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我が故郷、リーズ大学に思いを馳せる Part.3 ー「ダメ夫」の番組を通じたディベートー

リーズ大学での授業の中には、単に英語学習や英会話の実践に留まらず、現地のテレビ番組等を通じたディベートもあった。今回はその中でも特に印象深かった「ダメ夫の番組を通じてあなたが感じたこと」を英語で討論した時のエピソードを話していきたい。

担当の先生は通称「ビー(Bee)」という、比較的参加プログラムの担当教諭の中でも若い30代の女性だったのだが、実を言うとこのBeeさんには本当に色々とお世話になったというか、年上の優しいお姉さん的な側面が強くて、男の子的にやる気が高まってしまったという感じで…(笑)その先生が学生たちにディベートの授業を行ったのだが、その際に使用されたのがBBCかどこかの「ダメ夫」の番組だった。

内容としては、4名のダメ夫に不満を持つ妻が、ダメ夫に家事をやらせて離婚するか否かを決める、という中々シュールなもので、これを授業で見るハメになるとは思わなかったので、相当に攻めた授業内容だなぁと非常に驚いたのだが…(笑)登場するダメ夫4名は、基本的に「家事を普段は行わない」という点では共通しているが、うち2名が特に学生たちには印象的に映ったようで、主にその2名の男性に関してディベートが展開された。簡潔に2人の印象をまとめると

①60数年生きてきて、一切の家事を(当たり前のように甘えて)妻に任せっきりにしていたが、実際に家事を初めてこなすが故に、全く家事ができないことが露呈してしまい、妻に申し訳ないと号泣しながら許しを請う、情けない甘えん坊な印象の男性。

②40台前後の中で(暗黙の了解的に)家事を妻に任せっきりにしながらも、こなさなければならない状況に直面した際には、何ら問題なく全てやり切ってしまった、実は仕事も家事もデキるが故に、妻を心底驚かせてしまった男性。

尚、実際に離婚に至った夫婦はゼロだったのだが、それぞれが妻に対して「すまなかった」「家事をするよう努める」といったように反省の弁を述べるなりして、関係の修復を図る内容でもあったと思う。そして、その映像を見終わった後で

「一番最低だと思う夫は誰か」

というテーマで、ディベートがいよいよ始まることになった。

先も述べた通り、ディベートはほぼ両者の優越や対比で展開していく形になったのだが、学生からは①の「家事が本当に出来なかった男性」に対して否定的な意見が圧倒的に多かったと思う。なにしろ、あまりに家事も料理も全くできない光景が、我々にはただただ衝撃的であった上に、挙句の果てには妻の前で子供のように涙する光景が、情けない夫として大きくマイナスに映ってしまったのだろう。人間は、どうしても能力や精神的な強さの中で他人への評価を左右してしまうが、それが最も現れた形であるのかもしれない。

逆に言うなら、②の男性に対する否定的な意見は、ほとんど見受けられず、むしろ彼を「ちゃんと家事のできる理想の旦那」として暗に評価するような意見すら飛び交っていたようであった。

しかし、女性講師のBeeさんの意見は我々と全く異なっていた。

「皆さんビックリされると思うけど、私は②の男性が最低だと思います。

①の男性は本当に出来ないから仕方がないと思うの。できないことを任せっきりにして、本当に自分は妻に支えられてきたって思う気持ちを込めて謝罪してくれるのは、(自らの意見として)妻としては嫌な気持ちにはならないわ。できないからこそ、それをやってくれる人に対して感謝の意を伝えることは、夫婦生活の上ではとても大切なことなのよ。でも、

②の人は自分ができることをワザと隠して、妻に家事を強いていたのだから、本当に最低だと思うわ。できるのにできないフリをして、負担を強いるほうがよっぽど悪質だと思うの。(家事を簡単にこなした後に、飄々と妻の前に何事もなく現れた②の旦那への嫌悪も含めて)だから、私は②の人が本当に嫌い」

Beeさんはお二人のお子さんの母親でもあった故に、当事者として男性による家事に対する関わり方に非常にシビアなのだろう。確かに、②の男性は一見すると嫌な印象を抱く要素は少ないように思えるが、本当は難なくこなせる家事を妻に任せっきりにしておきながら、自身は妻の前で飄々としている姿にBeeさんが心底嫌悪を抱くのは、今思えば当然のことなのだろう。あるいは、いい年こいて妻に甘える旦那という構図など比較にならないほど、暗に「家事は女性の仕事」という暗黙の了解的に強いている姿のほうが、女性としては遥かに嫌悪を覚えるということでもあるのかもしれない。

思わぬ形で女性のシビアな本音に触れる機会を、まさかイギリスという遠い国で得られるとは思わなかったので、当時は本当に驚いたものだった。今回初めてこの話題に触れることになったのだが、改めて自戒も込めてこの時のことを忘れないように努めなければと思う。

ところで、Beeさんはお元気だろうか。(竹を割ったような性格で大好きだった、アイルランド人女性講師のNieceさんも含め)自分は特に仲良くしてもらったので本当に思い出深い。一度Ilkley旅行か何かの際に連れてこられたお子さん、ほっぺがぷくぷくで本当にかわいかったが、そのお子さんも既に大きくなられているのだろう。今もリーズ大学で教鞭を取られているのだろうか。英語記事にして、読んでもらえば連絡も頂けるのかもしれないね。

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