何かを作ることが建築ではないのかもしれない〜TOKYO 0円ハウス0円生活
ブルーシートで出来た家(小屋)というと、いわゆるホームレス、不潔、貧しいといったネガティブな印象を持つことが多いかと思う。
しかし、本書を読むとそんな先入観はただの偏見、思い込みに過ぎないことに気づく。(実際、ただの不潔な浮浪者みたいな人は別にして)
少なくとも著者である坂口さんが密接に関わって調査というかインタビューをした人たちはむしろ豊かでさえある。(どの視点、価値観で住居や生活を捉えるかによるけれど)
実際、本書で多く紙面を割かれている鈴木さんは本当に見事な0円ハウス、0円生活を送っていて(食は大事にしているので、そのために最低限の労働はしているけれど)その価値観や創造性には脱帽という他ない。
0円に近い住居でも、厳密にはバッテリー(電気確保のための)等、いくらかはお金を払って購入している場合がほとんどなのだけれど、鈴木さんはホントにホントに「0円」で自らの住まいを作り上げ、そして日々成長(アップデート)させている。
彼らの世界からみれば、むしろホーム「レス」なのはそうでない我々のほうなのかもしれないとも思えてくる。
東京(多摩川、荒川)だけでなく名古屋、大阪まで取材した坂口さんはこう語る。
何かを作ることが建築ではないのかもしれない。そこを自分の場所と感じられたら、それはもう紛れもない「建築」なのではないかと思った。
早稲田大学の建築学科を卒業している(しかし建築士、建築家ではない)彼だからこそ感じられる彼ら(0円ハウス)の世界の価値、逆にそうでない世界の価値への疑問。
非常にユニークでパワフルな坂口さんの前半生も楽しく刺激的にあじわわせてもらえた素晴らしい取材、活動、思考の記録であった。
彼の活動を紙面からみるだけでも、セネカのいうように人生は短くなんてないのだとも強く感じた。(短い人は無駄なことに使ってるだけで)
坂口恭平。
やはりその存在が、思考が、行動が芸術。
坂口さんの著作は以下の2つも読んだけれど、どれも激しく面白い。