米国市場:11/27週の振返りと12/4週の予定
市場概況
先週のS&P500指数は、4,594.63と前週比+0.77%で終了しました。NASDAQは14,305.03と前週比+0.38%で終了しました。
先週で11月が終わりました。11月の株価は絶好調といってもいいほどよく伸びました。S&P500は+8.92%、NASDAQは+10.70%でした。こんな月が続くことを望んでいたいのですが、その月も終わり12月に入り、24年に向けての動きを考える時期に入ってきました。
12月はアノマリー的には株式市場にとって2番目に好調な月です。誰もが強気になるサンタクロース・ラリーやタックスロスセリング、デッド・キャット・バウンスなどを考慮する時期でもあります。今年はS&P500は20%近く上昇しており、この好調な株式市場を受けてタックスロスセリングが行われ、個別株の動きも好調なものと不調なものとの2極化が進むのは12月になるのではないかなと思います。また、デッド・キャット・バウンスも年々早くなってきており、これも12月末に発生する可能性も確認しておく必要があります。
12月1日も上昇して終了しおり、このまま好調さを持続してくれれば嬉しいのですが、好調な時に警笛を鳴らす人は少ないため、Fear&Greed指数、VIX指数などの動きをしっかりと観察しながら12月も過ごしてったほうがよいかなと思います。
先週は、12月1日金曜日にパウエル議長が講演し、インフレについて警戒を緩めていない旨の趣旨を述べています。市場参加者の予想通りの展開であり、10月までの6カ月間の主要インフレ指標が平均2.5%と、FRBが目標とする2%に近い水準であったことを指摘しており、政策金利は「かなり制約的な領域に入っている」とし、「われわれは得たいと思ったものを得つつある」と述べています。つまり、今の政策金利に5.25-5.50%で十分だとの自信とも受け止めており、12月の会合も政策金利3会合連続で据え置くのではないかと市場は考えていると思います。Fed Watch Toolからも97.5%が据え置きを予想しています。また、この発言を受けて、3月には利下げの可能性を考える市場参加者も増えてきており、結果、長期金利が4.2%台まで下落するなど1日の株式市場の上げを後押ししていました。
長期金利の動きをみると直近のピークからはしっかりとした下降トレンドを形成しており、インフレが後退していると債券市場も考えているものと思われます。ただ、経済指標はまだ好調なことを示してはいますが、労働市場はちょっと変化してきており、景気は減速しつつあるかもしれないが、成長率の鈍化があったとしても、本格的な景気後退には至らず、わずかな波及にとどまるかもしれないという「ソフトランディング」が現実としてみえてきているのかもしれません。
そのことを示すように先週の経済データは良好でした。シカゴPMIは驚くほど好調、建設支出は増加、ISM製造業は好調、物価は下落し、S&PグローバルPMIは数ヶ月の縮小の後、ほぼ一貫した成長(50以上)を示していました。また、PCEコアデフレータは3.5%、PCEデフレータは3.0%とまだFRBの目指す水準には至っていませんが、しっかりとインフレが鎮静化に向かっていることが引き続き確認できました。
11月30日にOPEC+の会合が開かれ追加の協調減産は見送られました。一部の有志国で2024年1~3月期に日量計約220万バレルの自主減産を行うことを決めました。この結果を受けて、WTI指数はは75ドル台を割り込み週末時点では74ドルとなっていました。
エネルギー価格の下落は世界経済が弱くなりつつあるということを反映しており、そんな中アメリカは比較的好調を維持していることから、今後もアメリカに資金が集まってくるのではないかなと考えてしまいます。
株式市場
全体として、S&P500構成企業の98%は2023年第3四半期の結果を12月1日までに発表しています。このうち82%の企業が予想を上回る実績EPSを発表しており、これは5年平均の77%、10年平均の74%を上回っています。仮に82%が今四半期の最終的な数字であれば、S&P500構成銘柄のうちEPSのポジティブ・サプライズを報告した企業の割合は2021年第3四半期(82%)以来最高となる。また、利益の実績値では予想を7.2%上回る業績を報告しており、これは5年平均の8.5%を下回るものの、10年平均の6.6%を上回っています。
第3四半期決算は前期末に比べプラスとなっています。第3四半期のブレンデッド(報告済み企業の実績と未報告企業の推定実績を合算)増益率は、第3四半期末(9月30日)時点の-0.3%に対し、4.8%となっています。
売上高に関しては、S&P500構成企業の62%が予想売上高を上回った発表をしており、これは5年平均の68%、10年平均の64%を下回っています。仮に62%が今四半期の最終的な数字であれば、S&P500構成企業のうち収益がプラスとなるサプライズを報告した企業の割合は2020年第1四半期(56%)以来最低となります。売上高の伸びを比較すると企業全体では予想を0.7%上回り、5年平均の2.0%、10年平均の1.3%を下回った。仮に0.7%が当四半期の最終数字となった場合、当インデックスが報告した収益のサプライズ率は2020年第1四半期(0.9%)以来最低となります。
第3四半期の混合収益成長率は、第3四半期末(9月30日)時点の収益成長率1.6%に対し、12月1日時点では2.4%となっています。同指数にとって11四半期連続の増収となります。
今後の見通しとして、アナリストは2023年第4四半期の利益成長率(前年同期比)を3.0%と予想しており、これは9月30日時点の予想8.1%を下回っています。CY2023のアナリスト予想(前年同期比)は0.8%で、9月30日時点の予想0.9%を下回っています。CY2024については、アナリストは(前年比)11.7%の増益を予想しており、これは9月30日の予想12.2%を下回っています。
12ヵ月予想PERは18.7で、5年平均(18.8)を下回るが、10年平均(17.6)を上回る。第3四半期末(9月30日)の予想PER17.8も上回っています。(Source:FactSet)
来週の主な決算発表(予定)
12/4(月):
<寄付き前>Science Applications (SAIC)
<引け後>-
12/5(火):
<寄付き前>Autozone (AZO), J M Smucker (SJM)
<引け後>Box (BOX), Mongod (MDB), Sentinel One (S), Toll Brothers (TOL)
12/6(水):
<寄付き前>Sprinklr (CXM), Campbell Soup (CPG), Ollie's Bargain Outlet (OLLI)
<引け後>C3.ai (AI), Chewy (CHWY), GameStop (GME)
12/7(木):
<寄付き前>Dollar General (DG)
<引け後>Broadcom (AVGO), Cooper (COO), Docusign (DOCU), lululemon (LULU), Smartsheet (SMAR), Vail Resorts (MTN)
12/8(金):-
米国の主な経済指標
12/4(月):
12/5(火):製造業新規受注、耐久財受注
12/6(水):ISM非製造業景気指数、ADP雇用者数
12/7(木):新規失業保険申請件数
12/8(金):失業率、非農業部門雇用者数、ミシガン大学消費者信頼感指数
今週の着目点
11月末ぐらいからグロース株(NET、CRWD、DDOG)等が活況を呈しており、ここ1,2週間で大きく上がっています。これらの特徴としてコロナ下で大きくもてはやされましたが、その後は、成長率に応じたバリュエーションとなってきていましたが、またPERが大きく上がってきています。景気に若干の陰りが見えてきている状態になっており、アトランタ連銀のGDPナウモデルは今四半期のGDPを1.2%と予想しています。つまり、全体の成長には陰りが見えてきており、この状況下でも大きく成長する株にプレミアムが支払われる時代がまた来ているのかなと思わされます。このストーリーが本物なのかはまだわかっておらず、今週も観察を続ける必要があるかなと思います。
今週は労働市場に対しての統計が発表されます。労働市場も先月ぐらいから若干の減速を見せてきており、11月の結果がどのように反映されるかを確認していきたいと思います。