第六期指す将順位戦第六回戦街ガエルさん戦自戦記

1.対局前

 今回はいろいろとあわただしく、ろくに事前準備をする余裕がなかった。一応24の棋譜は一通り目を通したが、自称通りの中飛車党のようだ。

 中飛車は最強戦法の一つだと思っているが、前期のドラキーさん戦でうまく指せて以来苦手意識はなくなった。今回もその時と同じように左美濃で迎え撃つことだけはなんとなく決めていた。

2.棋譜とコメント

対局直後に書いたものです。ほやほやだよ。

https://shogi.io/kifus/250494

3.自戦記

3.1 意表の立ち上がり

▲7六歩△3四歩▲4八銀△9四歩▲9六歩△4二飛▲6八玉△6二玉▲7八玉△7二玉▲2六歩△8八角成▲8八玉△2二銀(途中図)▲7八銀△8二玉▲5八金△7二銀▲6六歩△3三銀▲6七金△5二飛▲8六歩△5四歩▲2五歩△5一飛▲7七桂△3二金▲1六歩△1四歩(図1)

 ▲4八銀で早々に居飛車を明示。街ガエルさんが振り飛車党なのはわかっているので強気にいける。ここで少考してくれたので少し意表をつけたのかもしれない。△9四歩▲9六歩のお突き合いは様子見といったところか。

 しかし今度は△4二飛でこちらの驚く番となった。当然中飛車だとばかり思っていたので思わず手が止まる。角道を止めてミレニアム風に指すことも考えたが、居飛車から先に止めるのは不満なので少し突っ張ってみた。

 結局戦型は角交換四間飛車となった。ゴキ中系を好むようなのでノーマル四間よりはKKSだろうなと思っていたがやはりという感じ。

途中図

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 結局先手は左美濃に組み、後手は中飛車に振りなおして陣形を整備した。この辺りは距離感を図りながら駒組といった感じか。

図1

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3.2 誘いの隙、あるいは…

▲4六歩△6四角▲4七銀△8六角▲3六歩△4四歩▲3七桂(図2)

 何気なく突いた▲4六歩が波乱を呼ぶ一手だった(大袈裟)。△6四角と打たれると8六と4六の歩の両取りが受からない。とはいえこれは誘いの隙…ではなくただのうっかりなのだが、経験的には一歩損でも角を手放してくれるならそこまで不満なしと見たいところである。実際に水匠は先手に+400点ほどつけているのできっとそう。

 歩損の代償に持ち角と駒得を主張するべく駒の活用を急ぐが、具体的にどうこうするのは難しい。結局実利は大きいのである。駒損+手得とくればこちらから仕掛けなければならず、落ち着いた展開になると後手の駒得が効いてくるので、こういう展開は個人的には好みではない。やはり手は相手に作ってもらうものだ。

 この局面で後手はかなりの長考に沈んだ。

(図2)

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3.3 主張は心のよりどころ

△4二銀▲2四歩△2四歩▲2四飛△4三銀▲2八飛△2三歩▲6五歩△4二角▲8七銀△3三桂▲7八金△5五歩▲6六金△5四銀▲7五歩△2四歩(図3)

 自分の回線が落ちたかと思って少し焦り始めたころ、長考の末選ばれたのは△4二銀。▲2四歩から飛車先を切るのは後手の読み筋だろうが、やはり一歩手持ちにできるのは大きい。歩損のダメージも軽減されるというものだ。

 仕掛けるなら▲4五歩しかないところだが、すぐには△6四角が気になるところ。そこで▲6五歩と突いた。またこの手は、▲6六角~▲7五歩~▲7六金で角を捕獲する野望も秘めている。

 それに気づいてか居心地が悪くなっただけか、△4二角と逃げられてしまった。▲4五歩と仕掛けるのも考えたが、あまり手にならなさそうなうえ、端が不安だったため銀冠に組み替えることにした。

 仕掛けが難しそうなので厚みを作って模様を良くしていくしかないと思った。銀冠に組み替えて▲6六金は水匠にも褒められた良構想だったようだ。厚みを主張に戦う方針。

図3

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3.4 捌き合いの先に

▲5六歩△5六同歩▲5六同銀△3五歩▲5五歩△3六歩▲5四歩△3七歩成▲2四飛△4五桂▲4四飛△3三角 (途中図) ▲5五角△5七桂成▲7四歩△5六成桂▲5六金△4四角▲7三歩成△7三同桂 (図4)

 さらなる厚みを求めて5筋に手を付ける。後手は薄くなった桂頭を目標に反撃してきたが、これは指せるとみていた。▲2四飛では代えて▲5八飛が優ったというのが水匠の指摘。しかし飛車を走るのが人情というものだろう。お互い捌き合っての途中図では、この△3三角を見落としていた。

途中図

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 ここは焦りすぎだったのかもしれない。対局中は▲4五歩では△4四角▲同歩に△6九飛などと下ろされるくらいで攻め合いに自信が持てなかったが、そこで▲5五角があり先手勝勢だった。

 結局単に▲5五角だが、△5七桂成で桂を捌かれてしまった。有利~優勢で推移していた評価値はこのあたりで互角に戻っている。自信のあった手が悪手判定されるのは苦しいものだが仕方ない。実践的にはコビン攻めがうるさく手になると思っていた。

 水匠によれば△7三同桂が悪手で再び先手有利に。対局中もこの辺で視界が開けた気がした。

図4

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3.5 寄りそうで分からない玉

▲7四桂打△9二玉▲9五歩△9五同歩▲9五同香△9四歩(途中図)▲4四角△9五歩▲9四歩△8四歩▲7一角打△8三玉 (図5)

 7四桂が当然ながら厳しい一手で優勢となった。端玉には端歩の格言通りの寄せで着々と勝利に近づいている…ならよかったのだが、この辺は雰囲気で指しているだけであまりはっきりと読めているわけではなかった。

途中図

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途中図では9三歩から詰みがあったようだ。▲9三歩打△同玉▲8二銀△8四玉 ▲7三銀△同銀▲9六桂△7四玉▲7五歩△同玉▲7六銀△7四玉▲8五銀△7五玉▲6六金△8六玉▲8七金△9五玉▲7三角成△8四香▲8六銀まで21手詰め。見えるかこんなもん

 本譜は詰みこそ逃したものの確実に寄せることができている…まだこの時は。

図5

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3.6 光芒一閃

▲7五歩△8一香▲8二銀△9四玉▲8一銀成△5九飛▲9九香△9六桂(図6)

 7五歩が信じられない大悪手。なぜか△8三玉が桂取りになっていることに気づかず、気づいた時には秒読みもあとわずかで、とっさに打ってしまった。これは本当にひどい悪手で、棋譜コメにも書いたが▲8二角成に△7四玉は詰むので、この桂取りは受ける必要がなかったのである。指した瞬間にわかる悪手で頭が真っ白になるが、ここで折れないのが大事だと必死に言い聞かせた。ここで評価値的には後手優勢に。

 本譜は△8一香だったが、△7一金なら完全に攻めが切れていたようだ。本譜も▲8一銀成で詰めろが続かなくなってしまい、いよいよ後手が反撃に出た。が、結果論でいえば一旦△8一銀と外しておくのが冷静だったようだ。そうすれば先手はさらに苦しい戦いを強いられていただろう。

図6

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3.7 将棋は最後に間違えた方が負けるゲーム

▲9六同香△9九銀▲9七玉△9六歩▲9六銀△9五歩▲8六桂△投了(投了図)

△9六桂に対する応手は2択。同銀か、同香か。ここで僕は間違えた。ここは▲同銀が正解で、△同歩は▲同香△9五合▲8六桂△8三玉▲8二角成で詰み。

 しかし自玉が攻め立てられている状況で同銀を選ぶ勇気はなかった。とにかくちぐはぐした終盤である。完全に体は入れ替わったが、お互い玉形は怖い形。まだまだ難しいと思いながら指し続ける。

 そして決着は突然訪れた。△9五歩が最後のミス。ここも△8一銀なら手がなかった。▲8六桂以下は△8三玉▲8二角成まで。急転直下だった。

投了図

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4.終局後

棋譜の解析グラフがこちら

画像1

 とにかくフラフラした終盤を指してしまい、運勝ちと言わざるを得ない内容だった。勝てる将棋を危なげなく勝ち切る。言うは易し行うは難しとはこのことだが、これがしっかりできないと上は目指せないのもまた事実である。

 前半戦を3-3で折り返したのは不甲斐ないなりにもなんとか耐えてるかなという成績。後半戦で巻き返すにあたり、本局は単なる一勝以上の価値がある、学びの多いものとなったといえよう。

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