shownet.conf_ 2024 講演と資料のまとめ
2024年9月25日、26日の二日間にわたって開催された「shownet.conf_ 2024」について、各セッションで使用された資料をまとめました。
ShowNetとは、毎年6月に幕張メッセで開催されるICT技術の展示会「Interop Tokyo」において様々な企業からご提供いただいた最新鋭のネットワーク機器・サービスを利用して、近未来のネットワークを構築・運用する世界最大のライブデモンストレーションネットワークのことです。ShowNetは、近未来のネットワークにおいて解決すべき課題を設定し、ネットワークを設計しています。
「shownet.conf_」はこのShowNetの背景、設計、運用結果、今後の展望などについて、各担当のNOCチームメンバが深く掘り下げて解説するカンファレンスイベントです。
ShowNetが構築されるまでの過程と、構築・運用に関わるShowNet独自の工夫やテクニック、ShowNetの構成の歴史などについても触れて、Interop Tokyoの会場だけではお伝えしきれなかった沢山の情報をお伝えしました。
本記事では、講演内容の要点や、カンファレンスのテーマや概要を解説します。ぜひ皆様の今後のネットワーク構築や技術選定などのヒントにお役立てください。
DAY1
ShowNet 2024 ~Inter * Network~
オープニングでは、ShowNetの2024年の全体コンセプトである「Inter * Network」という言葉の意味、それにShowNet全体の概要、各部分科会ごとのテーマなどを紹介しました。
ShowNetは、最新のネットワーク技術・ネットワーク機器などを相互に接続し、「5年後、10年後に必要となるネットワークの姿」を示すというビジョンのもとに構築するコンセプトネットワークです。
2024年のShowNetは「Inter * Network」というテーマで構築します。「*(アスタリスク)」は、ここにどのような単語が入ってもよいことを意味します。この「*」に該当するのは、例えば「メディア業界におけるIP」のinter-work、「5GやWi-Fiのような無線ネットワークと有線ネットワーク」のinter-work、「企業のビジネスの成長を支えるキャンパスネットワーク」、さらには「宇宙、惑星間のインフラとして」のinter-workのようなものです。
たとえネットワークの用途や目的や課題が違ったとしても、それぞれに最適なネットワークでつなげることができる、柔軟で、高性能で、かつ快適なネットワーク。そういう「ネットワークのモデルケース」となることを目指して、2024年のShowNetを構築しました。
トポロジ図の歩き方
あまたの機器やソフトウェア、そしてプロトコルの入り乱れるShowNetを、さまざまなバックグランドを持つのべ600名以上のエンジニアで構築する上で、欠かせない共通言語がShowNetのトポロジ図です。実際にShowNetを幕張メッセに構築する2週間、我々は刻々と更新されるトポロジ図を片手に構築とデバッグを行います。ShowNetの全てが記載されたこのトポロジ図は、エンジニア間で設計を共有し、コミュニケーションを迅速に行う上で不可欠なものです。本セッションでは、ShowNetを特徴づける重要な要素であるトポロジ図の読み方について説明し、ShowNetの設計を把握する方法を共有すると同時に、トポロジ図を描くためのエッセンスについて解説します。
ShowNet伝送改めShowNet APN 2024
ShowNet伝送は光伝送装置による光ファイバの回線多重を行い、ファイバ芯数の効率化と大容量化、そしてIPバックボーン機器間の接続に伝送装置が挟まることでファイバ間接続と装置間接続の抽象化を行っています。本セッションではInterop2024における伝送網の取り組みや、最新の技術動向について解説いたします。
コンピューティング資源を統合した分散コンテナ基盤の進化
ShowNet DC・クラウドでは、仮想アプライアンスやコンテナを動かすための基盤を構築し、その基板上で来場者や出展社に対してサービスを提供するために、DNSやDHCP などのコンテナアプリケーション、セキュリティ/モニタリングの様々な仮想アプライアンスを動かしています。本セッションでは、これらのサービスが稼働するDCおよびサービスセグメントの構成、クラウドとの連携、マルチクラスタコンテナ基盤のチャレンジなどについて解説します。
ShowNet × 宇宙ネットワーク
Interop Tokyo 2024 ShowNetでは、様々な分野で最新の技術を用いたネットワークを構築しています。本セッションでは、SRv6を用いた地上ネットワークと衛星回線のシームレスな統合に向けた取り組み、惑星間ネットワークを模擬したDTN(Delay Tolerant Network)環境についてなど、今年のShowNetにおける宇宙ネットワークに関するみどころを解説致します。
3Dアプローチで守るセキュリティ
Interop Tokyo 2024 ShowNetでは、出展社向けのセキュリティサービスの提供、俯瞰的視点によるセキュリティ統合監視、様々なEASMサービス群による攻撃対象領域管理、セキュアな管理ネットワークやリモートアクセスサービスの提供など、様々なアプローチでShowNetのセキュリティを担保しています。本セッションでは、最新機器による様々なデモンストレーションやサービス提供を担うShowNetにおけるセキュリティ対策のポイントをご紹介します。
多様化するネットワーク環境を柔軟に統合するルーティングテクノロジー
Interop Tokyo 2024 ShowNetでは、多様化するネットワーク環境を柔軟に統合するルーティングテクノロジーを用いて、多数のユーザ・大量のトラフィックに耐えるマルチテナントバックボーンを構築しています。 本セッションでは、複数の100/400Gbpsトランジット回線を活用した堅牢・高速な対外接続、Compressed SIDを用いたSRv6ベースのバックボーン、キャンパス・アクセスネットワークにおけるEthernet VPNの活用法や、SRv6による地上ネットワークと衛星回線のシームレスな統合に向けた取り組みなど今年のShowNetのネットワーク技術に関するみどころを解説致します。
DAY2
AI技術とUX監視の応用でShowNetの基盤を支えるモニタリングシステム
ShowNetで構築されるネットワークサービスの監視運用を担っているのが、モニタリングチームになります。ShowNetは、2週間という短期間でネットワークシステムを段階的に構築していきます。監視項目も幅広く監視することが求められており、ログ監視・Flow監視・死活監視・リソース監視といったあらゆる側面の監視を統合的に監視しています。これらを段階的に、監視項目の優先度をつけながら2週間の期間中に構築を行っています。本セッションでは、ShowNet 2024の監視システムのコンセプトと構築過程、そして監視運用で可視化した結果をご紹介します。
ローカル5Gを活用したウォーキングツアーの体感向上
ローカル5Gは、移動体通信事業者が展開するキャリア5Gに対して、一般企業や組織団体が自己の土地等で敷設する5Gネットワークです。キャリア5Gと異なり、割り当てられた電波・帯域を占有できるため、安定した通信環境を構築できるのが特徴です。2020年に制度化され導入が始まっており、様々な分野での応用が期待されています。
昨年に引き続きShowNetではローカル5Gの実験を行いました。昨年のShowNetでは、シールドテントを用いて外部に電波が漏れない環境下で実験を行いました。2023年は、ローカル5Gに割り当てられているSub6 周波数 (4600MHz - 4900MHz) について3つの実験試験局免許を取得し、実際の電波を利用し幕張メッセの4-6ホールを覆うローカル5G環境を構築しました。
異なる3つの5Gコアと合計5つの基地局を用いてローカル5Gサービスを展開し、映像中継・IoTセンシング・ネットワークスライスなど多様な実験を行い、ローカル5Gの多様なユースケースを示しました。
本セッションでは、ShowNetで実施したローカル5Gのネットワーク構成の概要と得られた構築・運用における知見を報告します。
持続可能な次世代Wi-Fi運用に向けて
Interop Tokyoでは例年、来場者の皆様へ「触れるShowNet」としてFree Wi-Fiの提供を行っています。Wi-Fiの最新規格・製品・ソリューションを用いたデモンストレーションを行うとともに、それらを駆使して幕張メッセの広大な空間や過酷な電波環境で品質の高いWi-Fiサービスを提供すべく、ShowNetならではの工夫を取り入れています。今年は、Wi-Fi6E/7対応のソリューションを会場全体にデプロイし、大規模な6GHz帯Wi-Fiサービスを多数の来場者の方にご利用いただきました。本セッションでは、Wi-Fiにおける今年の見どころと、ShowNetならではの設計・構築・運用におけるプラクティスをご紹介します。
革新と伝統を融合したファシリティ
ShowNetファシリティは全体を安定運用するために、温度や電力といった設備に関わる情報の可視化やラックを跨ぐ配線の一括管理及び高密度化の挑戦をしています。本セッションではInterop2024におけるファシリティの取り組みや等について解説していきます。
ネットワークテストの最適化と利便性の追求
ネットワークテストにおける確認項目は様々です。限られた時間の中で効率よく試験を進めるためは、物理配線や設定内容の最適化、ファンクションに応じた適切な試験、更にはフェイル発生時の原因特定をスムーズ実施できる環境構築も重要です。本セッションでは、今年実施した試験のポイントや、各種テスターにおける操作方法の違いを吸収するためにチャレンジした、試験自動化に関する内容をご紹介します。
放送局とShowNetが共創する、未来の放送システム
~Media over IP 特別企画の裏側~
ShowNet2024 media over ipでは初の試みとして、1つのキャリア網に見立てたShowNetと実網を活用し複数の放送局間の相互接続を実施しました。映像・音声といったメディアストリームを「伝送可能である」というこれまでの実証実験から一歩踏み込んだ、インターネットの可能性を活かした番組制作・配信の新たなユースケースや実際の放送局・中継拠点に求められるネットワーク接続の柔軟性についてなど、今年の見どころ・チャレンジについて
解説いたします。
NOCメンバーが語るSTMの実態!!
~ShowNetから若者への贈り物~
ShowNetの構築・運用を支えるSTM(ShowNet Team Member)プログラムの概要と今年の活動内容をお伝えします。またNOCチームメンバーの目線からSTMプログラム参加者に伝えたいことや感じ取って欲しいことをお話しします。
クロージングセッション
2日間にわたるセッションを振り返り、2025年の開催に向けてInterop Tokyoの2025年の開催概要について紹介しました。
この2日間の「shownet.conf_」の開催をもって2024年のShowNetとしての活動はいったん終了となりました。
ShowNetの構築に尽力いただいたNOCメンバーの皆さん、コントリビューターの皆様、STMの皆さん、ありがとうございました。
そして幕張メッセでShowNetを見ていただいた方、shownet.conf_を見ていただいた皆様、来年のInterop TokyoでもShowNetをまた構築しますので引き続きShowNetをぜひお楽しみに!
とは言えまたすぐ来年の準備が始まるんですけどね。なのでこのノートやFaceBookやXは引き続きフォロー宜しくお願い致します!
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