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序章の序章『あらかじめ決められた恋人たちへ』

 とにかくこの愛称とは相性が悪い。
 意志薄弱な彼は試験の解答用紙にその名前を書いて僕に渡した。なんだかいつもより力強い意思を感じて受け取ると、勝利を確信したような顔をみせて笑った。
 
 解答用紙の名前はもう覚えてないけど、それはこの先もずっと僕の愛称として付きまとうことは確かだろう。そして回送電車が電子レンジの中で解凍するころにはきっと彼は改心しているに違いない。
 なんたって僕はその名前のせいで、実に感傷的な日々が続いて常に戒心してるわけだ。
 彼はそんなことも知らずに生涯の伴侶を探すために、どこかへ旅立ってしまった。
 その間、僕は回送電車に揺られながら車内の改装をした。雨の日も雪の日もだ。
 
 扉を開放して、病人が乗り込んでくると僕は介抱した。
 言葉も文字もわからない病人の腕には綺麗に日本語で「水と油は反発し合う」と彫り込まれていた。
 当たり前のことだ。
 
 彼を次に見かけたのは人気番組『戦争へ行こう』の中、ブラウン管の向こうだった。
「戦地の中心で愛を叫ぶ」という企画に彼は颯爽と登場して壊れた瓦礫の前で叫んでいた。

「君がスカッドミサイルならー!! 僕はパトリオットになる!!
 君が風に流される雲ならー!! 僕は愛すべき国で君を受け入れよう!!
 僕が立つこの大地はー!! 決して金儲けのモノではない!!」
 
 僕が彼を見かけたのはこれが最後だった。
 病人は快方へ向かい、僕は改装を続けた。
 僕が何故こんな目にあっているのかなんて簡単なことだ。
 彼がつけた愛称のせいだ。
 ほんとわけがわからないよ

『あらかじめ決められた恋人たちへ』

 序章
 第一章 〈巡り逢い・誕生・見知らぬ世界とハイバネーション〉
 第二章 〈記憶・歯車・意識的特異点とプラグアンドプレイ〉
 第三章 〈別れ・再生・目覚めの日とシリアルストリーム〉
 最後に

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先日、クローゼットを整理していると村上春樹さんの小説が数冊出てきた。
部屋の片付けをしていたのにも関わらず、『風の歌を聴け』を手にとった瞬間に読み始めてしまって、結局最後までノンストップで読んでしまった。
クローゼットの中はいまだ整理されていない。

『風の歌を聴け』を読んで、ぼくは衝動的にパソコンに向かって文字を打ち続け『あらかじめ決められた恋人たちへ』を書き始めた。

オマージュやリスペクトといえば聞こえがいいが、僕自身まだまだそんなものではないが、『風の歌を聴け』を参考にこの小説は進んでいるのは確かです。

現段階では完全な週末オ○ニー状態な作品になりつつありますが、公開後は暖かく見守ってくれれば幸いです(笑)



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野田祥久郎
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