マガジンのカバー画像

読書の轍

91
わたしになにかしらの轍を残していった書物たち。
運営しているクリエイター

#瞑想

哲学を学問にしてはいけない〜哲学の冒険

哲学を学問にしてはいけない〜哲学の冒険

30年以上も前に書かれた中学生のための哲学の連載内容から起こされた本書は今読んでも十分に読み応えのある内容。(その道の人は別にして、自分のような浅学な者には)

もとの連載が中学生向けだったとはいえ、いわゆる「子供向け」ではなく、著者の内山さんがあとがきに書いているように「内容的には大人の哲学書」。

私はふたつのことを念頭に置いていました。ひとつは私が中学生だった頃こんな本があったらよかったとい

もっとみる
地獄への道は善意で敷き詰められている〜メディア・レイプ

地獄への道は善意で敷き詰められている〜メディア・レイプ

善意で舗装されている、とも。

The road to hell is paved with good intentions.

悪質に近いセールスをしている業者もいると聞いていた「次亜塩素酸ナトリウム」を使った消毒(殺菌、除菌)グッズ。

なるほど。

こういうふうに「善意」で舗装されているのだなと。
(スプレーを置いているほうはもちろん善意から、そして、だからこそタチが悪いとも言える)

「も

もっとみる
疑問をもて、なぜ?と問え〜ミライの授業

疑問をもて、なぜ?と問え〜ミライの授業



こうした激しく賢く成功した先人が「これからの君たちへ」というスタンスで書いてくれたものは良書が多い。(本書は「いちおう」14歳の君たちへ、というスタンス)

でも、本書でも示してくれているように「14歳の君たちへ」だけでなく「かつて14歳だった大人たち」にも向けられているところがうれしい。

実際、ほとんどの「かつて14歳だった大人たち」はちゃんと年を経て(経年劣化ではなく)、成熟していないか

もっとみる
今ここにある危機〜マインド・コントロール

今ここにある危機〜マインド・コントロール



帯にある21世紀なんていう大きなスケール、スパンでみるまでもなく、今ここにある危機としてとても有意義な読書体験でした。(本書は増補改訂版として2016年に発行)

今ここにある危機とは、そう、例の感染症騒ぎからくるもろもろ。

マインド・コントロールとか洗脳というとマルチ商法とかカルト教団とか(そこまでの規模でなくとも)霊感商法とか、わりと自分(フィジカルで感じられる「個」)への距離感、体感み

もっとみる
頭以外でも考えてみよう〜脳はバカ、腸はかしこい

頭以外でも考えてみよう〜脳はバカ、腸はかしこい



藤田紘一郎さんの『脳はバカ、腸はかしこい』。

名前と

「寄生虫」
「サナダムシを体内に飼っている」

といったことはなんとなく聞いてましたが、サナダムシについてはもう三代めで、それぞれに名前までつけて愛しているとは。

脱帽です。

詳しくは本書にゆずるとして、藤田さんの在り方、姿勢が素敵です。

最近もどこかで抑圧からの解放をテーマにアウトプットしましたが、藤田先生もそこを強く意識して(

もっとみる
ほめられるのが苦手〜Originals

ほめられるのが苦手〜Originals

先日「ほめられるのが苦手」という相談を受けました。

私もそうですが、そういう人は少なくないのかもしれません。

嬉しさ反面、そういうところ(ほめる部分)に気づくくらい丁寧に見られているのかと思うと照れるというか、ちょっと気恥ずかしくなってしどろもどろになることがあります。(ドキドキします)

そういうのではなくて、いわゆるエフィカシーとかエスティームといった「自尊心」が低い場合もあるのかもしれま

もっとみる
怒りは友達である。素敵な友達でも、やさしい友達でもないが、きわめて誠実な友達だ。〜The Artist's Way

怒りは友達である。素敵な友達でも、やさしい友達でもないが、きわめて誠実な友達だ。〜The Artist's Way

描く瞑想として「モーニングページ」と「ジャーナリング」を勧めています。

やることは同じなのですが、意識の面でちょっと違います。

モーニングページはそれ自体(とにかく書く、ただ書く)が目的です(宗教などにおいて瞑想行為自体が目的のように)が、ジャーナリングはテーマや対象を決めてする目的志向で書きます。

知人でこれらに取り組み、一ヶ月くらいたつ人がいますが、最近送ってくれたフィードバックに「怒り

もっとみる
この世界は関係性で出来ている〜すごい物理学入門

この世界は関係性で出来ている〜すごい物理学入門

『時間は存在しない』の著者カルロ・ロヴェッリによる『すごい物理学入門』。

帯には「誰もが感動する究極の入門書」とあります。

んー、何をもって感動とするかによるのだけれど、自分としては感動というよりも『時間は存在しない』は理解がしんどかったけれど、本書は「入門」とあるだけあって、より平易にコンパクトにまとめられているところがありがたかったです。

物理学というと量子論(量子力学)なんかもあります

もっとみる
ちゃんと見さえすれば、思いもかけない場所に光を見出すこともある〜グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

ちゃんと見さえすれば、思いもかけない場所に光を見出すこともある〜グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

グレイトフル・デッドというと、日本の現代の若い世代ではあまりなじみがないかもしれないけれど、彼らがしたことは音楽表現にとどまらず、現代でも通用する(むしろ先取りしていた)ビジネス手法であった。

なんてことを解き明かし、解説してくれる本書はデッドヘッズ(熱烈なグレイトフル・デッドのファン)でもあるマーケティングのプロ二人による共著。(監修・解説は糸井重里さん)

たとえば、レコード(当時はそうだっ

もっとみる
人はショックからしか学べない〜三体

人はショックからしか学べない〜三体

三体、第一部をやっと読了。

別の投稿でも少し触れましたが、超絶面白いです。

訳者、監修のあと書きも含めてたっぷりと堪能しました。(アジア人で初のヒューゴー賞受賞のことや、日本語版への翻訳にあたってどんな経緯、事情があったのかという裏事情もドラマチックで楽しめます)

こういった作品はとくに事前知識は入れておかないほうがいいと思うので、例によって例のごとく具体的には内容に触れません。

そうした

もっとみる
みんな大好き、食品添加物〜食品の裏側

みんな大好き、食品添加物〜食品の裏側

著者は食品添加物の元トップセールスマン。

食品添加物の神、魔術師とも呼ばれる専門家でセールスマン時代には食品製造業者に大量に商品(食品添加物)を卸し、製造作業の効率化や品質、売上の向上に多大な貢献をしていた。

それがあることがきっかけで廃業し、現在では以前の経験から食品製造の舞台裏をあかし、食品添加物に関する講演やこうした執筆活動をしている。

食品添加物。

便利だけれど人体に有害だという認

もっとみる
誠実な友だちは「怒り」だけじゃない〜The Artist's Way

誠実な友だちは「怒り」だけじゃない〜The Artist's Way

以前触れた(引用元は『The Artist's Way』日本語訳版は『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』)

怒りは誠実な友だち

また引用します。

怠惰、無関心、絶望は敵だが、怒りはそうではない。

怒りは友達である。

素敵な友達でも、やさしい友達でもないが、きわめて誠実な友達だ。

それは、私たちが裏切られたときや自分自身を裏切ったとき、かならず知らせてくれる。

そして、自分の興味

もっとみる
人を生かすのは健全な判断であり、健全な判断はすべてに気を配ることの中にある〜The Artist's Way

人を生かすのは健全な判断であり、健全な判断はすべてに気を配ることの中にある〜The Artist's Way

『ずっとやりたかったことを、やりなさい』(原題は“The Artist's Way”)の中で、著者のジュリア・キャメロンが祖母から受け取る手紙について触れている部分があります。

とても詩的で美しく、せつないです。

植物と動物の報告をします。レンギョウの芽が出ました。今朝、今年はじめてコマドリを見たのよ。この暑さにもかかわらず、バラはまだ花をつけています。ウルシが色づきました。それに、ポストのそ

もっとみる
あの三体はプロローグにすぎなかった〜三体Ⅱ 黒暗森林(上)

あの三体はプロローグにすぎなかった〜三体Ⅱ 黒暗森林(上)

『三体Ⅱ 黒暗森林』の上巻である。

前作の『三体』も凄かったけど(帯にもあるけれど、たしかに序章に過ぎなかった。それにしてもとんでもない序章だけれど)Ⅱの黒暗森林はさらにさらにスケールも大きく(上下左右斜めにも)、どういう素養や育ち、経歴があってこんな小説世界を紡ぎ出せるのか驚愕です。

わたしは科学(理科も算数も)が苦手なので正直、SF(ゴリゴリのハードSF)はあまり読まないのだけれど

筒井

もっとみる