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美しさは狂気を包摂する〜優雅な肉体が最高の復讐である。
自伝、伝記のマイブームはウォルト・ディズニーの『創造の狂気』まででいったんお休みして、これまでをざっと振り返り。
アレックス・バナヤンの『サードドア』にはじまって(これは著者がまだヤングってこともあって途上の部分を切り取ったものだけど、ビルドゥングスロマンとしても素晴らしく、そして面白い)
『ザッポス伝説』(CEOのトニー・シェイが書いた、これまた彼の「肉声」を強く感じるユニークで素晴らしい内容)、『ヴァージン』(ヴァージングループ会長のリチャード・ブランソン)ときて
突然ちょっと毛色の違う、武田真治さんの『優雅な肉体が最高の復讐である。』なんてのもあった。
本書の存在も知らなかったのに、なぜ調べてまでして買おう、読みたいと思ったのか。(これまた最近マイブームのメルカリなんだけれども)
ふむ。
思い出せない。
ただ、武田真治という名前は、古い友人が表現を模索していたときにプレーヤーとして彼(武田真治)がその場に来ていたってことを聞いたことがあって(BAR AOYAMAだったかな)それから「ひとり勝手なラポール」なるものをこれまた勝手に構築していたからかもしれない。(ひとり勝手親近感ともいう)
ま、そんなところはどうでもよくて、この肉体が作られるきっかけ、その過程(そう、君の想像するとおり、壮絶なものだよ)、その周辺にちりばめられる(といっても、フレーバーというレベルではなく)情動からなる歴史の慟哭(どうこく)に圧倒されたよ。
彼もリチャードまでではないにしろ(経ている年代に差もあるし)、何度か死んでても(そしてこれからも)おかしくない。(マッスル北村さんを思い出したよ)
そんな人生を求め、送っている。
いま、ふとV.E.フランクルの
そもそも我々が人生の意味を問うてはいけません。我々は人生に問われている立場であり、我々が人生の答えをださなければならないのです。
がよぎったよ。
彼(武田真治さん)の狂ったような(それでいてクスっとしてしまいそうなチャーミングなハードワーク)いろいろを紹介したい思いはあるのだけれど、それは君の好奇心に任せることにして、最後は本書の帯にもある「人生のチャンスは準備ができている心体にやってくる」と『サードドア』を照らし合わせて終わることにしよう。
武田真治さんはトレーニングを続けてその優雅な肉体を獲得しつつも、それ(トレーニング)については周囲にもらしていなかったそうなんだ。(これがまたグレイト、クールすぎるよオールド・スポート)
それでも、みる人がみればわかるものなんだね。
ある映画監督が彼を主演に起用してくれた。
武田さんが「なぜ声をかけてくれたんですか?」と聞くとその監督は
「オファーが来てから肉体を作ったり準備したりするのではなく、先が見えない中で走っている人間を評価したいし、受け止めたくなるから」
と。
この部分を読んだときすぐに僕の頭の電光掲示板に点滅したのは『サードドア』にでてくるチー・ルー(Microsoftのかなり偉い人、すごい人)が「運」についてアレックスに答えたこと。
バスみたいなものさ。一台逃しても必ず次のバスがくる。でも、準備しておかないと飛び乗ることはできない。
オールド・スポート。
君なら誤解しないで受け取ってくれると思う。
唯一無二の絶対的な真理はないけれど、本物はあって、それを指し示す標識はいろいろあって。
そして、その標識はどれも本物を指している。