梅雨の長野ツアー(ダリ、フジタと温泉)②ダリ版画展—奇想のイメージ(長野県立美術館)
今回のツアー、そもそもダリの版画展が長野で行われるという情報からスタートした。で、せっかく長野まで行くのだから小布施にも寄ろうかと思って前泊したのだ。北斎館で新札記念の企画展があると。北斎のあの「神奈川沖浪裏の波」が新札背景に使われているそうなのよ。
だがよくよく調べてみると長野県立美術館は意外に規模が大きい(県立を舐めるな?)、小布施に行って戻ってきてとなると1時間くらいしか時間が取れそうにない。それじゃ全ては見終わらないな。小布施の北斎も見たかったので迷ったが、今回は長野に集中することにした。結果は大正解。
ホテル前からバスで移動。あら、長野のバスもSuica使えないのか。旅に出る時小銭の携帯はやはり必須だな。
あたりは公園になっていて花が咲き乱れている。そんな中、
ダリ版画展 奇想のイメージ
さて入館。残念ながら作品は撮影禁止。いくつかは公式サイトで見ることが出来る。
『神曲」(ダンテ·アリギエーリ著)』1963年
最初はダンテ「神曲」の挿絵版画。あやや?これはダリ? いったいどこのダリなの?(お約束)
イマジネーション大爆発! すごいねえ。この豊かなイメージの洪水展開は油彩よりいいんじゃないか。版画なのにまるで水彩画のようなものも多い。これなら最初から水彩画として制作したらいいじゃんとも思ったが(実際デザイン段階では水彩画だった)、それだと一点もので量産できないか。
にしても「なんかいつものダリのタッチと微妙に違うかも、まあでも筆と彫刻刀じゃ違うよね…」とぼんやり思っていたら、館内の解説によると、ダリはデザインだけで実際の版画の制作は他の人、だったらしい。やっぱり! オレでなきゃ見逃しちゃうね!
別にこれはズルではなくて浮世絵分業方式みたいなものだよね。版画ってそういうものなんだろう(今回の展示版画作品が全部そうかはよくわからなかった)。
またこれも解説によると、「木版」となっている作品もこれは木の板にベークライト(プラスチック樹脂のひとつ?)を被せてそれを彫っているとか。へ〜。
住友ベークライトは名前だけ知ってたけど。
また更に解説によると、実はダリは「神曲」読んでなかったんじゃないか疑惑があるという(本人もそうバラしてる記録があるらしい)。「挿絵」なのにその絵が「神曲」のどの場面かよくわからないものも少なくない。
個人的には、たとえそうであってもダリの絵に変わりはないのだからどうでもいいと思う。学者の論文じゃないんだし、ゲージツ家なんてみなさんノリで作るものだよ。いいんだよ、私だって「神曲」読んだことないよ、ダリの作品が拝めるならそれでヨシっ!
にしてもすごい、あふれるイメージ、芳醇なキャラクター造形力。これぞ奇想。ダリに少しでも興味があるならこの企画展は見たほうがいい。
版画って、画家がより自由になれるのかな。ありとあらゆる技法が取られている。フランシス・ベーコンみたいな肉塊風もあれば、「ストーン・フリー」みたいな線描(これは銅板を引っ掻く版画向きだね)なんかもあった。
会場には版画だけでなくダリ制作のフィギュアも数点あった。おなじみのダリの引き出しの付いたやつも(「引き出しを持つミロのヴィーナス」)。引き出しとは、誰もが心の中に持っていて、これを引き出すと人の深層の記憶を垣間見ることができるもの? これ、露伴先生の、体中の記憶がメモになって読めるスタンド能力「ヘブンズ・ドアー」のヒントになってるのかなと今さら気が付いた。
『15の版画集』| FifeenEtchings 1968年
神話の神々やら過去の巨匠やら同時代のライバルたちの似顔絵?版画。
作品名/Title
犀/ Rhinoceros
象/Elephant
ナルキッソス/Narcissus
トゥルーズ=ロートレック/Toulouse-Laurec
メルクリウス/ Mercury
レオナルド·ダ·ヴィンチ/Leonardo da Vinci
ファン·ゴッホ/Van Gogh
ミケランジェロ/ Michelangelo
やわらかい電話/Soft Telephone
ベガソス/ Pegasus
レンブラント/Rembrandt
シャガール/ Chagall
ビカソ/Picasso
ダリ/Dali
やわらかい時計/Soft Watch
犀とか動物も描いているのは、科学的なアプローチらしく、サイのツノはあの対数螺旋の現物としてダリは理解礼賛していたようだ。なんかもう黒魔術的な興味じゃないかな。対数螺旋の動きって「スティール・ボール・ラン」にも出てきたな。
鉄球!🎱(高えww)
同時代の画家とはお互いどんな関係だったんだろうね。ピカソの似顔絵はあまり似ているように見えなかった。そして自分の肖像はベラスケスになぞらえている。
ピカソは女を取っ替え引っ替えしたが、ダリはガラ一筋だった(たぶん)。二人の巨匠は当時人気を分かつていたのではと思う。冷ややかな目で見ていたんだろうか。
『不死のための10の処方』| Ten Recipes for Immortality 1973年
ダリが死を恐れていたのはよく知られたところ(誰でもそうだろうけど)。そして不死の可能性を科学に見出そうとしていた。『不死のための10の処方」の作品群はその研究の成果?
《カストルとポリュテデウケスの不死》Castor and PolluX
その中の一枚。足を交差させてるようにも見える二台の背の高い台座の上にそれぞれコラージュっぽく、石膏取りしたかのようなレリーフの臀部が乗せられる。これツーケーのナーアー丸見えじゃねーかよ。魚拓でも取ったのか?
カストルとポリュテデウケスってだりだっけ? …そっかふたご座の由来なんだ。不死と関連があるようだ。でもツーケーの…作っちゃうのはなんとけしからん! 男色を匂わせてる?
『日本の民話」| Japanese Fairy Tales
なんと、日本の民話を題材した版画もあった。それがまた微妙に内容がズレてるようで(蝶ネクタイした爺さんとか)、ダリ先生また「原作読んでねーんじゃね?」疑惑があるらしい。ま、それもダリファンなら別にどうでもいいことだと思う。
東山魁夷館へ
東山魁夷で一館作っちゃうんだ。そこまで信州に縁あったっけ?
その別館に行く渡り廊下を渡っていると
なんだこりゃと思ったら、これも作品のひとつらしい。インスタレーションだな。一時間に一回くらいのペースで繰り返される。
次の時間の回は橋の下から体験した。
最後はほんとに煙に巻かれてなにも見えなくなった〜。最初からそばに係員さんがいて、水の中に落ちないように常に気を配っていたよ。
東山魁夷風に撮れたかな?(あれ?絵の感想は?)
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