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妖狐異聞録『おかたんのしゃむしょ』第壱譚「"白いワンピースを着た髪の長い女”問題」

あらすじ

埼玉県にある古い神社の娘、花子はある日、江戸時代に地下室にあらわれたという妖狐の化身、おかたんを封印からときはなってしまった。
“おかたんの封印解けるとき、埼玉県と近県に災い的な何かがもたらされる“
という言い伝えを聴いていた花子は、神主から授かった狐面の妖力によって、再びおかたんを面に封じることに成功し、おかたんは、花子のそばでしか具現化できない中途半端な存在になったのだった。

狐面は、花子が本気で恐れおののき、怖がれば壊れるという。
ついでに憑依体質となったクマのぬいぐるみとおかたんは、
はたして、感情の起伏があまりないクールな花子を怖がらせることができるのか。二人のオカルト談義が、今宵も始まる…。

おかたんのしゃむしょ

第壱譚「"白いワンピースを着た髪の長い女”問題」


…そしてタカシは窓の外に見てしまったのじゃ…白いワンピースを着た髪の長い女の霊を…

それね…ステレオタイプすぎるんだよね
今時、白いワンピースを着た髪の長い女って居ないよ?
途中まで良かったけど、その幽霊像でぶち壊しになっちゃった

そういわれてものぉ…そういう怪談じゃから…
令和を生きる花子としてはどういう幽霊像が理想なのか教えてくれぬか?
ゴスロリとか地雷系ファッションに身を包んだピンク髪の女か?

むしろそっち系の娘のほうがこの世に未練を残しそうまであるけど…
怖くはないよね、あまりお近づきになりたくないだけで

それでは…これはどうじゃ
サイバーな衣装に身を包んだ、なぜかネギを持っているツインテールの…

それはレイではなくレイヤーなのでは…
タカシくんどんな属性持ちかは知らないけども喜んじゃいそう

こんなのも考えたぞ?

そこには、メイド服姿の三つ編みの女が…
タカシは思ったのじゃ…メガネをかけていないなんてありえん!と…

タカシくん癖が強い!
特徴が強烈すぎるんだよ…もっとナチュラルな感じじゃないと
お話の印象全部もってかれちゃうから
あんたの時代はどうだったの?

わっちの時代でも似たようなものじゃぞ
白い着物に髪の長い女じゃ

かつて、円山応挙という浮世絵アーティストがおってな
その応挙の死んだ愛人が夜な夜なトコに現れるんじゃと
それで描かれたのが白い着物に黒髪、下半身が透けているという今ではお約束のような幽霊のイメージじゃ

「「幽霊図(お雪の幻)」」円山応挙(1733-1795)
※パブリックドメイン

なるほどね…
幽霊画っていわれている浮世絵のほとんどは白い着物に髪の長い女ね
カラーで描くとコストがかかりすぎるからそういう感じにした説あるわね

朱色とか使っておるからな…せっかくなら目を赤くしたり
口から滴らせてもよかったじゃろうに…応挙…もったいないことをしたのぉ

演出過剰な昭和の幽霊みたいなメイクはないほうがいいわね

どっちにしても、たぶんその幽霊画から進化したのが
白いワンピースの女だと思うの
井戸から這い出てくるタイプの有名な女幽霊も普及に一役買ったのかもね

這い出てきて衣装のヨゴレのなさは逆に考えると井戸の壁が高級ホテル並に磨かれている説もあるぞ

ふうむ…そのへんの殻を破ってみたら案外怖くなるのかもしれんな…
では、こんなのはどうじゃ?

そして、タカシは見てしまったのじゃ…窓の外にユニクロのスゥエットシャツとパンツを履いた女が歩いているところを…

何かを諦めた日曜のOLか


だめか、現代風にしてみたんじゃがのぉ
では、これでどうじゃ、怖いかもしれんぞ?

タカシは見てしまったのじゃ…ミキハウスのパーカーとアディダスのジャージを履いた女が歩いているところを…

昭和のヤンママか
怖いのベクトルが違うところにあるわそれ

男女を入れ替えてみるのも手かもしれんな

ヨシコは見てしまったのじゃ…白いワンピースを着た、髪の長いタカシを…だめじゃな

とうとうタカシくんが軽犯罪に身を染め始めたじゃないの

江戸時代の幽霊って、三角巾みたいな布頭に巻いていたり
「うらめしや~」みたいなセリフがあるじゃない
そういうディティールで補ってみるのはアリだと思うの

三角…天冠のことか?そうじゃのぉ
着物も現代では日常ではないからな、間をとって作務衣にしてみるか
そして天冠の代わりにてぬぐいを頭に巻いて、手には…お盆とか持たせてみてもよいかもしれんな、決めセリフは…恨めしいの意味が伝わらないかもしれんから、霊界にようこそみたいな感じで…

「いらっしゃっせぇ~」

居酒屋の店員!


でもそれが深夜にタカシくんの部屋に現れるとしたらどうじゃ?怖かろ?

居酒屋の女店員がお盆もって自宅にあらわれることになる
物語の流れのほうが気になるわ

難しいのぉ…結局、花子はどんな女が現れたら怖いというのじゃ

うーん、ファッションとして成立しているなら怖くはないわ

是非もない…それでは全裸とか着ぐるみとかになるぞ?
怪談として成立しなくなるではないか…

そう、そこでいい手があるの
それはね…「能面」!
能で使う面にはね、穏やかな表情の「常相面」、非日常的なすさまじい表情「奇相面」、鬼や天狗の「異相面」さらにいろいろ細かい分類があるのだけど、おすすめは女面ね、増女とか

これを付けさえすれば、
どんなファッションでも怖さのほうが前面に出てくるから

能面「増女(ぞうおんな)」
※パブリックドメイン


そしてタカシくんは窓の外に見てしまったの…
地雷系ファッションに身を包んだ能面を付けたピンク髪の女を…
でもね、その女の面は呪いで外すことができなくなったの、
外そうとすると、顔の表皮ごとバリバリと剥がれてしまうから

ヒイイ!!!!逃げろタカシ!

どの衣装でもいろんな怖さを想像できるから
能面は怪談話においての最終兵器ね
でも打ち消し合ったりしないように、結局目立たない白いワンピースに
お面をつけるほうがかえって強調できていいのかも

原点に戻っとるぞ?
衣装だけではもはや現代っ子を怖がらせるのは難しいということか
能には翁面や狐面もあるが、どれも夜に浮かび上がったら怖いの
わっちは狐面が好きじゃがの…

なんとなく見えてきたのは、
死装束を普段着に置き換えたのがたぶん白いワンピースなんじゃないかな?
でも夜闇に紛れ出るときに黒い服だとわかりにくいから視認されやすくなるように白いワンピースを着るってことじゃない?

なるほど、一理ある
これからは白いワンピース以外の服をまとう場合にはレインボーに光る首輪をつけて出る話にしないと気づいてもらえなさそうじゃの

犬か!
あ、そういえばあんた狐の化身だから抵抗あんまりないのね

よし、では花子のアドバイスをもとにこういう話にしてみたぞ

…そしてタカシは窓の外に見てしまったのじゃ…昔の白い装束のようなものを身にまとう、顔は人間なのにまるで狐のような耳と尻尾を生やす、げに恐ろしい何かを…

うん、さっきから目の前にいるけど

傍らには、能の狐面をかぶった白いブラウスを着た従者がおった

誰が従者だ!!

ニンギョウ…ハ…イツモ…イチマツ…

花子よ、大変じゃ
クマのぬいぐるみが言葉を発しておるぞ

あんたの封印を解いたときについでにクママーも憑依体質になっちゃったの
何かの霊が憑依しているとしゃべるみたい

憑依体質のぬいぐるみとか意味わからぬ存在じゃが、
要するに人形の霊は市松人形がステレオタイプといいたいのじゃな

クママーに今憑依しているのはお人形の悪霊なの?
何のお人形なの?

グガガ…テディベア

ほんとに憑依か?キサマの嫉妬ではないのか?

お人形界隈にも事情があるんだね
さて…クママーに憑いた悪霊を祓わないと

まかせとけ、この霊を祓うにはこの呪言じゃ

キミットナッツノオワリショーライノユメ
オオキナキボーワスレナァァァイ!
キエェェェェェエイ!!!

/プシュー\

メンマァァァ…

白いワンピースはあの界隈での無課金装備説を提唱しようかしら…

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第2話

第3話


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昭和オカルト奇譚@Podcast🎧 note出張所
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