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教育フォーラム2023 「令和時代の教育をリードする」 を開催!

2023.7.4

#イベント #インタビュー・対談 #動画

2023年6月4日(日)、13時30分から岐阜聖徳学園大学羽島キャンパス・サテライトスタジオにて、「令和時代の教育をリードする」をテーマとした教育フォーラムが開催されました。「GIGAスクール」という言葉はすっかり耳になじんできました。しかし、現場では「なぜGIGAを重視しなければならないのか」という声も聞かれるようになってきました。当日は、文部科学省初等中等教育局 学校デジタル科PTリーダーの武藤 久慶氏の講演をもとに、シンポジウムが行われました。武藤氏にはGIGAスクール構想の根底にある理念を語っていただき、それを受けて、幼稚園、小学校、中学校、高等学校および大学教育の在り方について武藤氏も交えた4名のシンポジストによる論議が繰り広げられました。

武藤氏の講演は、「改めてなぜGIGAが大切なのか」と題して、今日的な課題について、学校現場の現状も踏まえ、今後の方向についての示唆がありました。当日はYouTube配信も行われました。

シンポジストには次の4名が登壇しました。武藤久慶学校デジタル化PTリーダー(文部科学省初等中等局)、宮野裕岐阜聖徳学園大学教授芳賀高洋岐阜聖徳学園大学教授・DX推進センター長福地淳宏岐阜聖徳学園大学准教授。そして進行には、本学玉置崇教授がつとめました。

玉置 幼稚園小学校中学校高等学校および大学教育がどうあるべきか。もちろんここには特別支援学校も含むとして。なぜ今GIGAなのかすばりどう考えますか。

宮野 2つのことを考えています。GIGAスクール構想により、いろいろなことができるようになってきました。さまざまなことが効率化され、隙間時間もできたがそこにどんどん別のことが入り込むこともあります。その点についてどのように考えたらよいのだろう。人間が破綻しないよう、余裕のあることを考えていかなければならないと考えています。もう一点は、子どもたち一人ひとりにあった「ペースにあった手助け」がどこまで可能なのか、考えさせられます。どのように考えていくと解決できるのか疑問もあります。

福地 時代は大きく動いているなと感じました。そのことをいかに「自分事」として受け止めるかが課題だと思っています。就職課の課長をしている時に多くの企業方と接する機会がありました。企業が求める人材を考えたとき、「学習指導要領の着実な実施」と「GIGAスクール構想の実現」は教員としてのミッションだと思っています。春日井市の学校で授業を見たときに、「こんなに学びが変わるのか」と実感しました。協働的な学びや自主的な学びは単なる検索や処理ではなく、選択・判断・思考・創造が教室に浮かび上がってくるのが授業だとリアルに見せていただきました。

芳賀 いつまでもGIGAスクール「構想」などとヌルイことをいっていると「妄想」になってしまう。その間に子どもはものすごい速度で育っていきます。そもそもGIGAスクール「構想から」脱却できるのでしょうか。逃げない。人ごとにしない。向き合う。認める。話す。考える。という精神論も大切ではないでしょうか。私が行った教育実習生約350名を対象にした調査によると、一人一台の端末を使った授業を実習期間中一度も使用しなかった割合が約半数でした。数字が問題なのではなく、こういった実情が放置状態で議論されていないこと。責任の所在が曖昧なことが問題だと考えています。教育実習中はスマホなどの端末も使えず、GIGAスクール構想ではGIGA端末以外のメディアに対する学校の取り扱いはほぼアップデートできていないのが実情かと思います。大学に入学したばかりの学生に「ICTが苦手な人、嫌いな人」に挙手してもらうとほとんどの学生が手を挙げました。こういった課題を大学と学校間で対話できない、しない「体質」や「構造」「雰囲気」が問題で、相互にびびっているのではないでしょうか。「教育観」や「教育観」はGIGAスクール構想下で退化したのではないでしょうか。

宮野 GIGAスクール構想インフラなので、何を求めるのか。その先に何を求めるのか。それに向かって動いているのか芳賀先生の発言から考えました。

武藤 宮野先生のおしゃるようにどこに向かって動いているのというのは感じています。行き着く先がデジタル一斉授業では困りますが、全く使われていないという実態も考えていかなければなりません。これまでに20分ほどの動画を作製してきました。多くの先生が観てくれました。論より証拠です。今度は特別支援学校のものも制作していく計画ですが、サクッと観られるような動画をつくることも考えていきたいと思います。

玉置 端末をことが目的になってはおかしいが、行政の立場からすると「とりあえず使って」というのが率直なところではないでしょうか。

宮野 まず使え、と言い続けてどれくらいたったのでしょうか。いろいろな先生もいらっしゃるし。

芳賀 同じことを繰り返しやってきている。小学校でやったことを中学校でまた学習し・・・GIGAスクールで学んだ子が大学生として本学に入学したときにどうなっていくのだろう。

玉置 多様性というところで教員に視点をあててみましょうか

芳賀 約800人の教員の調査で、GIGAスクール構想で最もよかったこと、効果があったことをあげてもらうとバラバラ、課題と思っていることもバラバラという実態があります。考え方や価値観が違う先生、関心のある先生、関心の無い先生。多様性は時として対立を生むことがあります。教員研修もいろいろな先生がいるということをスタートにしないといけないです。

玉置 どうあるべきかというところに話題がきたかと思いますが、多様性があること。新しいことをやるといろいろな考えの人がいることは大前提で。授業観が変わったということは、質問肢に書いておいたが選択されなかったということですね。授業観が変わることが一番大切なのではないでしょうか。

武藤 これまでは先生が用意した教材と設計の中で授業をしていたが、そこに端末持ち込み、それがネットにつながり、文房具として使うという制御の効かない状況を持ち込んだことになります。先生が全て指示をしていては成り立たなくなる。授業観や指導観が変わっていかないといけない。それを分かっていて進めてきたと思います。

玉置 実際に私が体験した例で授業観が変わったと先生の例があります。「これは校長先生が、あるいは教務主任の先生が書いたのですか」と尋ねたら、なんと子どもが授業観を書いたと言うのです。子どもが「ここで挙手して発言するより、チャットに入れた方がいい」と提案したんだそうです。小学校の例では、先生がモニタにグラフを出したら、子どもが「それ端末に送ってよ」と発言したんだそうです。先生はたくさんの子どもの意見をもとにしてよい授業をしたいという思いはある。チャットにいれると後の整理は大変だが、子どもが教師を変えていることは事実。また、端末は道具だから常に持ち歩くという習慣もできている。当たり前のように持って行く。それが文科省の考えるイメージですよね。そんな風になっているところもあるけれどそうではないところもあるのが現状です。そうではないといころをどうしていくかが課題です。

芳賀 ICTはただの道具であるという考え方、必要な時以外は使わなくてよいという逃げ道にすることもあります。文房具として考えていくことと矮小化して考えていく道具としての考え方もあります。そこは気を付けていかなければなりません。学校で配られた端末は学習以外では使いません、というルール。ルールを守ることが目的ではなく、ここで教えたいことは、「なぜ寝る前の1時間は端末を使わないのか」という科学的根拠をもとにした知識を身につけた子ども育てたいのです。ルールを守りましょうというと盲目的にルールを守る子になってしまいます。そこの考え方を変えないといけないです。

武藤 仰るとおりルールを無批判に守る子を育てたいわけではないです。そういう姿は社会の構成員ではあるけれど作り手ではないです。ルールの意味を含めて考えて、つくり、施工してみて、もう一度見直すという一連の動きにしていきたいと思います。また、ICTの言い訳については、ICTを使うことが目的になってはいけないので、文科省が出していることは正しいけれど、正しすぎるからという問題もあります。

芳賀 正論なんだけれど、正論すぎてそれを言い訳に使ってしまうことがあります。

福地 自分が初めてワープロを使ってこの20年で大きく変化しました。芳賀先生が当時、考えていたことを訴えて受け入れられなかったのは民意が得られなかったのと思います。今ここで改革しておかないと子どもは将来不幸せになってしまうように思います。そういう認識を持つことが一番だと思います。先生になる人は子どものためにと考えているが、なぜかGIGAのことになると足踏み状態になってしまいます。そこを紐解くと、どうやってICTを絡ませて授業を展開するかイメージがもてないということがあるように思います。それは、まずはとにかく導入しようという急激な動きをしたことやコロナで先進校などを参観できないなど展開の足踏み、ペーパーや動画などを教育委員会でも準備しましたが、あまりにも多岐にわたり情報の選択がしづらいという理由が考えられます。

玉置 拠点校をつくって拡げていくことについて説明をお願いします。

武藤 全国の都道府県と政令指定都市にワンペア(小学校中学校)を設置して、研究テーマなどにはこだわらず、一人一台の端末とクラウドで毎日文房具として使う、校務も徹底的に改善する学校。研究の成果物を求めるのではなく、動画や象徴的な写真で進めていきたいと今年から考えています。

福地 拠点校は1つではなく、地区ごとでもいいと思います。岐阜県なら(教育事務所ごとに)6つおいて欲しいという切実感をもっています。そうでないと全体の熱量が上がってこないような気がします。子どもの学びが変わる、ICTを入れることで子どもと学びの距離がぐっと近くなります。

芳賀 未就学児に対するICTに対する実践や議論から逃げている現状もあります。それぞれが判断して実践しているからです。

玉置 本学も幼稚園免許が取得できますから、考えていかなければいけないことですね。

芳賀 授業が上手なのは幼稚園の先生だと思います。幼稚園の先生から学べばいいんです。ルールの話にしても、幼稚園の先生は「こうしなさい」ではなく「なんで?」とか「どうしたらよいか」という投げかけをしています。子どもとの向き合い方が違うと思います。一人ひとりに向かいあっている気がします。

福地 幼保にかかわっている先生は子どもたちの動き予測して、どんな環境設定をしていくと、意欲が高まるか、そこを命にして手立てをうっています。子どもが伸びようとするところを伸ばして自主性を引き出していくことをしています。実践はエピソード、ストーリーの中で検証していくという、教育の原点があります。

武藤 幼稚園の先生から学ぶところは大きいですね。上智大学の奈須先生にインタビューをおこないました。幼稚園は園児が教育的に学べるものが意図的に置いてあって、自分が必要と思ったとき、関心をもったときに手に取り、学ぶことができます。自由度もあり、でもデザインされていることもあり、そのことはGIGAスクールと親和性があり、幼稚園から学べるというお話しがありました。是非みなさんも視聴してみてください。

玉置 「はじめに子どもありき」とよく言いますが、どう疑問を持ち、追究していくのかそれが大事だと感じました。特別支援学校も含めてです。

芳賀 特別支援学校では一人ひとりにあった指導、学びを大事にしています。幼稚園も同じだと思います。小学校、中学校と一斉指導の学びの要素がはいってきます。

玉置 現職教員のときに、「子どもたち」といったら「子どもたちはいない。『たち』とみるからいけないのだ。一人ひとりとして見なさい」と言われたことを覚えています。シンポジウムのはじめに出た、「個別最適な学び」と「個別最適化された学び」は少し違うと思います。理想の教育は全て指示をしていくわけではないと思います。

武藤 個別最適、協働的な学びは自己調整や自己決定とセットになっています。「個別最適化」はそれとは少し違うようです。先生が個別最適化の主体だと思うと苦しいしできないし、子どもを信じる・・・・子どもの自主性を信じないといけないものを持ち込んだこと、全て指示をしてきましたが、任せてみようと思ったとき教育観が変わったという先生がいました。

玉置 ここにいらっしゃる先生も個別最適化の最たるもので、誰かに指示されて専門分野を学んできたのではなく、人間って自分で最適な学びをつくっていくのではないでしょうかと私は思います。

芳賀 子どもを信じて任せるということができるかどうかですよね。任せることが怖くてできないのではないでしょうか。

玉置 心理的安全性という言葉がありますが

福地 子どもと一緒で気軽に話せる職員室が大事です。向き合って話せる時間がないことも確かですが、GIGAを使ってできた時間でコミュニケーションをとることができるとよいです。

玉置 テーマに沿って総括していただけますか。

宮野 GIGAを進めるメリットは、人間関係が希薄になっている中で大きいと思います。それが推進されないのは、コミュニケーションがうまくできていないことが原因になっていたかもしれません。さまざまな問題点はあってもGIGAは積極的に進めていくべきだと思います。

福地 教育DXを効果的に進めるビッグチャンスだと思います。DXのXは「すごく魅力的なものを完全に変えていく教育をデジタルを使って一気にやっていくんだというチャンス」がきていると改めて思いました。探究についても学生と共に考えていきたい。また、多様性ということで、学級経営についても誰もが安心して過ごせる集団をつくって行く必要があると思います。一方、リアルや納得感も死守していきたいとは思います。

芳賀 拠点校の話しがありました。トップダウンの方法は慎重に考えなければならないと思います。むしろ現場が課題を少しずつ解決しながら挙げていく、ボトムアップ式の拠点ならと思います。拠点は学校の中にあるのではなく、子どもとの関係性の中にあると考えた実践研究がこれから必要になるのではないかと思いました。

武藤 時代背景の流れの中でずっと学び続ける意欲をもった子どもを育てること。最終的には先生が目の前にいなくても学び続けられるようにすることが大事。また、情報活用能力が学習指導要領で位置づけられていますが、「活用」を前提にして、GIGAスクール、クラウド、端末の指導が教育内容であることを十分理解して欲しい。整備されているのに、使われない、使えない現実も見ていきたいと思います。問題点を可視化し、うまくいっていないところは、改善してもらえるよう条件整備をしてもらえるように動いていきたいと思います。

玉置 武藤さんが改めて決意を述べていただいたが、せっかく整備された端末を活用して、私たちも子どもたちの未来のために十分に応えていきたいと思います。「逃げない、人ごとにしない、向き合う、認める、話して、コミュニケーションをとって考えること」を誓ってシンポジウムを閉じたいと思います。