祝・新作発表記念 ー首都高バトルの思い出を振り返ってみるー Part.13 「カスタムカーという”自由創作”」
首都高バトルといえば、ボス級のライバルが主に搭乗する「カスタムカー」も魅力の1つであるが、その中でも数多くのソレが収録される首都高バトルZEROから、個人的に印象的であった車種について触れていく。
尚、ZEROに登場する車種の考察に関しては、いつも首都高バトル関連では非常に興味深い分析や解説を披露して下さる、BBBさんの動画も併せてご参照頂ければ幸いです。(上が前編、下が後編となります)
①AP1HTK(HONDA SSM CONCEPT)
中ボス「ルシファー大塚」が搭乗する、ホンダS2000のコンセプトモデル「SSM」を彷彿とさせるカスタムカー。SSMは1995年の東京モーターショーで披露され、当時はホンダのFRスポーツの復活の象徴として非常に話題となったが、実際に発売されたS2000とはヘッドライトの位置が異なっている上に、テールライトのデザインもより前衛的である。
驚くことに本作で登場する「AP1HTK」、単にS2000をSSMっぽい仕様に改造したのではなく、AP1改仕様を公称しながら、ほぼほぼ「SSM」自体をハードトップ化しているようにしか見えないのである。要するに、本来は街中を駆け抜けるはずのないコンセプトカーが、颯爽と首都高を駆け抜けていく絵面が生まれることになるのだが…こんな大胆な演出が実現したのも、恐らく各自動車メーカーから車軸デザインのみの許諾に限定していたが故の、「表現の自由」の恩恵であったのだろう。
にしても、世界に数台も存在していないであろうSSMを入手してしまう「ルシファー大塚」という人物、一体何者であろうか…(汗)
②R34RKK 「Nissan Skyline GT-R GT500 Edition」
ラスボス「迅帝」の搭乗車種としては勿論のこと、Super GTの参戦車両を彷彿とさせる大胆なデザインでもお馴染みの「R34RKK」。本来はオマージュ満載の模造ではあるのだが、令和に入り実際のGT500仕様が収録されているグランツーリスモ7では、リバリー機能を通じて、模造たる「迅帝仕様」が爆誕する逆転現象も生まれるほどに、今も熱烈な人気を誇っている。
ステッカーにもBridgestone➡Burstspeedといったように、微妙に示唆的なパロディがさりげなく織り交ぜられているのも魅力的。尚、「壱撃離脱」というフレーズも相当に象徴的ではあるが、仮に国際市場も見据えての次作のリリースである場合、昨今のポリティカルコレクトネス云々の流れで廃止になるのではないか…というのも、旧日本軍の戦略に関わるフレーズであるから、らしいのだが…といった懸念もちらほら噂されているとか、いないとか…。
尚、実際の「逆転現象」に関する映像は、度々引用させて頂く形になりご本人には申し訳ないのだが…(笑)BBBさんが再現映像を公開されているので、併せて是非ともご覧いただきたい。
③R34RK「Nissan Skyline GT-R Red Devil Edition」
こちらもシリーズではお馴染みの存在…ライバルロゴも含めて、機動戦士ガンダムのシャアを彷彿とさせるライバル「紅の悪魔」の搭乗する、ボンネットに「専用ザク」のように強烈な「兜のようなウイング」を搭載するスカイラインGT-Rである。元ネタの背景知識がなかった自身は当時、非常に個性的なデザインのエアロを纏っているなぁ、と中学生ながらに新鮮な気持ちで眺めていたのだが、今思えば「究極の痛車」でもあるのかもしれない…(笑)
原形をとどめないほどのカスタムが施されているように見える一方で、ヘッドライトやテールランプ等も含めて、R34の魅力や個性を活かしつつ、あの強烈な印象に帰結させていく造形美は今見ても非常に壮観である。
恐らく、上記の迅帝よりは「表現の自由」に関わるハードルは低いと思われるので、次作ではどのような形で再現されるのかも、密かな楽しみではあるし、どうせならボス集団なりチームなりに格上げし、更なるパロディを展開して頂きたい願望もあったりする…それでこそ、エヴァンゲリオンへのオマージュも面白そう(笑)
④NCP35K 「Toyota bb」
一瞬「オープンデッキ」の亜種と錯覚してしまうが、こちらは本当にベース車両の「bb」のボディを大胆にも切断し、ピックアップ仕様に改変したオリジナルである。ワンダラーの「辻斬りギャンブラー」が搭乗しており、性能的には強烈な要素は皆無ではあるものの、何しろ風体が強烈なだけに、未だに強烈に記憶に残っている車種でもある。唯一の弱点は、先も触れているが「性能の欠如」であるように思えるが、それは遊び心を以て触れることも創作物への優しさや敬意なのかもしれない。
リアタイヤ上部のステッカーは、米国のタイヤブランド「BF Goodrich」のパロディと思われる。攻略本を通じては文字が良く見えなかったので、実際に何が書いてあったのかは分からなかったのだが、実はBBBさんによる解説動画(前編)の再生時間2:00頃で拡大画像が掲載されている。ただ、昨今のポリコレ事案に対する批判的な態度こそあれど、仮にも国際意識高い系の端くれでもある自身ですら、流石に掲載するのは憚られるような単語が用いられてしまっているので…諸々割愛させて頂きたい(苦笑)
それはさておき、アメリカン・マッスル全開のカラーリングも印象的もさることながら、2シーター化されてしまった上に荷台の有無が判明しない謎仕様も含め、ここまで使い勝手の悪そうなカスタムを実現できてしまうのも、まさにこうしたゲームの醍醐味であると言える。
参考までに、実際にトヨタから発売されていたオープンデッキの詳細も下記に掲載させて頂く。改めて両者を眺めてみると、いかに「NCP35K」が大胆かつ実用性ガン無視な代物なのかがよく分かる…(笑)
⑤Z32VSK 「Nissan Fairlady Z Twin Turbo」
上記の「BBBさんによる解説動画(後編)」でもご紹介の通り、元ネタは某カスタムカーショップ制作の特別車両。ボスの「クイーンズナイト」が搭乗する。ライトが塞がれている感じは、90年代にも流行していたリトラクタブルヘッドライトを彷彿とし、その世代の自動車に触れた幼少期を思い出すようで、どこか懐かしい心境にもさせてくれる。
元ネタの車種は、現在も実走可能な状態で大切に保管されているようで、2020年のGQ JAPANで特集記事も組まれている。
⑥A80RZK 「Toyota Supra RZ Abflug Edition」
本作で実際に登場する「Abflug」社、そのエアロパーツを全身に纏った仕様である。首都高バトルきっての強敵女性ドライバー「エキゾースト・イヴ」の搭乗車種であるが、彼女を象徴する「ショッキング・ピンク」を纏っており、それでこそ自動車業界を大いに賑わせた、「ピンク・クラウン」の先駆けであるのではないかと勘ぐっていたりする…(笑)
Abflug社のエアロパーツ、米国のスポコン市場では絶大な人気を誇ったVeilSide社に並んで、国内では賛否両論も多く見受けられたのだが、個人的には非常に好感を持っており、当時はそうしたエアロパーツを纏った車両に搭乗する未来に憧れてすらもいた。尚、本作のオープニング映像では同社のエアロを纏ったGT-Rも登場している。
⑦S161VK 「Toyota Aristo V300」
DTM仕様と化したトヨタ・アリスト、ここまで大胆なカスタムを施してしまう粋な演出…本当に胸を熱くさせてくれるものがある。「ブラッドハウンド」というボス級のライバルが搭乗しているが、ゲーム中盤辺りに登場する故に、自身の搭乗する車両では太刀打ちできないことが多く、中々の強敵であった印象も強い。
メルセデス・ベンツの特徴的な顔つきへの、実に巧妙なサンプリング感もさることながら、ステッカーも絶妙にパロディが施されており、「D2」ではなく「B2」、「Privat」➡「Probad」など、プレイヤーにモノホン感を錯覚させつつも、全然意味合いが異なるのも面白すぎる(笑)こうした非常にウイットに富んだ創作性も、やはり表現の自由の実現する当時の環境の賜物であったのだろう。
余談だが、下記にリンクを掲載の「DTM仕様」のカラーリング、個人的に非常に好みなのだが…あの「無数のD2マーク」、グランツーリスモ7でのリバリー機能による自己再現が極めて難しく、完全再現に至らないのが若干悔しかったりする。
⑧A80RK 「Toyota Supra GT500 Edition」
あまり話題にはなっていないようだが、もう1台のカスタムスープラは下記にリンクを掲載の、1994年のGT500仕様へのオマージュと思われる。「スティール・ハート」というボス級のライバルが搭乗している。ボンネット前面のステッカーは明らかに「TRD」を彷彿とさせるのだが、こういう細かい演出にもこだわりが感じられる。
⑨Z16AK 「Mitsubishi GTO Twin Turbo」
こちらも完全な創作と思われるが、偶然なのか確信犯なのか…同名のフェラーリの旧車を模したようなデザインが印象的のカスタムカーである。強敵女性ドライバー「ミッドナイト・ローズ」が搭乗している。基本的にベース車両の面影が残らないほどの改変が施されてはいるものの、あまり手を加えすぎて不細工な仕様にならない辺りは流石である。
下記に掲載のリンク先は、公式による同盟車種の紹介ページであるが、あらためて両車種を眺めてみると…考えてもみれば著作権スレスレの表現の自由の行使でもあったのだろうと、少し冷や汗すら出てくるような心境にもなってしまう…(笑)
⑩FC3E3K 「Mazda RX-7」
リトラクタブルヘッドライトから露わになる、やや小さめの丸目が印象的なFC型RX-7。ボスキャラ「追撃のテイルガンナー」が搭乗しているが、大きなカスタムの要素が少ない割に、異様に速かったので妙に印象に残ってしまっているし、微妙に可愛らしいライトでガンガン煽りを喰らう感じは、寧ろ恐怖でしかなかったのだろう…(笑)
⑪PS13XK 「Nissan 180SX」
こちらも上記の「BBBさんの解説」によると、後方のランプがGT500に参戦していたスカイラインGT-R仕様を模しているのではないか、とのこと…要するに、しれっと遊び心が織り交ぜられているのだろう。ボスキャラ「影の謀反者」が搭乗しているが、加速力が凄まじかった印象が強く、先のテイルガンナーと同様に苦戦を強いられた印象しか残っていない。
⑫100TVK 「Toyota Chaser Tourer V」
こちらもよく見ると、JTCC仕様のトヨタ・チェイサーへのオマージュのようにも見える。個人的にはライバルのホンダ・アコード推しではあったが、チェイサーの鮮烈デビューも非常に印象的であった。
96年代から参戦するや否や無敵の強さを誇ったホンダ・アコードの対抗馬として、確か97年より参戦を果たしたのがトヨタ・チェイサー。それまではシリーズで絶大な強さを誇ったFF車のエクシヴに代わり、FRの強みを生かしてアコードを暫し凌駕するほどの活躍も見せていたが、
後に諸々の事情でホンダと日産が撤退を決めてしまってからは、「誰もいなくなってしまったシリーズ」の象徴として、寂しく参戦を終えてしまった哀しい存在でもある…そんな暗い過去を忘れさせてしまうほどに今眺めても、このデザインは非常に魅力的である。