第六期指す将順位戦第七回戦うまぴょい伝説さん戦自戦記

1.対局前

 とよしさん戦に向けては思うところがあったので記事を書いていたが、なんか途中で萎えて書き上げられなかった。今回の自戦記とドッキングさせようかと思って見返してみるとなんかこれ今から続きを書くのは違うな、と思って結局ボツにすることにした。無念。一部引用することで供養とさせていただきたい。

 僕は指す将順位戦に初めて参加した第三期のころ、指す順のパワーバランスについて全く無知であった。具体的に言えば、B級3組に所属していた僕は、B級4組のメンバーは棋力差のある格下の相手だと思っていたのである。
 指す順を複数期戦ったことのある者なら大体は共感してくれるであろうが(ただし僕はA級とか上位クラスでは戦ったことがないのでそこではまた当てはまらない話かもしれないが)、クラスが一つ変わっただけでそこまで劇的に棋力が変わることはない。同じクラスで上位と下位の間にもそこまで大した棋力差はほぼ無い。結局この辺は時の運によるところが多いのであり、とりわけ継続参加者と新規参加者の間ではこの辺の組み分けによる指標は全く意味がないといっていいであろう。実力差があるとすれば、それは複数期を戦った実績の結果として初めて見えてくるのである。僕がこのことを知るのは他クラスの人々との対局や観戦を通じてであるが、その第一歩がまさにとよしさんの将棋であった。
 第三期指す将順位戦、僕はB級3組に新規参加者として、とよしさんはB級4組に継続参加者として在籍していた。その初めの段階において、僕がとよしさんを格下の相手とみなしていたのは前述のとおりである。この大いなる勘違いは、とよしさん自身の手によって吹きとばされることとなった。僕が観戦に行った際、具体的な内容は覚えていないが、際どい最終盤において、とよしさんは僕が全く見えていなかった順で鮮やかに詰ませて見せたのである。これは僕の勘違いを掘り崩す良いきっかけとなった。

 その後、不甲斐ない結果に終わった僕とは裏腹にとよしさんは昇級を決め、僕は悔しい思いをした。そんななか、僕はとよしさんと直接対決する機会を得ることになる。それはD5さん主催の「ハチダン戦」という団体戦でのことであった。ゆーすさんとの先鋒戦を制し意気揚々と中堅・とよしさんとの戦いに挑んだぼくはあっさりと返り討ちにあってしまったのであった。

 結局のところ、なぜ僕が先の記事を書きあげられなかったのかといえば、僕自身がとよしさんについてどういう感情を抱いているのかよく整理できなかったからであるといえるだろう。とよしさんが強いのは知っている。格下なんかではない。だが、やはり共にB3で戦ってきた面子やB2ではじめましてな方々とは別種の昂りなのである。まけたくない、あるいは負けられない。リベンジマッチであって、それ以上のものでもある。言語化は難しいが、今のところはこのあたりで許していただきたい。

 ただ一つ、これだけは明快だと思う。こっちはいろいろ考えてるのに向こうは僕のことなんて本当に全く歯牙にもかけてないのがひしひしと伝わってくるのがすごく寂しいし悔しい。絶対一泡吹かせてやるからな。

2.棋譜コメ

例によって終局直後に書いてます。ほやほやだよ。

https://shogi.io/kifus/250779

3.自戦記

3.1 やっぱり中飛車

▲7六歩△5四歩▲7七角△5二飛▲7八銀△5五歩▲4八銀△5六歩▲5八金△5七歩成▲5七同銀(第一図)

 とよしさんといえば中飛車メインの振り飛車党というイメージ。だが今回は僕が完全にMP切れを起こしていたためにウォーズの一局を眺める以外なにも事前準備をしていない。強いて言えば村田先生の『居飛車VS振り飛車 急所をとらえるプロの思考』の中飛車の章を途中まで読んだくらいである。

 序盤は不安であったが、▲7六歩△5四歩▲7七角△5二飛で戦型は予想通り中飛車に。とりあえずは一安心だ。△5六歩と突っかかってくるのが予想よりかなりはやいのが意外だったが、これは▲5八金~▲5七同銀で手順に左美濃の骨格を作ることができるので得をしたと思っていた。実際水匠は先手に300~400点程度つけている。

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第一図

3.2 まさかの端角

△5六歩▲4六銀△4二銀▲6六歩△6二玉▲6八玉△7二玉▲7九玉△1四歩▲8八玉△1三角(第二図)

 第一図では王様を左囲われてしまわないか不安でならなかった。さすがにここから飛車を振ることはできないので、相居飛車(?)を強要されてしまう。とはいえ無理やり縦の将棋に誘導してくるのは相手もリスクを負うことになるので、全然歓迎だ。嫌だけど。

 後手は自然に左へと玉を囲っていき、先手も呼吸を合わせて囲っていく。ただ△1四歩が不穏な一着。もし▲1六歩とあいさつし返すとすかさず△1三角と覗かれて、これは先手玉の位置が悪すぎる。そこで▲8八玉と入城したが、構わず△1三角と上がってきた。狙いはシンプルに△4六角▲4六同歩△5七歩成。さて、これをどう受けるかが問題である。

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第二図

3.3 先手の決断

▲8六角△4六角▲4六同歩△5七歩成▲5三歩(第三図)

 第二図での第一感は▲6八金上であった。以下は△4六角▲同歩△5七銀(変化図1)と進み、そこで▲5九歩と打つのが読み筋だった。以下は△6八銀成▲同角△5七金。ここで角の逃げ場所が難しいと思っていたが、▲7九角で受かっているようだ。

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変化図1

 また、変化図1で▲5九歩に変えて▲7九角と打つのでも受かっているらしい。これは見えていなかった。水匠によれば、▲5九歩の場合でも△4六銀成に対しては▲7九角と打つべきらしいので、この手は見えたかった。もっとも、受け一方になってしまうのでかなり指しづらい手ではあると思うが。

 いずれにせよ、水匠は第一感の▲6八金上が最善であるとしており、先手に数百点つけている。というのも、本譜の▲8六角は△4四歩で互角に戻るというのである。次の△4五歩が受けづらい。言われてみればなるほどであるが、対局中は全く考えていなかった。

 本譜は△4六角▲同歩△5七歩成に▲5三歩と打って第三図。後手の選択やいかに。

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第三図

3.4 後手の選択

△5三同飛▲5三同角成△5八と▲5八同飛△5三銀▲5三同飛成△5二金左▲2二飛(第四図)

 ▲5三歩に対する候補手は、①5八と②同銀③同飛の三つである。①△5八とに対しては僕は▲同飛と取るつもりであった。以下は△6二飛に▲5二角からゴリゴリ攻め合う予定だったが、これは後手に200点ほど振れる展開で、実際指しているときもやや無理攻めな気がしていた。

 ただし、水匠によれば△5八とに▲5二歩成と踏み込めば先手良しだったようだ。以下△6九と▲6一とに△7九銀と先に王手がかかるのでこの順には踏み込めなかったが、そこから▲7七玉△6八銀不成▲同飛△同と▲7一と△同玉▲6八玉と進んだ局面(変化図2)は先手が角の丸得であり、8六の角もよく効いていて十分の形勢だった。とはいえ手番を渡して自玉はペラペラ、分かっていてもこの順には踏み込めなかったように思う。

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変化図2

 ②△5三同銀は▲5七金と手を戻して角銀交換が残り先手十分。後手が何をやっているかわからない順だが、水晶によればこれが後手最善だったようだ(先手+800程度)。△4四歩を逃した時点で端角の構想は失敗していたのかもしれない。

 というわけで本譜は③5三同飛だったが、▲同角成△5八と▲同飛△5三銀▲同飛成と進んで竜を作り、さらに堅陣に駒得と有利な条件ばかりがそろう。この時点で評価値は先手に1,200点ほどつけているようだ。実践では△5二金左▲2二飛(第四図)と進んで優勢を意識した。

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第四図

3.5 勝ち切る

△5一歩▲4一銀△6二金打▲5八龍△8二玉▲5三歩△5三同金右▲5三同龍△6二銀▲5二銀不成△5二同歩▲5二同龍△5二同金▲5二同飛成△5一銀(途中図)▲6一角△7一銀打▲7二金△7二同銀▲7二同角成△7二同玉▲6一銀△8二玉▲7二金△9二玉▲8二金打(投了図) まで、61手で先手の勝ち

 金駒を自陣に打ち付けて徹底抗戦の姿勢を見せる後手だが、こちらは自陣に何の憂いもないので攻めに専念できる。▲5三歩△同金右▲同龍でさらに駒得を拡大し、攻めが切れることはなさそうだ。△6二銀に▲5二銀不成から寄せに入る。ここまでくれば勝利はもうすぐそこだ。ただ、5二で清算して△5一銀(途中図)に▲6一角と打ったのはいただけない。

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途中図

▲6一角は必至なのでこれはこれで明確に勝ちなのだが、そもそも途中図では▲7二金△同玉▲6一角△8二玉▲7二金△9二玉▲8二金打までの詰みがあった。ここはどうせ勝ちやろと緩んでしまういつもの悪い癖が出たというところだろう。反省しなければならない。

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投了図

 最後はややもたついたものの、優勢をしっかり勝利へと結びつけることができた。

4.対局後

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 ↑棋譜の解析結果とグラフ

 大きい大きい4勝目をあげて今季初の白星先行となった。3敗をキープすれば全然昇級の目が残ると思うので、今後も一局一局ひたむきに戦い続けたい。

 ただ、勝ってなお僕は自分の気持ちがわからないままだった。結局僕は何を成し遂げたのか、いまいちわからない。おそらくとよしさんとの距離感は今後も変わらないだろう。けどきっとこれでいい。僕らの指す将ライフは、まだ続くはずだから。

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