米国市場:10/3週の振返りと10/10週の予定
市場概況
10月最初の週は、なべ底相場から一気に脱出するような様相を見せる上昇で始まりました。FRBがインフレ対策の軸足を移すとの期待間からの上昇で舌が、すぐに変調が来ています。
今週に発表された経済データで、インフレは依然根強く、雇用市場は依然と需要が強いことが確認されたことにより、上昇の機運が一気に亡くなったように思います。
先週はFRB高官が相次いでタカ派的なコメントを発表し、FRBは仕事が終わるまでインフレとの戦いに留まると明言しています。このため、現状、すぐには利下げが発生しないという認識が市場にコンセンサスとして形成され、一連のネガティブな業績事前発表やコンセンサス予想を下回る業績ガイダンスによって、3Q期の決算シーズンは予想を下回る企業が続出するものと考えられます。このような状況の中、地政学的な緊張は高まり続け、バイデン大統領は核リスクの増大を警告しています。これらの要因が重なり、主要株価指数は先週末比でプラスで終わりましたが、週前半の上昇をほとんど打ち消すような形となって終了しました。
米国経済
10月3日:ISM製造業景気指数
ISM製造業景気指数は50.9と予想52.5を下回りました。前回値は52.8でした。
製造業景気指数は、50を引き続き超えてはいますが21年後半より右肩下がりの状況です。インフレ・サプライチェーンの混乱、それに利上げも重なったためと考えられます。
個別項目を見てくると、入荷遅延指数は、50に近づいてきており改善の兆しが出てきているものとみられます。仕入れ価格も似たような動きをしており、サプライチェーンの混乱、原材料価格の高騰によるインフレ圧力はよわ回っている可能性があります。
10月4日:耐久財受注、製造業新規受注
耐久財受注は前月比-0.2%と予想と一致しました。前回値は0.2%でした。
耐久財の受注が減ってきていることは、今後の製造業の見通しについて、弱気になっていることであり、需要が減退しているとみている可能性があります。
製造業新規受注は前月比0.0%と予想0.3%を下回りまわりました。前回値は-1.0%でした。ISMでは新規受注は47.1と50を下回っており、新規の受注がよわ回っていることを裏付ける発表となっています。
10月5日:ISM非製造業景気指数
ISM非製造業景気指数は、56.7と予想56.4を上回りました。前回値は56.9でした。非製造業景気指数は、製造業景気指数と比較すると堅調なようですが、それでも前月よりは鈍化してきています。70に迫る値になった時期に比べると平時に戻ってきたと考えられます。こちらも、入庫遅延、仕入れ価格ともにおちついてきており、サプライチェーンの混乱、原材料価格の高騰は平時に戻りつつあると考えてもよいかと思います。
10月6日:新規失業保険申請件数
新規失業保険申請件数(前週比)は21.9万件と予想20.2万件を上回りました。前回修正値は19万件でした。
こちらも歴史的に低い値が続いており、労働市場は引き続きひっ迫していることを示しているようにみえます。
10月7日:失業率、非農業部門雇用者数
失業率は、3.5%と予想3.7%を下回りました。前回値は3.7%でした。
非農業部門雇用者数は、26.3万人と予想26.4万人を下回りました。前回値は31.5万人でした。
ほぼ市場予想と一致しています。インフレへの影響が大きい「平均時給」は景気はほどほどに底堅さを保ちつつ、インフレへの影響が大きい「平均時給」は32.46ドルと前年比4.98%とやや鈍化しました。また、労働参加率は62.4%→62.3%へと小幅に鈍化してます。労働人口の増加によるインフレ抑制という流れは期待できなさそうです。
CMEのフェドウォッチ・ツールは、2023年2月の会合までにFF金利が450-475bpに達する確率を63.7%としています。ちなみに、現在のFF金利は300-325bpのため、あと150bpsありますが、この場合、国債利回りは上昇し続け、ドルも上昇することになる可能性があります。また、金曜日にニューヨーク連邦準備銀行総裁兼連邦公開市場委員会副委員長のジョン・ウィリアムズが、金利は時間をかけて4.5%程度まで上昇する必要があるが、引き締めキャンペーンのペースと究極のピークは経済状況次第であると述べています。
株式
今週から決算シーズンの始まりということもあり、前週と比較して大きなアップデートはありません。
S&P500の(前年同期比)利益成長率は2.4%と予想されております。また、売上成長率では、前年同期比8.5%と予想されています。6月末時点での予想値よりもいずれも低い状態となっています。また、2022年第4四半期の収益成長率を3.6%、2022年CYの収益成長率を7.3%と予想しています。2023 年第 1 四半期と第 2 四半期については、アナリストは 6.2%と 5.1%の売上成長を予測となっています。2023 年 CYは、アナリストは 7.9%の売上成長の予想となっています。
この結果、フォワード12ヶ月PERは15.8となっており、5年平均(18.5)、10年平均(17.1)を下回っている状況です。(Fact Set)
来週の主な決算発表(予定)
10/10(月):
<寄付き前>
<引け後>
10/11(火):
<寄付き前>AZZ (AZZ)
<引け後>
10/13(水):
<寄付き前>
<引け後>Duck Creek Technologies (DCT), PepsiCo (PEP),Taiwan Semiconductor (TSM)
10/14(木):
<寄付き前>BlackRock (BLK), Delta Air Lines (DAL), Domino's Pizza (DPZ),
Fastenal (FAST), Walgreens Boots Alliance (WBA).
<引け後>
10/15(金):
<寄付き前>Citigroup (C), JPMorgan Chase (JPM), Morgan Stanley (MS), PNC (PNC), US Bancorp (USB), United Health (UNH), Wells Fargo (WFC).
<引け後>
米国の主な経済指標
10/10(月):
10/11(火):
10/12(水):生産者物価指数(PPI)
10/13(木):消費者物価指数(CPI)、新規失業保険申請件数
10/14(金):小売売上高、ミシガン大学消費者信頼感指数、企業在庫、輸入物価指数
今週の着目点
先週の経済指標は、製造業・サービス業という経済活動の視点と、9月の雇用状況にスポットが当たっていました。9月の失業率は低下しましたが、賃金の上昇率が少し鈍ってきましたので、FRBの政策転換にも少し目が出てきたような気がしています。ISMの内容は9月もインフレ圧力が継続したことを示唆する内容が含まれており、今週の9月消費者物価指数と生産者物価指数とインフレ状況に焦点が当たると思います。8月時点の指数と比較し、またコンセンサス予想と比較してどうなのかをしっかり確認しておく必要があります。FRBの利上げが停止することを確認するためには、過去数ヶ月と比較して低下のトレンドが見えていることが必要です。
また、今週は9月の小売売上高が発表されます。9月期の包括的な振り返りも含まれており、9月期の決算シーズンに向けての材料となると思います。
13日から3Qの決算発表が本格化します。それらを見ながら相場の方向性を確認していくことになるかと思います。