読了「福島第一原発事故の『真実』」

(NHKメルトダウン取材班・著。講談社・刊。2021/3/1発売)
2021/8/11(水)読了。honto電子書籍にて。

【フルカラー・固定レイアウト版】が電子書籍で出ると話題になっていたので、もともとの興味もあり、読んだ。

事故から10年が経過して、様々な情報を継続的に追いかけてきたNHK取材班が、(たぶん)NHKスペシャルで放送した内容を文字化したもの。
事前の地震対策検討状況、当日事故後の対応状況、事故から日数が経過してから今日までの対応状況が、検証の視点を中心にまとめられている。

読んでいると、いろんなことが頭をめぐる。
被害者の方のことを考えると、どうしようも書きようがない難しさを感じるけれど、
本書が検証の視点を中心にしているとはいえ、
事故当日、事故現場で、結果的にでも総じて高い職業倫理観や責任感をもって現場対応をしてくれた方々の対応内容の記載は多く、そのおかげで、被害がもっとひどくなった可能性があったのを現状レベルで食い止められたことには、現場の方々に深く感謝したい。

それでも、事故の結果として、被害が出て、事故前の生活を奪われた人がいるのは事実で、良くないことで、補償は当然で、再発防止も必須。

本書の主眼は、原子力発電自体と人間がどう向き合っていくか、今回の事故の教訓を確実に残して伝えていくことと思う。
本書の内容は、原発に限らず、危機管理(事故前、事故後)という視点でも多くの教訓を与えてくれる。

少しネタバレになるが、本書のあとがきには、
「この極限の危機において、人間は核を制御できていなかった。それが『真実』である。ただし、これは『10年目の真実』だろう。」
という部分がある。(できれば文脈を読み違えないために、本書を読んでいただきたい。)
原発も科学技術の塊であり、事後検証ができるのも科学技術を基盤としているからと思うけど、
一般論として、科学技術だからこそ、進化し続けて、安全性が高まり続ける(同時に科学技術でメンテナンスコストも低減するはず)べきと思うけれど、
こと原発に関しては、事故から10年経っても、最善を尽くしても、今なお廃炉どころか検証も100%ではない(検証材料が完全には収集できていないから)という状況があり、それが放射線環境によるものということを考えると、
人間として、科学技術を含めた知恵を進化させ続けようとする人間が多くいるのに、核燃料や核廃棄物を自在に扱えていないのは、人間として、ものすごく残念だが、特に核に関しては敗北しているのだと思う。コントロールできていないのだから。
たぶん、原発は、使用済み廃棄物まで含めて、事故リスクや、それを真にコントロールしようとコストをかけると、本当はコストが合わない発電(他の発電の方がコストパフォーマンスが良い)なのかもしれない。
もちろん時期や環境によって他の発電のコストも変わるとは思うが、他の発電の方が比較的リスクをコントロールしやすいのではないだろうか。
無闇に「原発推進」「原発反対」とやりあうのではなく、コストパフォーマンスを平等に評価・検証することが、人間のやるべきことではないかと思う。

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