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第二創業期のSHOWROOM。ライブ配信からエンタメテックへの転換

2019年12月17日、SHOWROOM株式会社(以下、SHOWROOM)は、今後のビジネス戦略や開発中の新たな動画メディア、AR/VR技術を活用した事業などについて発表する「Entertainment Technology Conference 2019(エンタメテック・カンファレンス 2019)」を開催しました。カンファレンス内ではCEO 前田裕二とCTO 佐々木康伸、COO 唐澤俊輔が登壇し、SHOWROOMの今後の展望について発表。ここではその模様をレポートします。

エンターテインメント市場を、テクノロジーでアップデートする

最初に登壇したのは、CEO 前田です。前田はカンファレンス名の「Entertainment Technology Conference 2019(エンタメテック・カンファレンス 2019)」に込めた意味や、今後SHOWROOMが目指す方向性について解説しました。

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「エンターテインメントはもっと大きな価値を世界に生み出していくポテンシャルがあるという思いを、このカンファレンス名に込めています。SHOWROOMは『すべての人生に、夢中を』という新しいスローガンを掲げて、第二創業期をここから始めてまいります。

私たちはエンターテインメントの可能性を拡張する企業になりたい。SHOWROOMは『ライブ配信プラットフォーマー』から『エンタメテックカンパニー』へと変化します。エンターテインメント市場全体を、テクノロジーを用いてアップデートしていきます」

SHOWROOMが注力していくのは、下図のオレンジ色の枠で示された領域です。エンターテインメントにおいてはメディア領域とライブ領域に、テクノロジーにおいては5G通信とAI(人工知能)、AR/VR(拡張現実/仮想現実)にフォーカスしていきます。

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「ユーザーが余暇の時間を費やす、いわゆる余暇市場は全体で72兆円を超えるほどの規模です。しかし、TVは3.5兆円、ライブ興行は0.6兆円、映画は0.2兆円ほどの市場規模であり、余暇市場全体と比較するとメディア領域・ライブ領域が占める割合は小さい。まだまだ大きく成長できるようなポテンシャルを秘めています」

前田は次に、ユーザーに起きた「メディア環境の変化」について言及します。スマートフォン(以下、スマホ)の普及に伴い、エンターテインメントとの接点は変化しました。

かつてユーザーは「家や映画館などで、まとまった時間のなかでコンテンツに触れる」ことが当たり前でした。ですが、スマホの登場以降は「いつでもどこでも細切れな時間でコンテンツに触れる」ことが可能になったのです。若者の映像コンテンツの視聴傾向を、前田は以下のスライドで示します。

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スマホの登場以降、動画メディアの“作り手”の性質も変化しました。スマホ登場以前の動画メディアでは、ユーザーはプロの作成したコンテンツを視聴するのが一般的でした。TVや映画館などのプラットフォームはマスに向けた情報発信を前提としており、可能な限り多くの方々にリーチする最大公約数的なコンテンツ制作が行われてきたのです。

一方でスマホ登場以降の動画メディアでは、アマチュアの作成したコンテンツを楽しむのが当たり前になりました。スマホやPCの普及によって、誰もが作り手になれる時代になったためです。必ずしもマスを対象としてコンテンツをつくる必要はなくなり、コンテンツの種類もユーザーの好みも多様化しました。

前田はTwitter・InstagramなどのSNSや、TikTok・YouTubeなどの動画プラットフォームを例として挙げ「私たちがいかに、アマチュアの方々が作成したコンテンツを日常的に楽しんでいるか」を解説します。

スマホ登場以前の動画メディアを1.0、スマホ登場以降の動画メディアを2.0と定義するならば、次のフェーズである3.0にはどのようなメディア形態が出現するのでしょうか。

「スマホ時代におけるスキマ視聴の時間に、プロが作ったコンテンツを楽しむような未来が来る。私たちはそう考えています」

プロの作成したコンテンツは、なぜメディア2.0において主流になりにくかったのでしょうか。その理由はネットワーク環境にあります。プロが実現したいと考えているコンテンツのクオリティーを、4Gを前提としたネットワーク環境でユーザーに届けることには限界があったのです。ですが、その課題は5Gの登場によって解決可能になります。

前田は以下のスライドで、SHOWROOMが目指す動画市場におけるポジショニングを解説します。

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「現在、『メディア(プロ)×ディスプレイ』というポジションにはTVやNetflixが、『プラットフォーム(アマチュア)×スマホ』というポジションにはTikTokやYouTubeが位置しています。ですが、現在はまだ『メディア(プロ)×スマホ』というポジションのメディアは存在していません。だからこそ、SHOWROOMはその領域に注力していきます」


深く心に残る短尺動画。コンセプトは「Short, but Deep.」

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「プロが制作したコンテンツをスマホで楽しむ」というコンセプトを実現するため、SHOWROOMは複数の新メディアを立ち上げます。その1つが「Short, but Deep.」をコンセプトとした短尺動画メディアです。既存の短尺動画メディアとは異なり、このメディアではプロがコンテンツ制作を行い、ユーザーに品質の高い短尺動画を提供します。

「時間の短い動画のなかに、プロのクリエイティビティをかけ合わせることで、人々の感動を生み出す挑戦をしていきたいです」

本メディアにおいては資本業務提携先であるジェイ·ストームとも協業を行い、良質なコンテンツを制作していく予定です。多くのトップアーティストの方々にも動画にご出演いただき、多くの方にとって憧れの場になるようなメディアへと成長させていきます。2020年3月頃のリリースを目指し、開発を進めている最中です。


“耳密度”の高い音声コンテンツを提供

続いて前田は、新しい音声メディアの構想についても解説します。SHOWROOMが目指すのは「耳密度の高い音声コンテンツ」の提供です。これは、集中して聞きたくなるような情報量の多いリッチコンテンツのこと。この領域に参入することには理由があります。前田は「私たちが普段どんな音を聞いているか」を表現する表を示します。

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「耳密度が高い×音楽」というかけ合わせとしては、すでに「曲を楽しむ」という行為が存在しています。「耳密度が低い×音楽」ならば「BGMをかける」です。「耳密度が低い×音声」というかけ合わせとしては「ラジオをかける」という行為が挙げられます。ですが、「耳密度が高い×音声」という領域には代表的なものが存在しない状態です。

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また、音声市場におけるポジショニングとしても「プロ制作×ストック」という領域に位置するメディアはまだありません。SHOWROOMは耳密度の高い音声コンテンツとスマホの利便性を組み合わせたサービスを提供することで、日本における「音のエンタメ」の選択肢の幅を広げていきます。今後はニッポン放送と共同でのサービス開発を行い、ニッポン放送が強みとする音声コンテンツの制作力と、SHOWROOMが強みとするプロダクト開発力の相乗効果を生み出していく予定です。


SHOWSTAGEにより、“新しいライブ空間”を創出する

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次はCTO 佐々木が登壇し「ライブ領域とテクノロジーをかけ合わせ、どのような価値を創出するか」の解説を行いました。

ライブ市場は大きなポテンシャルを持った領域です。2009年には3,198億円だった市場規模が、2018年には5,685億円へと成長しました。直近10年間で78%も増加しています。

「しかし、魅力的な市場であるものの、ライブ市場には2つの課題があります。1つ目の課題は移動距離です。会場までの移動コストがかかることから、機会損失が生まれています。もう1つはキャパシティの課題です。一定以上の人数を収容できる会場は限られているため、“ライブをしたいけれどハコがない”状態が生じています」

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そうした課題を解決するため、SHOWROOMはライブ3.0という概念を提唱します。

ライブ1.0では「コンサート会場に足を運ぶ」という方法でしかライブを楽しむことはできませんでした。ライブ2.0ではライブビューイングという手法が登場しましたが、一定の移動はまだ必要でありキャパシティにも上限があります。ライブ3.0ではAR/VRの技術を用いてライブ空間そのものを拡張・仮想化し、ライブ市場が抱えていた課題を解決します。

ライブ3.0を実現するためにSHOWROOMが提供するサービスとは「SHOWSTAGE」。このサービスが目指すのは「スマホ1つでリッチな没入感のあるライブ体験」です。

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現在「SHOWSTAGE」はVR機能のみのベータリリースを行っていますが、スマホ1つでリッチな体験を提供するために、ARによるライブ機能を追加した正式版を今後リリースする予定です。

「『SHOWSTAGE』内では、3Dのキャラクターがリアルタイムでライブ配信を行います。AR技術を利用しているため、視聴者は室内での位置やスマホの角度を変えることで、好きな位置からライブを視聴できます。ピンチイン・ピンチアウトでパフォーマーとの距離を変えることも可能です。3D技術を活用することで、会場の演出も可能になります」

ARライブの第1弾として「超現実ライブ」を2020年1月26日に開催予定です。出演アーティストの詳細については、近日中に発表させていただきます。


スマホ上に、パフォーマーにとっての憧れの世界を

佐々木に代わり、再び前田が登壇。前述の新サービスが、既存サービスとどのようなシナジーを生み出していくのかを解説していきました。前田は「タレントの4象限」のスライドを提示し、現在の「SHOWROOM」が位置するポジションと、新サービスが実現するビジョンについて示します。

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これまでエンターテインメントの世界では、人気タレントは上図の右上にある「偶像性が高く、ファンが多い」Cの象限に位置していました。一方で「SHOWROOM」というプラットフォームは「偶像的な存在であった方々を、身近な存在にすること」や「一般の方々が配信を続け、ファンを増やしていくこと」に寄与してきました。上図における①の役割を担ってきたのです。

「ですが、『SHOWROOM』のパフォーマーの方々は、最終的には右上のCの象限に行きたいと考える方が多い。人気の高いパフォーマーは、『SHOWROOM』にとどまらず雑誌やTV、映画などのメディアにも活動の場を広げています。そこで私たちは、パフォーマーの夢を実現できるように、新しい舞台を右上のCの象限に生み出します。それが、先ほど解説した3つの新メディアです。」

この世界観を実現するために、SHOWROOMは今後プロデュース業も行っていきます。パフォーマーの人気とスキルは必ずしもイコールではありません。ファンをたくさん抱えていているパフォーマーでも、歌唱力や演技力がまだまだ成長過程の方もいます。

そうした方々が、右上のCの象限で活躍するような存在へと成長していくには、プロデュースを通じたスキルの向上が必要不可欠です。この役割を、SHOWROOMはパートナー企業とともに実現していきます。

「『SHOWROOM』で頑張っている方々にとっての、夢のステージをつくっていきたい。私たちのミッションである『努力がフェアに報われる社会を創る』に立ち返り、事業を推進してまいります」


エンゲージメントサイクルにより、事業成長の道筋をつくる

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次に登壇したのは、COO 唐澤です。唐澤はユーザー数や配信ルーム数といった数値情報をもとに、今後の事業成長の道筋を解説しました。

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「SHOWROOM」はこれまで、上図のようなユーザー数の推移をたどってきました。2018年度では、会員登録数330万人にまで成長しています。

「SHOWROOM」では、夢に向かうパフォーマーの「配信ルーム数」と夢を支えるサポーターの「応援ユーザー数」をKPIとして掲げてきました。両KPIとも、右肩上がりの成長を続けています。配信ルーム数は2018年度で27万、応援ユーザー数は累積で17万人にまで到達しました。

また、「SHOWROOM」ではコメントやギフティングなど、ユーザーアクションの総数のことをエンゲージメントポイントと定義しています。2014年度には7.6億だったエンゲージメントポイントは、2018年度には210億にまで成長しています。

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「エンゲージメントをより深めていくには、夢に向かうパフォーマーの方々の力と夢を叶えるサポーターの方々の力の両輪を回していく必要があります。私たちはこれをエンゲージメントサイクルと呼んでいます。ユーザーの方々の夢を実現させ、事業成長を推進していくことが、SHOWROOMの成長戦略そのものになります」

より多くのエンゲージメントサイクルを生み出すため、SHOWROOMではいくつもの施策を実施していきます。パフォーマーの数をさらに増やすため、これまで進めてきたジャンルの拡大やイベントの実施を引き続き推進していく方針です。

サポーターの方々を増やすための投資も積極的に行っていきます。コンテンツ自体の魅力による集客だけではなく、デジタルマーケティングなどの施策も実施予定。また、AIを活用した配信のレコメンデーションや、応援スポンサー企業の獲得なども見込んでいます。そしてエンゲージメントサイクルのなかに、今回発表した3つの新メディアやプロデュースが組み込まれていきます。

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「エンゲージメントサイクルの円をより大きく描き、ミッションの実現と事業成長を加速させていきたいと考えております。ご出資いただいたパートナー企業の方々とともに、一緒にエンタメテックという市場を開拓していきたい。大きな夢の実現に向けて進んでいきます」


おわりに

「エンターテインメントという世界を、テクノロジーの力でアップデートしていきたい。そして、日本からアジア、そして世界に、日本の素晴らしいコンテンツを広げていきたいです」

最後にこのように総括し、カンファレンスを締めくくりました。

私たちSHOWROOMはテクノロジーを活用して、エンターテインメントの可能性を拡張してまいります。手のひらに収まるスマホというデバイスのなかに、夢のような世界が広がる。そんな未来を、みなさまと一緒に創出していけたら幸いです。

SHOWROOMでは第二創業期を担うメンバーを積極的に採用中です