サラダバス
「サラダバス」
いつものバス停に並んでいると決まってこの男が隣に来て「サラダバス」って呟く。
俺が待っていたバスに乗り込むもんだから、俺は気味悪がって一本後のバスに乗るようになった。
そいつが最近の俺の悩みである。
来る日も来る日も男は必ず俺の横で「サラダバス」と唱えてバスに乗る。
あんまりにも怪しいから一度だけ声かけてみた。
「あの、サラダバスって何ですか?」
すると男はゆっくりと向かってくるバスを指差し
「コレ」
とだけ言った。
「なんでこのバスがサラダなの?」
男はじーっと俺の方を見つめてきた。
コレはやばい。聞かなかった方が良かったかな。
「あのバスに野菜が乗ってる。沢山の。だから、サラダみたい」
「ほ、ほぉ…」
あのバスに野菜なんかあったか…?
バスのアナウンスとブレーキ音が鳴り、男を連れて去っていった。
その日の夜、いつも気にしてないはずのニュースが目に飛び込んだ。
バスの乗客を全員刃物で斬殺したという事件らしい。
男は動機についてこう話していた
「バスに野菜が乗ってる。沢山の。だから、サラダみたいに刻んだ」