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読書の轍

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わたしになにかしらの轍を残していった書物たち。
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#読書

この世界は関係性で出来ている〜すごい物理学入門

この世界は関係性で出来ている〜すごい物理学入門

『時間は存在しない』の著者カルロ・ロヴェッリによる『すごい物理学入門』。

帯には「誰もが感動する究極の入門書」とあります。

んー、何をもって感動とするかによるのだけれど、自分としては感動というよりも『時間は存在しない』は理解がしんどかったけれど、本書は「入門」とあるだけあって、より平易にコンパクトにまとめられているところがありがたかったです。

物理学というと量子論(量子力学)なんかもあります

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人はショックからしか学べない〜三体

人はショックからしか学べない〜三体

三体、第一部をやっと読了。

別の投稿でも少し触れましたが、超絶面白いです。

訳者、監修のあと書きも含めてたっぷりと堪能しました。(アジア人で初のヒューゴー賞受賞のことや、日本語版への翻訳にあたってどんな経緯、事情があったのかという裏事情もドラマチックで楽しめます)

こういった作品はとくに事前知識は入れておかないほうがいいと思うので、例によって例のごとく具体的には内容に触れません。

そうした

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見える人にしか見えない〜「具体⇔抽象」トレーニング

見える人にしか見えない〜「具体⇔抽象」トレーニング



抽象度という言葉がありますが、その意味を正確に理解している人は多くないようです。(私が正しく理解しているかはさておき)

それ以前に具体と抽象ということについても。(抽象の対は具象ですが、一般的によくいわれるのは具体なので、以降「具体」ですすめます)

理解をさまたげるもののひとつは、抽象度をあげれば、抽象化を推し進めればとにかく良いという誤解。

抽象度という唯一絶対の物差しがあり、その目盛

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あの三体はプロローグにすぎなかった〜三体Ⅱ 黒暗森林(上)

あの三体はプロローグにすぎなかった〜三体Ⅱ 黒暗森林(上)

『三体Ⅱ 黒暗森林』の上巻である。

前作の『三体』も凄かったけど(帯にもあるけれど、たしかに序章に過ぎなかった。それにしてもとんでもない序章だけれど)Ⅱの黒暗森林はさらにさらにスケールも大きく(上下左右斜めにも)、どういう素養や育ち、経歴があってこんな小説世界を紡ぎ出せるのか驚愕です。

わたしは科学(理科も算数も)が苦手なので正直、SF(ゴリゴリのハードSF)はあまり読まないのだけれど

筒井

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エントロピーは情報であり、観測者によって変化する〜宇宙をプログラムする宇宙

エントロピーは情報であり、観測者によって変化する〜宇宙をプログラムする宇宙

科学が苦手で物理学とか宇宙のことなんかも全然知らないのだけれど、最近『三体』にハマっていたり

『TENET』を観て頭がこんがらがったりして、いや、このままでは悔しい、もっと感触を、手触りだけでも得たいとこうした本を苦労しながらも読んでいる。

タイトルは『宇宙をプログラムする宇宙』。

帯の裏はこんな感じ。

セス・ロイド(著者)は量子情報理論の導師(グル)である。その彼が書いた本書『宇宙をプロ

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瞑想で自分をアップデート〜LIFE 3.0

瞑想で自分をアップデート〜LIFE 3.0

「.0」というネーミングもいい加減どうかと思いますが(最初に使われだしたのはWeb2.0だったかと)去年読んだ『LIFE 3.0』がいつの間にか日本語訳で出てますね。

著者は『宇宙をプログラムする宇宙』のセス・ロイドとMITで同僚とか。

Lifeをステージでわけ、1.0(バクテリアなどの原子生物)、2.0(現代の人類)、3.0とし、3.0とはどんなLifeなのかについて書かれています。

Li

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雨の中でキス、スペイン旅行、そして〜ブループリント 下巻

雨の中でキス、スペイン旅行、そして〜ブループリント 下巻

錚々たる知識人たちによる推薦、帯文が目立ってつい(背伸びともいう)読み始めてしまった『ブループリント 「よい未来を築くための進化論と人類史」』をやっと読了。

上巻についてはこちら。

著者のニコラス・クリスタキスは医学博士、学術博士、公衆衛生学修士、イエール大学社会・自然科学スターリング・プロフェッサーといった肩書で、社会学、生態学、進化生物学、統計学およびデータサイエンス、医用生体工学、医学と

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それがあなたの「生きる」カタチですか?〜三体Ⅱ 黒暗森林(下)

それがあなたの「生きる」カタチですか?〜三体Ⅱ 黒暗森林(下)

世界的大ベストセラー『三体』の第二部、『黒暗森林』の下巻を茫然自失な読後感をもって読了。

途方もないスケールで構築され、展開するこの世界観には本当に圧倒されます。例の喧しい感染症騒ぎの諸々から生じる閉塞感、停滞感を片時でも忘れることができます。(ま、しばらくすると若干戻ってはしまうんだけど)

第一部でどでかい風呂敷がひろげられ、この第二部ではそれを受けて怒涛の加速、凝縮、膨張といったジェットコ

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科学が信用に値するのは、科学が「確実な答え」を教えてくれるからではなく、「現時点における最良の答え」を教えてくれるからである〜すごい物理学講義

科学が信用に値するのは、科学が「確実な答え」を教えてくれるからではなく、「現時点における最良の答え」を教えてくれるからである〜すごい物理学講義

カルロ・ロヴェッリの『すごい物理学講義』をやっと読了。

流れとしては『すごい物理学入門』からでよかったです。この二冊を経た(四苦八苦しながらも)今なら『時間は存在しない』も、もうちょっとは読めるかもしれない。

本書は2014年に刊行され、その年に「メルク・セローノ文学賞」と「ガリレオ文学賞」という2つの賞を受賞しているとか。

どちらも「文学賞」なんですね。

科学の魅力を広く一般に伝えること

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監視社会のインフラはもう十分すぎるほど、この世界にゆきとどいている〜超監視社会で身をまもる方法

監視社会のインフラはもう十分すぎるほど、この世界にゆきとどいている〜超監視社会で身をまもる方法

『闇ウェブ』を読み、その勢いでもうちょっと突っ込んでそのへんのところ(インターネット利用における危険性)を知りたかったのでケビン・ミトニックの『超監視社会で身をまもる方法』を読みました。

闇ウェブについてはこちら。

ケビン・ミトニックはもとはクラッカー(悪いことにハッキングの知識、技術を使う)だったのだけれど(それで逮捕、収監されている)、現在はそのスキルを生かして、いわゆるホワイトハッカーと

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善も悪もない、適切な場所で機能するか否か〜美しき免疫の力

善も悪もない、適切な場所で機能するか否か〜美しき免疫の力

免疫学の歩みと、そこに関わった科学者たちの軌跡を紹介しているポピュラーサイエンスの一冊。

どんな内容なのか、訳者あとがきから一部引用します。

免疫システムは体内に侵入した異物を見つけて攻撃するシステムである、と多くの人が考えていた。でも、異物であっても食物や腸内細菌は攻撃されない。いったいどうやって区別しているのか。高齢になると免疫機能が低下すると言われているが、それはなぜか。体を守るはずの免

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賢いがゆえに人間臭さが振り切れてしまう〜A LITTLE HISTORY OF PHILOSOPHY

賢いがゆえに人間臭さが振り切れてしまう〜A LITTLE HISTORY OF PHILOSOPHY

洋書ですが、哲学史をざっくり概観しつつ(あくまでざっくりです)プラスアルファ、ちょっとしたスパイスが効いているのがかなり面白い『A LITTLE HISTORY OF PHILOSOPHY』 。

わたしは英語は苦手ですが、最近はAI研究のおかげでいい仕事をしてくれる翻訳サービスがありますから、その力を借りて、です。(DeepLがすごいと思ってましたが、たまに真逆の翻訳をしたりすることもあるので、

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今日のKindle読み放題〜ハリー・ポッターシリーズ

今日のKindle読み放題〜ハリー・ポッターシリーズ

なにをいまさらと思われそうですが、あれだけヒットしたのだから読んでおいてもいいだろうと、ようやく読了。(全7作 + 1)

もちろん、AmazonのKindle Unlimited対象(読み放題)だったからですが。

対象年齢は8〜10歳となっていて子供向けのようですが、けっこうボリューミーで疲れます。よくいえば「読み応えがある」なのかなぁ。(悪くいえば冗長)

全7作で完結のシリーズもので、最後

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