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平手さん脱退理由の描き方~「僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46」

※ ネタバレありなので要注意です!

「僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46」は、ドキュメンタリー映画の顔をした、平手友梨奈さん脱退理由を描くミステリー映画でした。
その答えをこの映画では、①心身、②グループ、③パフォーマンス、という3つのポイントで描いていました。
以下、具体的に見ていきます。

①心身

最初の1年こそライブに緊張する普通の女の子くらいのトーンで平手さんを描いていたのが、後半期は紅白歌合戦や黒い羊MV撮影、東京ドームアンコール舞台裏など、パフォーマンスに彼女の精魂を搾り取られる様子を繰り返し描いていました。

彼女の精神的・肉体的限界が許容範囲を超えてしまった。それがこの映画が表している脱退理由の1つ目となります。

②グループ

平手さんの卓絶した表現力により注目は彼女に集中し、他メンバも徐々に彼女に依存していくようになります。
それが顕在化したのが2017年末に平手さんが切り出した「一時的にでもグループから離れたい」という話で、その理由は「自分だけが目立ってしまうから」ということでした。
しかし、グループとして彼女への依存度が代替不可能なレベルに達していたため、他メンバは彼女を必死に止め彼女もグループから離れることを取りやめます。

しかし、その後も平手さんが中心になることに変化はありませんでした。
その中で、平手さんが様々な理由でライブを欠席するようになると、2017年や2018年は困惑していた他メンバも、2019年になると彼女の代わりにセンターを務めることで少しずつ成長するようになります。
(それでもその後の東京ドーム公演などで見せた平手さんセンターのパフォーマンスは、それら他メンバの成長を蹴散らすほど圧倒していました。これもある意味で平手さんからグループへの「お前らまだまだだぞ」というメッセージかもしれません。)

グループに平手さんがいることで平手さんにしか注目が集まらない、グループに平手さんがいないことで他メンバが成長する、これらを平手さんが認識したこと。それがこの映画が表している脱退理由の2つ目となります。

③パフォーマンス

平手さんが初期のライブ後舞台裏で「今日は泣けなかったからパフォーマンスに納得してないんだと思います。納得していれば自然と涙は出ると思うんですよね。いつか来るんですかね、そんな日が。」と語っている様子がこの映画では描かれていました。
彼女がパフォーマンスに真摯に向き合う姿と、求道者としての哲学的思想を感じられる場面ですが、あえてこの場面を映した理由が終盤に訪れます。
それは、2019年紅白歌合戦のパフォーマンス後、力を出し尽くし横たえる彼女の頬を流れる一筋の涙です。

つまり、2019年紅白歌合戦のパフォーマンスに納得し、もうやり残すことはないと感じた、それがこの映画が表している脱退理由の3つ目となります。

その他

平手さんは映画公開時の雑誌インタビューで「本編に描かれていること、言葉がすべて真実だと思わないでほしい」と語っています。
彼女の脱退に関する「真実」はもちろん彼女の胸の内にしかありません。
特に、3つ目の理由であるパフォーマンスは、同インタビューで「(パフォーマンスについて)自分では納得いったことがないですね」と語っている通り、映画の「嘘」かもしれません。

欅坂46は日向坂46と違い、メンバスキャンダルや主要メンバの脱退、握手会襲撃事件、ナチス衣装事件と、ドキュメンタリー映画としてのネタが非常に多いです。
その中で、欅坂46の中心であった平手さんを軸に映画を作ったことが、グループが幕を閉じ改名により再出発することが発表された今となっては、ある意味での総括となり製作者が想定する以上の演出効果となっているかもしれません。
そのことを敏感に捉え、コロナによる延期期間で終盤に再出発のシーンを追加した監督には素直に賛辞を送りたいと思います。

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