スティーブ・ジョブズの禅僧〜宿無し弘文
禅(いわゆる「仏教」とはあえて別にして)の「ブーム」は定期的にきますが、また最近はそのようで。(ま、観測範囲によるのですが)
本書はもう文庫化もされていて、書かれたのは最近ではないのですが、ワタクシが今年読んだ中では一番の読後感。読んで、出会えてよかったなぁという読書体験でした。
基本的にわたしは禅については仏教のハードフォークのひとつ、ブランチのひとつという認識です。
それについてよいわるいということでもなく、ただそういうものだと。(少なくとも「只管打坐」は釈迦の教えではないですし)
それとは別に「禅」というとオリエンタルなものへの憧憬というか(とくに西洋の方からすると)、過度に評価、価値や意味付け(高尚な)がされていることが多いかなとも感じています。
そんなスタンス(禅に対して)のわたしですが、そういうことは抜きにして本書はたいへん楽しく(という表現は語弊がありますが)意義深いものでした。
表紙だけみると「スティーブ・ジョブズの禅僧」とか、いかにも(マーケティング的に)感があったんですが、読んでみるとほんとに「ジョブズの禅僧」っていえるくらいズッポリに関係だったんですね。
もうひとりのスティーブ(ウォズニアック)の自伝とはまた別の立場からの当時(Appleの立ち上げやスティーブ・ジョブズの追放から復帰あたり)の様子もうかがうことができて、これまた興味深かったです。
あらためて「関係性が存在を生じさせる」(縁起)、や「無我」(存在にア・プリオリな「我」はない)に思いを馳せつつ読みました。
アメリカ在住の著者(日本人女性)がアメリカと日本を行き来して6年間を費やして完成した本書。力作です。
ネタバレになるといけないので詳細には触れませんが、もし読まれる場合は最後の最後の一文まで気を抜かずにどうぞ。(「最後の一文」は、そのまんまの意味です)
泥中の蓮か。
せつないですね。