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魔法使い 童○ 何歳まで [検索]
もう随分と心の乱れを感じることもなく、安心して一緒にお仕事ができるようになって。
「何しろ、私には何もできませんからね」
こうして寝顔を見守るくらいのことしか。何か欠片でも伝えられたらいいのだけれど。
「ょいよ、またうちのにつきまとうてからに」
「!」
聞き覚えのある声が虚空から響いた。
「またあなたですか、お久しぶりですけど相変わらず感じ悪いですね」
「あんましイイ気になんなや、物に憑いとる付喪神風情が」
自称・背後霊。本当に賢しく美しい彼のご先祖様かどうかは知ったこっちゃない。偶に出てきてはこのように柄の悪い物言いをするので、私にとっては好ましい存在ではありません。
「何べん言やあわかるんな? ワシはおまえなんかよりずうり前からこんなん見守ってきとんじゃい」
「そっちだって、見てるだけでしょ? 声を掛けることも、姿を見せることもできやしない」
「ほざけ、本気出しゃあワレの弾道逸らすくらい朝飯前じゃ ちいとくらいなら物も動かせる」
「ほう?」
その瞬間、引き出しから微かにではあるが、しかし確実に《物が当たる音》がした。恐らく、その辺の人間ならまったく気にしない程度の小さな音だったが、物音に桁違いに敏感な彼が目を覚ますには十分だった。
(まずい!)
「誰?」
彼は一瞬で身を起こして引き出しを開けた。そして、私を抱えてもう一度
「誰?」
と言った。灯りは点けず、それでも確実に、部屋の中の一点を見据えて。
(もしかして、見えてる?)
「見えとるんか、ワシのこと」
「見えてるよ どっから入った? いつ?」
(しかも、聞こえてる!)
「いま初めて見えたっちゅうことか 見えとるんはワシだけか?」
「仲間が居るの?」
「ほうか、ワシだけか」
背後霊、ドヤ顔してる場合じゃないって。っていうか、どうやったら見えるようになるんだ? 私だけ見えないままでは話にならない。依代? 依代を探せばいいのか?
「居るのか」
居る。居ます。ちょっと待って!
【つづく】