がってきました。
金融セクターの企業のネガティブな業績サプライズと業績予想の下方修正が、先週と12月31日以降の指数全体の減益幅を拡大させる最大の要因となっています。仮に-4.6%が今期の実際の下落率とすると、指数が前年同期比で減益となるのは2020年第3四半期(-5.7%)以来となります。
売上に関しては、S&P 500種構成企業の64%が実際の売上を予想を上回って報告しており、これは5年平均の69%を下回っていますが、10年平均の63%は上回っています。企業全体では、売上は予想を0.3%上回り、5年平均の1.9%、10年平均の1.3%も下回っています。
こちらもEPS同様、下がってきており、第4四半期の混合売上成長率は、先週の売上成長率3.8%、第4四半期末(12月31日)の売上成長率3.9%に対 し、現時点では3.7%となっています。
今後の見通しとして、アナリストは2023年上半期は減益の予想ですが、下半期は増益と予想されています。
2023年第1四半期と第2四半期については、アナリストは-1.1%と-1.2%の収益減少を予測しています。2023 年第 3 四半期と第 4 四半期については、アナリストは 4.6%と 10.5%の増益を予想しています。2023年通期では、アナリストは4.2%の増益を予測している。
フォワード12ヶ月PERは17.0であり、5年平均(18.5)、10年平均(17.2)を下回っている。
今後1週間、S&P500種構成企業93社(うちダウ30種構成企業12社)が第4四半期の決算を発表する予定です。
来週の主な決算発表(予定)
1/23(月):
<寄付き前>Baker Hughes (BKR), Synchrony Financial (SYF),
<引け後>Brown & Brown (BRO), Zions Banoration NA (ZION),
1/24(火):
<寄付き前>3M (MMM), D R Horton (DHI), Danaher oration (DHR), General Electric (GE), Halliburton (HAL), InvesLtd (IVZ), Johnson & Johnson (JNJ), Lockheed Martin (LMT), PACCAR (PCAR), Raytheon Technologies (RTX), Travelers Companies (TRV), Union Pacific oration (UNP), Verizon Communications (VZ),
<引け後>Canadian National Railway (CNI), Capital One Financial (COF), F5 (FFIV), Intuitive Surgical (ISRG), Microsoft (MSFT), Texas Instruments (TXN), Western Alliance Banoration (WAL),
1/25(水):
<寄付き前>Abbott Laboratories (ABT), Amphenol oration (APH), ASML Holding NV (ASML), AT&T (T), Automatic Data Processing (ADP), Bank of America (BAC), Elevance Health (ELV), Freeport-McMoRan (FCX), General Dynamics oration (GD), Hess (HES), Kimberly Clark (KMB), Marketaxess Holdings (MKTX), Nasdaq (NDAQ), NextEra Energy (NEE), Norfolk Southern (NSC), TE Connectivity Ltd (TEL), Teledyne Technologies (TDY), Tesla (TSLA), Textron (TXT), US Ban (USB),
<引け後>Ameriprise Financial (AMP), Crown Castle (CCI), CSX oration (CSX), IBM (IBM), Lam Research (LRCX), Las Vegas Sands (LVS), Levi Strauss (LEVI), Packaging Of America (PKG), Raymond James Financial (RJF), Seagate Technology Holdings PLC (STX), ServiceNow (NOW), Steel Dynamics (STLD), Teradyne (TER), United Rentals (URI),
1/26(木):
<寄付き前>Alaska Air (ALK), American Airlines Group (AAL), Archer-Daniels-Midland (ADM), Blackstone (BX), Comcast oration (CMCSA), Dow (DOW), Marsh & McLennan Companies (MMC), Mastercard (MA), McCormick (MKC), Northrop Grumman (NOC), Nucor (NUE), Rockwell Automation (ROK), SAP SE (SAP), Sherwin-Williams (SHW), Southwest Airlines (LUV), Tractor Supply (TSCO), Valero Energy (VLO), Xcel Energy (XEL),
<引け後>Arthur J. Gallagher & Co. (AJG), Eastman Chemical (EMN), Intel (INTC), KLA (KLAC), L3Harris Technologies (LHX), Resmed (RMD), Visa (V), W R Berkley (WRB), Weyerhaeuser (WY),
1/27(金):
<寄付き前>American Express (AXP), Booz Allen Hamilton Holding (BAH), Charter Communications (CHTR), Chevron (CVX), Colgate-Palmolive (CL), HCA Healthcare (HCA), Roper Technologies (ROP),
米国の主な経済指標
1/23(月):
1/24(火):
1/25(水):
1/26(木):耐久財受注(前月比)、新規失業保険申請件数、新築住宅販売件数
1/27(金):個人所得・支出、PCEコアデフレータ
今週の着目点
今週の経済指標は、3つの重要なデータに注目していきたいと思います。まず、1月のPMIが週前半に発表されます。こちらでは、新規受注の推移を確認することによって、景気の動向がどのように動いているかを確認していきたいです。週半ばには2022年第4四半期のGDPが発表され、同期間のPCE価格指数も発表されます。4QのGDP成長率がどうであったか、そして今後のGDPがどうなりそうなのかを知る手がかりなると思います。
最後に、週末に発表される12月の個人所得と個人消費に関するデータも注目です。11月の消費者信用統計で、消費者がクレジットカードによる負債を抱え続けていることが示されたため、12月の個人消費は、特に年末商戦を考えると、個人所得の伸びを上回る可能性が高いです。12月の消費者信用統計は、今年前半の消費者の可処分所得の動向を占う上で、非常に興味深いものとなると思います。