妖狐異聞録『おかたんのしゃむしょ』第伍譚「気絶したあと、霊は何しているのか問題」
あらすじ
埼玉県にある古い神社の娘、花子はある日、江戸時代に地下室にあらわれたという妖狐の化身、おかたんを封印からときはなってしまった。
“おかたんの封印解けるとき、埼玉県と近県に災い的な何かがもたらされる“
という言い伝えを聴いていた花子は、神主から授かった狐面の妖力によって、再びおかたんを面に封じることに成功し、おかたんは、花子のそばでしか具現化できない中途半端な存在になったのだった。
狐面は、花子が本気で恐れおののき、怖がれば壊れるという。
ついでに憑依体質となったクマのぬいぐるみとおかたんは、
はたして、感情の起伏があまりないクールな花子を怖がらせることができるのか。二人のオカルト談義が、今宵も始まる…。
第伍譚「気絶したあと、霊は何しているのか問題」
ある病院での話じゃ…そこはかつて戦時中に野戦病院として使われた過去のある建物じゃった…空爆によって負傷した者たちが次々と運び込まれては、物資が足りずに無念の死を遂げていく、そんな地獄じゃった…
前も思ったのだけど、
なんで封印されている間の世の中のことをよく知っているの?
戦国時代に封印されたのなら、戦時中って何も知らないはずじゃない
パパ以外にも話を聴いていたとか?
あーそれはアレじゃ、アストラル体として世をお忍びで見てまわったり…
霊界ネットによる情報収集とかいろいろあるのよ、こまいことは聴くな
霊界ネット…、そっちにもGoogle的なものがあるの?
そうじゃな、こっちではグーグルではなく、グールじゃ
和風にいうと、喰種じゃがなんでか現代の女どもは和文での表現だとピンとくるようじゃ、読み方は知っているんじゃがの
赫子を"かぐね”と読めればもう確定みたいなものだから
話の腰がアルゼンチンバックブリーカー級に折られたがめげずに続けるぞ
そんでじゃな、そんな過去のある病院で働くヨシコは、ある日、エレベーターで見てしまうのじゃ…ギィ・・ギィ・・・不器用な音を立てる錆びた車いすを押してやってくる、古めかしい恰好のナースをな!
車いすは日露戦争時代に使用されていた記録が残ってるし、
時代考証的にセーフ!
そういう考証を怪談語りの間に挟むのは野暮というものじゃ
ええのよ、怪談話の時代考証は本編が歴史モノでなければそこまで堅苦しく求めずとも、だいたいイメージできれば前後半世紀ぐらいは誤差よ
ヨシコはエレベーターのボタンを何度も押すが反応せん・・
向こうからはギィギィと近寄ってくる!ヨシコ危うし!でもボタンは無常にも反応してくれぬ…!あわや!!!というところで扉が閉まったんじゃがの・・
・・・・
閉じたはずの扉がまた開いてしまい、そこには、焼けただれた顔をしたナースが立っておった
「見ぃつけた」
「キィィィィヤァァァァ!!!」
ヨシコは気を失ってしまうのじゃ、怖いからの!
それから三日後、そのナースは戦時中に、扉が開かないまま空襲で亡くなったことを知ることになるわけじゃ
あのね、前からその手の「気絶シリーズ」で気になることがあるんだけど
ヨシコさんが気を失ったあと、その亡霊は何してたの?
そんなシリーズがあるのをしらなんだが…
なにとな…?そりゃあれじゃ、目の前でヨシコがぶっ倒れたわけじゃからして…ナースでもあるし脈でもとっていたのじゃろ
救命活動するならなんのために追い詰めたの?
「見ぃつけた」はなに?ずっと目の前にいて何を見つけたの?
あのな、花子よ
創作怪談に合理性は必要ない
より怖くなる表現を選択していくことの積み重ねよ
そりゃ、ナースが気絶しているヨシコさんの前でSwitchしてるとか
スマホでLINEの返事返してるとかそういうことはいわないけども…
戦時中のナースじゃぞ?Switchはないわ、モールス信号とかじゃな
亡霊ナースもたぶん打っとるぞトントンツーツー
・-・・・ ---- -・・・- -・ -・-- -・
(お)(こ)(め)(た)(け)(た)
自分が前後半世紀ぐらいは誤差っていったのに!!
主人公が気絶した後にモールス信号打つ霊とか聞いたことないよ
おこめ関係ないし!
解読するとはやりよる、今度はエニグマでいくとするか
…とにかく、その「気絶後何してるの?」問題が気になっちゃって、
そのあとの話があんまり入ってこないのよ
それは由々しき事態じゃ、気絶は大概が大オチの手前じゃぞ
脅かすのが目的じゃから、気絶したら「してやったり」と消えるのではないか?
えー、じゃぁ気絶しなかったらどうなるの?
怪談界隈だとすごくイージーに気絶とか気を失うけど、
物理的な干渉もないのに、そんな簡単に気絶しないよ?
気絶するまで肉迫してくるのよ
こうやっての(ち、近い!近い!)
それでも気絶せぬ場合は、そのアドバンテージを活かして
背後にまわって、手刀でトンッとな
なんか急に少年ジャンプ的な絵が浮かんできたけど!?
それによく考えてもみよ、ヨシコが気絶せねば、亡霊ナースの退場するポイントがないじゃろ、「キィィィィヤァァァァ」と悲鳴を上げたからには気絶する責任が伴うものじゃ
そうね…、悲鳴をあげたあとのアクションがないと、何度も脅かさないといけなくなって、終わりのないループ地獄が始まるもんね
なかなか死なない悪役の出る映画のあのシーンみたいに
亡霊ナースに限らず、振り向いたらいる系の黒眼の女も、ベッドに入り込んでいる白い感じの童も、壁から髪の毛垂らして染み出てくるタイプの霊もみんな、驚いてほしくてやってることじゃからな、リアクションしてやらんとボケゴロシじゃろ
なぜ芸人みたいなノリを求められるのかしら…
ほん怖とかによくあるシーンね、ベッドのは呪怨の俊雄くんね
あれは「キィィィィヤァァァァ」って叫んじゃうけど、
気絶はしないと思うんだ…
そうしたらどうなるか考えてみるがよい
気まずいぞ?エグいほどに気まずいぞ?
トシオに報いてやらんと悲惨じゃぞ?
た、確かに…!
俊雄くんとにらめっこ状態に突入しちゃう!
想像したら怖いけど30秒ぐらいで慣れそうな気がしてる!
やっぱり悲鳴と気絶はセットじゃないと成立しないのね…
グガ…ア"ア"ア"ア"ア"ア"
おいおい物騒なのが憑依したぞ、
トシオの話なんぞするから伽椰子じゃないのか
Oooh……くるよ?きっとくるよ…?
なんか違う気もするが、こやつは危ないからさっさと退治するか
バケモンにはバケモンぶつけるとよいと霊能者がいっておった
くるよー!!!きっとくるよー!!
キィィィィヤァァァァ!!!!近い近い!!
Feels Like Heaven!
そっちが気絶するんかい!
花子の形相があまりも怖かったようじゃの、
そしてクマの字、一貫して間違えているが
「Feels Like Heaven」は『リング』じゃぞ…
※第壱譚は↑。ひとつ前は↓から。