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携帯が鳴る会と鳴らない会~落語会の見分け方【ほぼ無料】

世の中には、

「携帯が鳴る落語会と鳴らない落語会」

が存在し、また、落語会には

「携帯が鳴っても、不快にならない会と不快になる会」

が存在します。
ちなみに落語会のお客様は初心者から落語ファンへと濃度を高めていく上で多くの人は「携帯が鳴らない会 or 携帯が鳴っても不快にならない会」を自然と選べるようになります。

この理屈を理解すれば運営側が(噺家側が)「落語会でなぜ携帯が鳴るのか!」と怒らなくてよいし、落語ファン自身も「基本は携帯は鳴らない方が良いです。でも、たまに鳴っても、それを落語家がイジって笑える時もあるよな…何でやろ?」という疑問の解消にもつながります。

そして、そもそも「落語会で携帯が鳴る問題」とは「鳴ることが問題」ではなく、「携帯が鳴ったことで、その落語が台無しになったとお客様が思う状況が問題」なのです。

この問題は、落語世界全体では解決はしないのですが、個別的&局地的な問題としてはほぼ解決するので、その方法を書き記します。


携帯が鳴る落語会と鳴らない落語会

「どういう会で携帯は鳴るのか?」

まず、東京・国立劇場や大阪・国立文楽劇場での落語会は、携帯電話の電波を遮断する装置が備えられているので、絶対に鳴らないです。
天満天神繁昌亭の昼席と夜席なら、昼席の方が携帯が鳴る確率が高いです。
大阪・動楽亭の昼席は繁昌亭昼席よりも携帯が鳴る確率が低いです(ほぼ鳴らないです)。
繁昌亭の夜席でも「普段落語会に来ない親戚や知り合いを沢山呼んだ独演会」や「鶴瓶師匠がゲストの落語会」だと携帯が鳴る確率が非常に高いです。

ここから導き出される答えは以下です。

①物理的に妨害電波のある劇場では携帯は鳴らない
②妨害電波のない劇場においては、お客様の中に初心者(携帯を鳴らす可能性のある人)の比率が高いと携帯が鳴りやすい。
言い換えれば、落語ファンの濃度が極めて高いと鳴らない。
→携帯が鳴る確率は「落語ファンと初心者の比率」で決まる。

さらに、初心者は「落語会のマナー」を知らないだけでなく、「落語会では携帯を切らないと自分が楽しめない」という「自分が損をする理屈」を知らないからこそ、落語ファン以上に携帯を切り忘れます。つまり、初心者が落語会に流入する場合、携帯は鳴るのです。もちろん「初心者禁止」をする業界は廃れるだけなので、新規客に来てもらうためにも「初心者禁止」などはしてはならないし、そんなイベントは基本は存在しません。
ここから導き出される1つの結論は「落語業界で携帯が鳴らなくなることは無い」という事実です。もし全ての落語会から携帯が鳴らなくなるということは新規客がいなくなっているということですから、逆に大問題です(笑)
→実際、コロナ禍になり、新規客が少なくなって携帯電話が鳴ることは物凄く減りました。そしてコロナ禍が緩和され出したら、携帯がまた鳴り出しました(笑)そういうことです・・・。

まあ少なくとも、上記の分類で「どの会に行けば携帯が鳴りやすいか」は理解できると思います。

ではさらに、、、、

「どの会に行けば携帯が鳴っても快適に過ごせる確率が高いか?」

という問題に移ります。実はお客様は無意識のうちに(経験上)、どんどん「快適な落語会」を選べるようになります。ただ、それは経験による学習なので、残念ながら「あ、この会に行ったら、不快な目に遭う!」を経験しないとほぼ無理です。よほどの幸運に恵まれない限り、コアな落語ファンは「不快な落語会」を経験することで成長していくのです。それは「自分の好きな落語家」を発見するまでに無数の面白くない落語家と出会う・・・みたいな話かもしれません(笑) ←あくまで「面白い・面白くない」はお客様個人の好みですが。

「携帯が鳴ってもギャグに変えられる状況とは?」

たまに「携帯が鳴っても、あの落語家はその状況をギャグに変えてた。それをギャグに変えられるかどうかは芸人の腕」と言う人が現れますが、そうとは言えないと私は思います。
これを言う人は「通ぶりたい人」か「コアな落語ファンでは無い人」か「ちゃんとモノを考えられない人」のどれかやないかと思ってしまいます。
なぜなら、コアな落語ファンであれば、「物凄い腕のある落語家であっても、ギャグに変えられない状況」を見たことがありますし、「大して腕の無い落語家がギャグに変えてウケてる状況」も何度も目にしてるからです。
では、なぜこういう事が起こるのでしょうか?

まず「携帯が鳴っても、なかなかギャグに変えられない状況」とはどういう状況でしょうか?それは、

お客様の集中力が研ぎ澄まされて「落語の作品性」を思いっきり楽しみ、物語の世界の中に没頭してしまっている

状況で、「携帯が鳴った場合」です・・・。

この状況ですと、携帯が鳴った瞬間に周りの人間が(噺家も含めて)、
「あ~あ!何を鳴らしとんねん!」となってしまいます。世界観がブチ壊されるからです。

ということは、これ以外の状況では「ギャグに変えられる」とも言えます。つまり、「携帯が鳴ってもギャグに変えられる状況(携帯が鳴ってもそこまで腹が立たない状況)」は、大きく言って以下の①②です。

①「お客のほとんどが初心者」の状況
→初心者は「作品性」まで意識はいかず、ただただ娯楽として楽しもうとしていますし、落語ファンが突発的に発揮する「極度の集中力」を持ちません。
だから、通常、没頭していないので、携帯が鳴った場合、
「携帯が鳴ってるよ~!だれ~!」と芸人が高座で言うだけでウケる状況とも言えます。
※実際、東京の寄席や繁昌亭昼席でネタをやってる最中に携帯が鳴ったら、もちろん困る部分もありますが、そこまでダメージは少ないです。人情噺ですらギャグになったりします。実際、そもそも初心者が沢山来る状況なら、噺家は携帯が鳴ってもダメージが少ないネタを選んでいることも多いです←そうなることを見越しているからです。

あるいは、

②落語家が「物語の世界観に没頭させていない」状況
→皮肉な話ですが、
上手な噺家がお客と一緒に「物語の世界に没頭できる状況」にある場合、携帯が鳴ると、その世界は崩れます。ですので、まず、そんなにウケてない時はまず携帯が鳴っても大丈夫です(ホンマか?)。
そして「物語の世界に没頭させなければ通じない特定のネタ(各噺家による)」をやっていない場合、皆でその時空間を一緒にただただ楽しんでいるだけですので、携帯が鳴っても一緒に笑えます。
ですから、逆に、凄い腕のある芸人が凄い芸をやってる時に携帯が鳴った場合、悲劇は起こります・・・。ある意味、携帯が鳴っても笑える状況は、ライブ感があってそれはそれで楽しいのですが、凄い芸はやってない状況とも言えます(落語=想像の芸で、物語の作品性に皆で没頭していなかったということですから)。いわゆる初心者向けの落語をしていたり、そんなに世界観を重要視しないネタをしている状況です。この場合、携帯が鳴ってもギャグに変えられます。

「携帯が鳴ってもギャグに変えにくい状況」が起きる条件

では、逆に「携帯が鳴ってもギャグに変えにくい状況」というのが起きる条件は、下記となります。

①妨害電波のついてない会場で、
②客層の比率に、落語ファンが結構多いが(約3分の1か4分の1以上)、
③一方で携帯を鳴らすような初心者のお客も多くて(鳴る確率が高い)、
④落語家が携帯が鳴ることを予測できずに「落語を好きになり出したお客が、物語の世界観を新鮮に聞いてしまうような上質のネタ(?)」を選択した場合

です。つまり、この悲劇は、顧客が初心者だけでも起きないし、落語マニアだけでも起きないのです。これは「落語が好きになり出した落語ファン」と「全く良く分かってない落語初心者のお客」と「その客層まで予測できなかった落語家だが、腕が結構あって、その噺家が渾身のネタをやること」で生まれる悲劇です。

その意味で、この悲劇を防ぐには、落語家の予測能力しかないと思われます。お客様の比率がどうであるかは、お客様にとっては関係ないですから。噺家がそういう顧客の比率も予測もできずに、その日のために特殊な思い入れを持ってネタをやると、落語ファンが極度の集中力を高め、世界に没頭してしまい、悲劇が生まれるのです・・・。

実は「あ、そういうと、携帯が鳴っても笑えたな」という状況は噺家の腕というよりは、上記のような環境・条件によるものです。
(もちろん予想能力の高いお客様は逆にそんな悲劇が起きる会に行かないこともできますが、、、)

ただ社会として、落語会で全く携帯が鳴らないのも問題だということもあります。

携帯が鳴るのは必要悪

「快適な落語会選び」

当たり前ですが、誰しも、いきなり落語ファンになるのではなく、
始めは全く落語を知らない人からスタートします。
全く落語を知らない人が、落語会で偶然、面白い落語を見て、落語を好きになり、落語会に通い出し、落語ファン(→コアな落語ファン)へ変化していきます。

そして、お客様は、最初の方にも言いましたが、無意識のうちに(経験上)、どんどん「快適な落語会」を選べるようになります。ただし、それでもたまに「うわ!不快な落語会やったわ!」に出くわします。

それは「快適ないつも行く飲食店」と「初めて行ったら不快だった飲食店」とがあるのと一緒です。ただ落語会の場合「飲食店と違い、主催者や場所やメンバーで、だいたいの快適さ」は予測できます。予測できないのは「まだ行ってない主催者や会場や未知の出演者がいる会」です。
落語会に通っていくうちに(落語ファンの濃度を高めていくうちに)お客様は、それらをどんどん経験で予測できるようになっていきます。

「携帯が鳴って腹が立つ落語会」はなぜ必要なのか?

残念な話ですが、世の中に「携帯が鳴ってギャグにできる落語会」だけしかなかった場合、「携帯はそんなに切らなくても大丈夫だろう」と思う落語ファンが増えてしまいます。携帯が鳴っても必ずギャグになって笑えるなら、携帯を切らなくてもそんなに問題にはならないですから。
実は「携帯が鳴って、心底、多くの人が腹立つ落語会」が世の中にあるからこそ、「携帯は鳴らしてはならないと強く思う落語ファン」が育ちます。

そして、そのマナーの良い理解度の高い落語ファンが集う落語会があるからこそ、噺家はそこで「物語の世界観に没頭させてこそ、面白さが増す落語」を提供し、お客様もその醍醐味を味わうことが出来ます。

「妨害電波のある会場」の限界

一瞬「妨害電波のある会場でなら、物語の世界観に没頭させるようなネタができるのではないか?」と言う人もいるかもしれませんが・・・、実はそこでは、そういうネタの醍醐味は味わいにくいです。
「妨害電波のある会場」というのは、大概1,000人規模の高額入場料設定になる雰囲気の会場です。そこに集まるお客様の70%以上は落語初心者です。
その客層に噺家が「物語の世界観に没頭させてこそ、面白さが増す落語」を提供しても、お客様の方がそんなに醍醐味を感じないのです。
私個人の考えですが、ネタの中には、「落語初心者が落語を好きになるネタ」と「落語を好きになってから、奥深さを楽しむネタ」というのが存在します。この「物語の世界観に没頭させてこそ、面白さが増す落語」とは、それこそ後者です。ですから、そんな「妨害電波のある会場」で「物語の世界観を大事にするネタ」は、噺家側としてあまり口演しにくいとも言えます。
口演して伝わっているお客様もいるのかもしれませんが、70%以上の他のお客様によって会場中の空気は「醍醐味が伝わってない感じ」で充満しているはずです(笑)

「物語の世界観に没頭できる状況」

そんな訳で、「物語の世界観に没頭するネタ」の醍醐味を味わえる状況は、

①妨害電波は無い小さいな会場で、
②お客様のマナーレベルの高さで携帯電話が鳴らない状況
③腕のある噺家がその種のネタをかけた場合

となります。
その時、お客様が「物語の世界観に没頭するネタ」で凄い感動した場合、
リピート率の高い”落語ファン”になります(年に数回、数十回通う人)。

こういう落語ファンは非常にありがたいのですが、残念ながらこういう人は最初は、
「落語会で携帯が鳴ることを極度に嫌がる落語ファン」
にもなりやすいです。

この人は、落語の素晴らしさに感動し、自分の想像力で「脳みそに落語の世界」を広げられるのです。そうなると、どの落語会でも基本は携帯が鳴って欲しくないような気持になります・・・想像の邪魔ですから。
そして、その人は「感動したて」の落語ファンですから、「どの会に行けば携帯が鳴らないのか」を残念ながら判別できません・・・。
あっちこっちに行って「今日もこんな素晴らしいネタに出会えた!」と「初めてのネタを聞こう思ってたのに携帯が鳴って台無しや!」との、感動と絶望の両方を味わっていきます。

その人は、落語に感動するまでは「携帯が鳴っても笑える状況」で満足できていたのです(笑) しかし、ある瞬間から、そのことを忘れ、ツイッターなどで「まだ落語会で携帯を鳴らす奴がいてる!」と怒ったりしてしまいます(笑) それは次から次へと生まれてくる赤ちゃんに「まだ四つ這いでハイハイしてるのか!」と怒るようなものです。赤ちゃん(初心者)は絶対そうなるのです・・・。

その人も時間が経つと、沢山落語会に行くことで、ほとんどのネタを経験していきますし、ストーリーの補正を脳で処理できるようになっていきます。そうなると携帯が鳴っても不快な部分はあっても「初見の楽しみを奪われた」訳ではないので、腹立たしさが減っていきます。さらに経験を積むことで、自分で「快適な落語会選び」が出来るようになり、自然と「携帯が鳴らない会」や「携帯が鳴っても笑える会」だけに行くことができます(携帯が鳴って腹が立つ会に行かなくなります)。

さらにメチャクチャ通った落語マニアになれば携帯が鳴っても、
「まあ初心者の人やったらそうなるよな・・・」ぐらいになります。

【結論】

①落語ファン(携帯を鳴らさない人)の集う会があるからこそ、落語の醍醐味を伝える会が存在できる。
②その醍醐味を伝える会があるからこそ、新しい「熱心な落語ファン」を生み出すことができる。
③「新しい熱心な落語ファン」と「携帯を鳴らす初心者」に温度差が出来るので、携帯が鳴った時に台無しになる落語会が発生する(もちろん発生しないこともある)
④携帯が鳴って台無しになる落語会があることで「携帯を鳴らさない方が落語が楽しめる」と気づく落語ファンが発生する。(→①へ)

だから、「携帯が鳴って台無しになる落語会」は、落語業界全体としては”必要悪”だと思う。

※私個人としては、自分の出演する落語会がそうならないように出来るだけ努力はしています。「携帯が鳴って台無しになる落語会」は個人としては防げるが、業界としては必要なので、是非とも、他の誰かの会でおこなわれてほしいものです(笑)

最後に…

このnoteをご覧の方は、だいぶ落語ファンやと思いますので、まあ「落語会で携帯が鳴った」ということは、初心者=新規客が落語会に来たということですから、「腹が立つ!」ではなく、「あぁ、初心者がこの落語会に来てくれた!落語ファンが新たに増えてるんだ」と出来るだけ喜ぶように心がけようではありませんか。

★ここまでは無料です。
この問題は、これで終わるとも言えますし、終わらないとも言えます。
「どういうこっちゃ」という話ですが、ここからは「有料」です。

そして、ここからの解説を読むと、

「問題が終わらない理由」(→新たな問題の発生への考察)

だけでなく、

「以前は上記までで無料だったのに下記の部分を有料にした理由」

もわかります。あと、おまけとして、

「三遊亭兼好さんとの事件簿」

も書いておきます(笑)

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