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あの三体はプロローグにすぎなかった〜三体Ⅱ 黒暗森林(上)
『三体Ⅱ 黒暗森林』の上巻である。
前作の『三体』も凄かったけど(帯にもあるけれど、たしかに序章に過ぎなかった。それにしてもとんでもない序章だけれど)Ⅱの黒暗森林はさらにさらにスケールも大きく(上下左右斜めにも)、どういう素養や育ち、経歴があってこんな小説世界を紡ぎ出せるのか驚愕です。
わたしは科学(理科も算数も)が苦手なので正直、SF(ゴリゴリのハードSF)はあまり読まないのだけれど
筒井先生(銀座で一度、すれ違ったことは誇らしい思い出)とか、ハインラインの『夏への扉』といった文学寄り(この表現が妥当なのかはさておき)なのは好きです。
と、思い出していたらいろいろでてきてこれはこれで楽しい記憶。鋼鉄都市、不死販売株式会社、怪奇植物トリフィドの侵略、とか、このあたりは小学生のときにハマったなぁ。
話はもどって
本作(三体、黒暗森林)もゴリゴリなところはあるのだけれど(宇宙、物理学等)それらすべてを詳細に理解してイメージできなくとも(自分なりにイメージできれば)十二分に楽しめます。(たぶん)
そういったゴリゴリのガジェット的な部分と文学的、詩的な表現も見事にからめ、なおかつ豊穣に表現できているところにも驚愕です。(原文が読めればまた違った印象になるのかもしれないけれど、日本語訳はとても丁寧にフッジョブしていると見受けられる)
ゴリゴリのハードSFというと、近年ではクリストファー・ノーラン監督の映画作品が思い浮かびますが(インターステラーもTENETも面白かったけど、なんじゃこりゃ感は否めず=わたしの知識が、知性が及ばず)
あ、TENETといえば、20年以上前に読んだ『時間衝突』も。(三体の訳者によるあとがきでは「バカSF」と紹介されてましたが)
イメージをカタチにして与えてくれる映像作品と違って、活字からそれを立ち上がらせることを許してくれている活字作品は、読み手次第ではあるにしろ、それなりに世界をイメージ(立ち上がらせる)できれば自分なりの楽しみ方は十分にできるというところ。(いい悪い、優劣ではなく)
専門的な宇宙の描写なんかはそうしにくいところはあるのだけれど、それでもけっこうなんとかなるものです。(とはいえ、TENETなんかは活字だったらもっと理解できないだろうけれど)
世界的大ベストセラーらしいけれど、かといって万人向け、誰もが同じように楽しめるものではないので、書評や帯文にあまり影響されず(されてもいいけど)自分の感覚(なんとなくでいい)で気になったら是非読んでみてください。
「気になった」あなたなら、きっと楽しめるはず。
その壮大なスケール感は、例の感染症騒ぎによる浮世の憂さから逃避(いや、飛翔にしよう)するのにうってつけです。(これもかなり瞑想になります)
そして、下巻を求めて池袋ジュンク堂へ。