電気つくりすぎる問題
世界中でソーラパネルによる太陽光発電がこの10年くらい活発に行われている。原子力発電所の事故が一つのきっかけでもあるが、原子力発電所に比べて、個人でも比較的に簡単に導入でき、その発電量は年々倍に迫る勢いで増え続けている。原子力発電所の発電量が100万kW/基だとしたら、太陽光発電所(メガソーラ発電所)の発電力はわずか1000kW、これが1000か所集まると、100万kWとなる。1枚350Wとしたとき、1000kWの発電所の場合は、2857枚のパネルが必要になり、パネルの枚数は縦に53枚×横に53枚必要となる。パネルの大きさを一般的な横1650mm×縦1000mmとすると、横87m×縦53m、実際は間隔を空けて設置することになるので、縦100m×横100mとすると、10000平方m=およそ3000坪(約1ヘクタール)もの土地が必要になる。これが1000か所の広さでようやく、原子力発電所1基分とイコールとなる計算だ。
※ちなみに柏崎原子力発電所の敷地面積は、420万平方m(420ヘクタール)の中に7基の原子炉があり、総出力は約821万kWとのこと。しかも24時間発電できる。
原子力発電所を大手をあげて奨励する訳ではないが、メガソーラーパネルは敷地面積の割にリターンが少ない。むしろ近隣住民や環境問題になりがちとなる。
話は少しミクロ目線となって、日本には5800万戸の住宅数がある統計がある。屋根の上にソーラーパネルを載せると、屋根の重量が増すため、耐震性が低い住宅にはソーラーパネルは推奨されない。よって、ソーラーパネルを載せるのに適している住宅を半分以下の2000万戸とし、それぞれ4kWずつのソーラーパネルが載ったとすると、その発電力は、8000万kWになる。これは、原子力発電所80基分に相当する。日本には稼働中が12基、廃炉が24基、残り24基の計60基があるが、それを上回る発電力が住宅の屋根には備わっているといえる。(2022年で住宅用太陽光導入件数はおよそ320万件、年間20万件ずつ増えている状況)
ただし、ソーラーパネルの欠点が日中しかも晴れているときにしか、最大限発電しないことである。日本中が雨だったりすると、その分、別の発電所で需要電力分を補う必要がある。また、日本中が晴れていると今度は電気が余ってしまう。ソーラーパネル(パワーコンディショナー)には発電しすぎても電気を流さないように制限をかける機能があるが、電力系統に影響が出てしまい、最悪停電のリスクまでつきまとう。そのため、現在においても火力発電所や原子力発電所に頼らざるを得ない状況となっている。
日本のエネルギーミックス(電源構成)は、2030年度に再生可能エネルギーによる発電量を36~38%、内訳は太陽光発電で14~16%、風力で5%、地熱で1%、水力で11%、バイオマスで5%掲げている。(原子力は20~22%、天然ガス20%、石炭19%、石油2%、水素・アンモニア1%)となっている。
再生可能エネルギーの中で、太陽光と風力は自然の力で発電するため、特にコントロールが難しい。
そのため、各種蓄電池やフライホイール蓄電、キャパシタ蓄電等の蓄電技術の向上が求められており、今後10年の間に革新的な技術の発展が望ましい。
前置きが長くなったが、電気を作りすぎたら使えないのかについて考えてみた。電気の主な消費先としては、家庭用で約30%、残りは工場や産業用、公共用に使用されている。家庭用として主な電力の消費電力割合は、冷蔵庫(20%)、空調(7~15%)、照明(10%)、炊事(10%)、待機電力(7%)のようになっている。屋根の上にソーラーパネルがある家の人は、わかると思うが、昼間の時間は消費よりも発電が上まっている状態で、余った電気は他の家庭で使われるために系統に戻している(逆潮流)。現代では、家電の技術も向上しているため、昼間の消費電力は一般的な家庭で約1.0kWh、一方、昼間の発電量はソーラーパネルの設置量にもよるが、約1.5kWh(パネル量2kW)~約3kWh(パネル量4kW)と消費電力を上回っていることがわかる。これが電気の作りすぎにつながっており、特にメガソーラーや休日の工場では、電気を使う先がないため、発電するだけになっている状態である。この電気を発電しているが、使わない状態というのが、今後も増えつづけていくのが現状としてある。
その余った電力を何に使えるか考えたときに、一つは蓄電すること。電気自動車や蓄電池に貯めておくことで、移動が必要なときやソーラーパネルが発電しない夜間に電気を使うことができる。次に蓄熱だ。家庭用では難しいが、一部の商業施設では、冷水や氷、温水を作っておくことで、夜間の空調に充てることができる。
突飛なことを考えると、アルミを製錬できないか考えた。アルミを製錬するには電気炉がいるが、小さなサイズであれば4万円(消費電力700W、るつぼ3kg)くらいで買えることができ、アルミ缶であれば高純度であるため、約660℃の融点であるため、比較的溶けやすく、アルミ缶は1個あたり15g、100個で約1.5kgになる。アルミ缶単体を売ったとすると、2024年の価格は150円/kgのため、100缶では、225円となる。アルミ缶を売却するだけだといまいちなので、アルミから水素を発生させ、その水素を燃料電池として使えないか考えてみる。アルミ1gを薄い塩酸に漬けると、水素が約1L(90mg)発生する。製錬したアルミの質量が1,500gであれば、単純計算で水素の発生量は135g分になり、水素1kgあたりのエネルギー密度が33.3kWhであることから、エネファーム等の燃料電池の効率を約50%から考えると、2.2kWhの発電量と計算できた。
もちろん、どうやって発生した水素を回収するのか、アルミを溶かした溶液や残渣の廃棄、健康の問題もあるとは思うので、現実的ではないアイデアではある。
家庭用では難しいことがわかったが、工業用途としてはどうだろう。現在でもアルミ缶はリサイクルされ、新たなアルミ缶に生まれ変わっているわけだが、別の利用用途として、アルミ缶が例えば1t(トン)分あれば、22,000kWhの発電量となり、6世帯1年間分の発電量に相当する。ちなみにアルミ缶1t(トン)は67,000本分。昼間にアルミを製錬して、夜間はそのアルミから発電する仕組みとしては、効率はともかく可能性としてはある。
水から水素を直接電気分解して作る方法もあるようだが、水素1kgを生成する電力量は50kWhほどとなっており、上述のアルミ缶を溶かす電力量に対して、かなり大きい電力が必要なことがわかる。(アルミ缶を溶かす電力量700Wh×7.5回分=5.25kW<水素1kg=水素の発電量16.5kWh<水素1kgを電気分解でつくるのに50kWh)
※水から水素を作ると、陽極(+)には強酸性電解水、陰極(-)には強アルカリ電解水が生成される。これもうまく処理しないと環境に影響を及ぼす可能性がある。