外科医の武器part2

視力2.0+スキャン機能搭載

手術をやり始めたばかりの先生と指導医の違いはなんであろうか。そのひとつが目の良さである。ここで言う目の良さとはもちろん視力の事ではない。みんな同じく見えている術野から、よりたくさんの情報を得られる能力である。
「そこに血管があるでしょ?あれが〇〇だよ」
「えっ、なんでわかるんですか?」
こんな会話は、研修医や修練医と手術をしているとよくある会話である。
同じ術野をみても、脂肪のちょっとした窪みとか膨らみとか影の出来方とかで、脂肪の中に含まれる血管の走行やリンパ管の有無、裏に隠れている臓器などが経験的に見える(というかわかる)のである。
人間は見ようとする物を認識する。逆に意識していないものには全然気付かないことなどは、トリックアートなどでみんなも一度は経験があるのではないだろうか。手術の経験も同様で、そこにあるものを意識しながらたくさんの動画を見続けることで、そこにあるものがちゃんと見えるようになるのである。
チームスポーツとかで、「あそこにスペースがありますね」なんていう解説者がいて、なんのこっちゃ、と思うことが僕はよくあるけど、あれも見ようとして様々なパターンを見続けた結果、見えてくる景色なのだと思っている。そして、これは訓練でみんな出来るようになる!と、おもう。逆に意識しないと何時間みても上達しない。
見えているから安心して手術が進む、合併症もなく安全に帰る。
手術に限らず、何事も意識してそれを繰り返す事で上達するんだな、と実感する。
テレビ見ながらの素振り100回より、フォームを意識して10回やるほうが上手になるわけだ。もちろん、意識して100回できたら最高。
ということで、僕らは死ぬほど手術動画をみる日々を今日も過ごすことになる。


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