【書き起こし】『Hopping Magazine #1 -Move to Learn-』 創刊パーティ トークセッション(佐々木俊尚×市橋正太郎×長畑宏明)
住まいを固定せずに拠点を転々とする次世代のライフスタイル "アドレスホッピング"。2019年はメディアでも多数取り上げられたが「文化が消費されてしまう」と実践者である自らでカルチャーを定義し、発信の必要性を抱く。
『Hopping Magazine』は様々な常識に向き合いつつ、遊動する人々の胎動を記録すべく企画・構想された。2019年5月に立ち上がったクラウドファンディングは目標額をわずか3時間で達成、最終的に目標額の282%の支援が集まりプロジェクトは走り出す。
実に一年半に及ぶ制作期間を経て、2/11に創刊号『Hopping Magazine #1 -Move to Learn-』のリリースを記念するパーティが開催された。本記事は東京、長野、福井で三拠点生活を送るジャーナリスト佐々木俊尚氏と本誌編集長でもある市橋正太郎、モデレーターに同誌の編集を手掛けた長畑宏明を迎えたセッションを一部紹介する。
佐々木 俊尚
ジャーナリスト。共創コミュニティSUSONO運営。NHK「世界へ発信!SNS英語術」ニッポン放送「飯田浩司のOK!Cozy up!」AbemaPrimeに各レギュラー出演中。総務省情報通信白書編集委員。福井県美浜町多拠点活動アドバイザー。東京長野福井の3拠点移動生活者。
市橋 正太郎
『Hopping Magazine』編集長。大手IT企業から独立後、家を捨て移動生活を始める。定住に代わるライフスタイルとして「アドレスホッパー」を提唱・実践。カルチャー誌 "Hopping Magazine" や地域体験ツアー"LocalDive" などを手がける。人間の生活圏以外への移動生活を実現するために、2019年7月よりWOTAに参画。サウナが大好き。
長畑 宏明
STUDY編集長。『Hopping Magazine』副編集長。大学在学中に音楽誌でライターとして活動。卒業後、ファッションウェブサービスの企業に入社しアプリ、システム、サイト運営を担当。その後、フリーの編集者として音楽誌やファッション誌で執筆する傍ら、26歳のときに『STUDY』を創刊。編集者として忙しい毎日を送るなか、現在もライターとして『THE FASHION POST』などの媒体で執筆している。
「アドレスホッパー」の社会への浸透
長畑 2019年に、「アドレスホッパー」と言う言葉が社会に認知されました。これに対し、文化の中心にいた市橋さんはどう思いますか?また、佐々木さんは東京、福井、長野を中心に多拠点生活をされています。その生き方に違和感はありませんか?
市橋 2018年より実践していましたが、最初は「家を持たない生活」と称していました。今は生活に「移動」を取り入れるという本質的価値を伝える活動をしています。
今回の『Hopping Magazine』も、その一環として始めました。ウェブコンテンツにし、より広く届けることもできましたが、あえて紙媒体にしたのは、やはり消費されてしまうことなく、しっかりと文化として残していくためです。
佐々木 違和感はありませんね。日本にも働き方の文脈で、「ノマド」という言葉が10年前に流行しました。私もノマドワークをテーマにした本を出版しています。ノマドという言葉は「カフェでPCを広げ仕事をすること」ばかりが認知され、場所性に囚われないという本質が伝わらず、文化として広がりませんでした。
現在はインターネットが社会を支えるインフラになっています。スマートフォン一つであらゆるサービスを瞬時に利用できる時代になった事も大きく寄与しています。この10年ほどで移動生活を成り立たせる「インフラ」が大きく成長しました。滞在するならAirBnBやゲストハウス、移動ツールならGoogleMap、LCCなどの交通機関、その他クラウドサービスなども仕事に不可欠です。それらを活用し、固定の家を持たず移動し続けることが可能になり、時代が追いついたと言えます。
市橋 2018年に『Hopping Night』と称し、アドレスホッパーのイベントを開いてみると、40人以上もの人が集まり、驚きました。それと同時に、「住居を固定しない生活」はムーブメントになるのではないかと、インスピレーションが湧きました。
身軽になれば、気軽に動ける。所有から利用へ。
長畑 夜11時になっても、どこに泊まるかを定めてないことがあると聞き、驚きました。アドレスホッパーはサバイバル力が高いのでしょうか?
市橋 いえ、もともと高いわけではないです。この生活を始めたときは、とても不安でした。90Lのバックパックを担ぎ、キャンプ用のコット(簡易ベッド)やお気に入りの枕なんかも持ちながら移動生活を送る様は、さながら「家を持ち運ぶ」感覚でした。
続けるうちに経験値が溜まってきて、人を頼ったり、街のインフラを活用することで、使うもの、使わないものが二極化していきます。それを厳選していき、当初からすれば1/5の量の18Lのバックパックに収まるようになりました。
オンライン倉庫サービス「サマリーポケット」を活用しています。現在持つものは「多機能・軽い・耐久性」の三要素で見極めていて、試して良ければ取り入れ、合わなければサマポケに送ったり、売却しています。
佐々木 今はミニマリズムが人々を引き付けていますね。物を少なく、丁寧に暮らす「ミニマリスト」の住まいは、不動産のサンプル写真かと勘違いします。街を視点を変えて大きな家と見立てた、銭湯、ジム、コワーキングスペース、カフェなどを「利用」する。食事は外食やコンビニで買って済ませる。そこまですると、「家」と言う壁に囲まれる必要性が無くなってきます。ミニマリストが進化しアドレスホッパーが生まれたのではないでしょうか。
余白を生み出す事の大切さ
長畑 市橋さんはこのような生活を「アドレスホッピング」と名付けましたが、昔から松尾芭蕉や、フウテンの寅さんのような方々もいましたね。時代が変わった今も共通点を感じることはありますか?
佐々木 今福龍太さんという文化人類学者は「歩くことは、迷うこと」と指摘されています。かつて、人々の移動の必要性は今ほどありませんでした。平民は農村の中だけで生活していました。地域を跨いで移動する道は少なく、標識もない。芭蕉は「おくのほそ道」で様々な地域へ赴きましたが、終始迷っていたと言えます。その中で出会った情景、物事に心を動かされ詠んだため、人気を博したのでは。
現代で、完璧に整備されたGoogleMapや綺麗に整備された山道などでは、コントロールされている感覚に陥ってしまいます。全て想定した事の中でしか物事が起こらないのは、勿体ないのかもしれません。想像力を超えた「迷い」の中で起こる出逢いこそ面白いのでないでしょうか。
市橋 僕は意図的に「偶然性」を取り入れますね。予定調和が嫌いなんです。事前に行く場所をスマホで調べて、レビューサイトを参照に行く場所を決め、計画を立てて、地図アプリでそこまでの道を最短時間、最短距離で行くなんて、つまらない。あえて調べずに直感を頼ったり、ローカルなおっちゃんに話しかけ、おすすめの食事処を聞いてみることも。行きつけの居酒屋に連れて行ってもらい、そこで飲んでた人たちと仲良くなることもしょっちゅうです。こういう偶然から生まれる幸福は「セレンディピティ 」「引き寄せの法則」とも言われますね。
佐々木 自分では絶対しないだろう、と言うことをあえて体験する事で、「迷い」は意図的に起こせます。そこで失敗しても、笑い話にしてしまえば「エンターテイメント」になります。
市橋 それ、すごく思い当たるエピソードが一つあって。去年(2019年)のクリスマスに、サウナの本場フィンランドに行ってきたんですよ。北部のラップランドに「アイスサウナ」という氷のサウナがあると聞いて期待していたんですが、時間をかけて辿り着いてみたら、閉まっていたんですね。調べずに行ったので「しまった~」と思いながら宿までとぼとぼ歩いていた。すると車から声をかけられ、宿まで送っていただけることに。寒そうにしている僕にサーモンスープを恵んでくれたりして。そのスープはこれまで食べた中でいちばん美味しいと感じました。
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「オープン・フラット」こそが関係構築の秘訣**
長畑 アドレスホッピングをすると、先ほどのエピソードのように偶然の出逢いから始まる関係性も多いと伺います。コミュニケーション能力が求められるのではないでしょうか?
佐々木 市橋くんの行動力と、人と仲良くなる「関係構築能力」には驚かされます。私の拠点の一つの福井で、私が携わっているNPO法人が運営するのゲストハウスに滞在してくれた時がありました。私は彼が来てから二日後、仕事で東京に戻ったのですが、1週間後に、気づけば福井県内のあらゆる場所で繋がりを生んでいました。
市橋 もともと鯖江には縁がある人が何人かいました。その人から紹介してもらうなど、縁を数珠つなぎにしていきます。そうすると共通の知り合いがいて盛り上がるなど、点同士がだんだん線になっていき、時には何かプロジェクトを一緒に起こそう、という話にまで発展することも。
個人的に思うことは、初対面のタイミングでの自己紹介はとても大事。「アドレスホッパーです」と自己紹介することはとてもお得ですね。他人からは高確率で「えっ、どういうことですか?」と反応され、興味関心の対象にしてくれる。「家がないんですよ...」あえて弱点を晒すことも。自分の言いづらいこと、弱いところほどオープンにすることで、共感してくれる人もいます。逆に、他者に対しても年齢や肩書きやなどはあまり重視しなくなりました。
人類に備わる移動の性質
長畑 お二人は移動生活を長くされていますね。このライフスタイルのメリットはどんな所にありますか。面倒に感じることはありませんか?
市橋 全く面倒に感じませんね。むしろ、一箇所に留まっていると淀んだ気さえしてきます。普段は移動により、様々な物や人に出会います。無意識下でインプットが溜まっているのかもしれません。
『Hopping Magazine』にも掲載している「管大輔さん」の事例もご紹介します。彼は会社勤めで、部下を100人以上持つマネージャーです。それだけでなく、自分の会社も経営されています。多移動の期間を経て、今はオランダのアムステルダムと日本の二拠点居住を実現しています。生産性確保のため、完全にオンラインでチームをマネジメントしつつ、オランダの時差を利用して自らの時間も確保する。日本のメンバーとのコアタイムが限られているため、会議などのスピードも劇的に向上したそうで、試した結果、パフォーマンスにも繋がり、この形が最適解だとたどり着いたそうです。
佐々木 私は、そもそも人間は移動型の動物だと考えます。近い例を出すと排泄の習性からはかることができます。「犬」が移動動物で、「猫」は定住動物なんです。犬はもともと移動型の生物のため、排泄物を処理する必要がありません。道端で排泄をしますし、飼い犬であればトイレのしつけが必要です。人間も同じく、幼少期にトイレのトレーニングが必要で、自然には排泄を習得しません。対して、猫は定住型で、排泄物に砂や土をかけることで環境の衛生を維持します。
その他、長い歴史の観点で言えば、人類は500万年前に直立歩行をし以来、遊動的生活を送っていました。ほんの1万年ほど前に、稲作が始まり、それに伴う定住生活が始まったと考えられます。日本人は村社会かつ農耕民族と考えられていて、定住型の民族と言われます。しかし、種の起源であるアフリカから一番遠くまで移動してきたことを考えると、DNAに移動をする性質が刻まれ、移動方生活は性にあっているかもしれません。日本人よりも遠くまで移動したのあ、アラスカからアメリカ大陸へ渡った人々だけです。
”つながり”の価値観の変容
長畑 テクノロジーの力で、”場所性”から人々は解放されています。アドレスホッパーとテクノロジーの関係性に関しては、どう思いますか?
佐々木 数十年前には携帯電話も普及しておらず、その地から離れることは、即ちその地での繋がりを手放すことと同義でした。けれど今では様々なツールのおかげで、存在を感じ続けることができます。平日は勤め人として生活費を稼ぎ、週末は別のコミュニティで自分のライフワークとしての活動をすることもできます。利用するツールにより性質も違うので、うまく使い分け、コミュニティが閉鎖的になることを防げます。かつて人々は「強いつながり」の中で生きていましたが、今は「弱いつながり」で生きています。
社会学者パットナムはイタリアの州を例に、「教会、ボランティア、スポーツ」など、街のコミュニティ活動の活発さと比例して、自治はうまくいくと主張しています。
しかし、それはインターネットが無かった頃の「強い繋がり」の時代の話。現在の人々は様々な場所、コミュニティを移動します。ジョン・アーリ著『モビリティーズ―移動の社会学』では強いつながりとしての「社会関係資本」を前時代のものとし、新たに ”Networork Capital” という概念を提唱しています。それほど弱く、たくさんの場所やコミュニティとつながる時代になりました。
市橋 そうですね。以前は、繋がっている人との連絡ツールがメールか電話かの2択でした。今やそのツールを使おうとすると、仕事上の連絡など、「義務感」を感じてしまいます。連絡がきたら返信しなくてはならないプレッシャーというか。今はFacebookやTwitterなどを見ればやりとりをせずとも、その人が今どんな状況なのかがなんとなく分かります。このゆるい「つながり」が広く、深く増えることもメリットの一つですね。
僕たちアドレスホッパーが、社会に対してどんな価値を提供できるだろう、と考えた時、その弱いつながり同士を「つなげる役割」ではないかと考えています。そうすることで、このライフスタイルが社会に広く受け入れられるのではないかと思います。
佐々木 現在は「関係人口」として「旅行者以上、定住未満」の、活動を共にする関係性構築を目指す自治体も出てきており、日本全国にも盛り上がっている地域が多数あります。人々が移動するする目的は風景、食べ物、交通の便利さなど様々にありますが、結局は「人」が一番強い目的になる。そうして色々な街を転々とする人々とそれを受け入れる人々が、拠点としてビジネスやNPOなどの活動を始めれば、地域の活性化にも繋がります。
アドレスホッパーとローカルの関係性
長畑 アドレスホッパーはよく地方にも出られますよね。市橋さんなんかはご当地サウナプロデューサーなど、地域の人と共にプロジェクトを起こすこともあるとか。地域の人々と仲良くしていくコツはなんでしょうか?
市橋 よく言われる概念にその地に根を張る「土の人」と僕らのように外から来る「風の人」という概念がありますが、風の人が土の人に受け入れられるには、いくつかコツが要ります。
まずはその土地にどれだけの多様性への受容度があるかが重要です。経験則から、多様性を受け入れてくれる地域はオープンに迎え入れてくれます。フラットに接しやすい、ということですね。
そして次に大事なのは、地域の重要人物とつながること。地域は「関係性」がとても大事で、何を言うかより「誰が言ったか」がとても大事になります。様々な繋がりを持っていて、かつ「この人からの紹介なら信頼ができる」という「ハブ人材」を探り当てれれば、地域コミュニティに入りやすいのです。
佐々木 その関係性に敏感になることは不可欠です。例えば、ゴミを出すためにも町内会に入る必要がありますが、町内会に入るには全会一致の賛成が得られねばならないという街もあります。福井の美浜町に拠点を構える際、そういった「ハブ人材」の方が一緒に挨拶回りに行こう、と提案してくれました。その際に、挨拶回りにいく順番が決まっていたのです。ここの住民同士の関係性を「わきまえている」人こそがハブ人材です。
さらにハブ人材は「トリリンガル」でなければいけません。「地方」の地元住民としての言葉を持ちつつも、時に「役場」、時に外部者である「都会」の人とも通じる話ができる。いわば「複数言語」をハブ人材は操れるのです。
市橋 実はこの本を作る過程で、自分の「言語」を増やすことができました。最初はサイバーエージェント時代に習得した「ビジネス」の言葉が自分の中では強かったです。しかし、「編集者」としてクリエイティブ界隈の人たちとプロジェクトを進める中で、その業界の言葉を獲得していきました。編集者も、様々な人々が話す異なる視点の言葉を通訳する「多言語通訳者」でなければいけないという感覚を持ちました。
自分を多面体化することで、本当の自分に気づかせてくれる
長畑 10年から20年前は例えば「会社の中での自分」という人格のみで、複数のコミュニティに属し、様々な「自分」を持つことが難しかったと言えます。場所により、パーソナリティを使い分けるのでしょうか?
佐々木 そうですね。場所やコミュニティが違えば視点も言語、ペルソナも変わる。
私の普段の活動は「スーツ」を着るような方々ととも多く関わります。ただそれだけでなく、奥多摩の方で繋がりのある猟師と共に山にはいることもあります。福井では農業や漁師の方とも繋がります。「〇〇としての自分」という多面体を持つことは、一本軸としての「自分」は何なのかを見出すヒントにもなります。
市橋 僕も地元の兵庫で講演をしたとき、なんと平均年齢65歳のおじいさんおばあさんが120人ほど来てくれたんです。どう話せば伝わるんだろう?と最初は戸惑いました。しかし、「もうストレートに思っていることを隠さず話してしまおう」と、変な忖度なし、手加減なしで話しました。すると意外と受け入れてくれたんですよね。一本の軸が通った強いメッセージにより、おじいちゃん、おばあちゃんの中で新たな視点が生まれたのを感じました。
佐々木 なるほど。世代はもう関係ないのかもしれないですね。多面体としての自分を持つことで、逆に自分を貫く一つの軸が見える。ひとつのことをアイデンティティにしすぎてしまうのは、固執を生んでしまいます。
アドレスホッピングも一つの手段。変容する「ツール」
市橋 「固執」という言葉が出ましたが、実は僕、アドレスホッピングにも固執するつもりはさらさらないんです。たまたま現代は固定の家を持たずとも生活できるから、今は手段としてして実践している、という感覚ですね。シェアエコや移動サービス、居住サービスなどが充実した現代の環境が「インフラ」だとすれば、アドレスホッピングは「ツール」。人によってもその中で感じる価値は違うし、僕自身もずっと移動生活をするとも決めていません。ある期間、固定の家を持つ必要があるならそうすれば良いし。大切なのは、暮らしの中に柔軟性を持って選択していくことです。
佐々木 そうだよね。ツールが変われば価値観も変わる。自動運転がくれば、もう車で寝ればいいか、と多くの人が新しい形の移動生活をするかも。
市橋くんのやっていることは、暮らしに新しい世界観を生んでいて、彼だけでなく、様々な暮らしが生まれている。氷山の一角として、世の中に「アドレスホッパー」が認知され始めている。この世界観のコアは何かはまだわからない。全員が模索している。
メディアとしての『Hopping Magazine』の価値とは
市橋 その根底にある価値観を模索するために、実践している人々を取り上げて、一冊にまとめるということをやりたかったんです。もちろん、アドレスホッピングの良さを喧伝するように作ることもできましたが、それは絶対したくなくて。あくまでも暮らしの選択肢の一つとして、フラットに誰もが選べるライフスタイルにしたい、と思っています。
アドレスホッパーは現代の多くの「常識」と衝突します。そこで終わらせてしまうのでなく、まず常識を疑い、疑問が起こり、それを探る過程で答えや指針ができます。今回の創刊号は「移動と教育」をテーマに設定しました。
もし僕が移動生活をやめるとすれば、結婚して子供を学校に通わせないといけない時かな、と最初は思っていましたし、その両立は難しいと一般的にも考えられています。
けれど、移動生活を続けながら、子育てや教育を行うことができるかもしれない。このような仮説のもとに、反例を調べ、教育システム、実践者の事例、海外の状況などを調べました。あえて結論を出すことはしていませんが、移動と教育は両立可能だし、むしろ移動しながらの方が子供にとっても良い学習効果が与えれらるのでは、という期待を持つことができました。
欲求に従い考え、作っていく過程で探究して知見も深まるので、非常に面白かったです。こんな言い方をしたら支援者には申し訳ないですが、一番学びがあったのは自分自身ではないか、と思っているくらいです。
佐々木 メディアは「媒体」という意味を持ちます。本、テレビ、オンライン動画、ラジオ…様々なものがあり、それは「情報が流れる経路」という側面があります。そして、メディアは「ある文化圏を支える空間」としての役割を持ちます。そこに集まり、人々が楽しめば「コンテンツ」になり、文化が育ちます。
その文化圏はどんなものなのか?という問いに対して、範囲を線引きをすることで「文化」は定義を持つことができます。ノマドはその「線引き」がなかったので人々がうまく理解できず、結果として、文化空間としての訴求力を持てなかったのでしょう。その点、今回の『HoppingMagazine』はアドレスホッピングという文化を醸成させることに大きく寄与しています。
市橋 この文化の価値を探る活動は、半年に一冊のペースで10年ほど続けたいと考えています。一つのカルチャーを醸成していくには少なくともこれぐらいはしなければと思っています。今後とも何卒応援いただければ幸いです。
アドレスホッピングという言葉が認知され始めた2019年。このライフスタイルを実践する人々が増えているとともに、その価値や哲学に関してはまだまだ個人が探るもので、共通認識がありませんでした。個々が持つダイバーシティは尊重しつつ、実践者たちがぶつかる問いや疑問、常識との葛藤をシェアし、共に作り上げられたら楽しいと思います。今後とも、アドレスホッパーな人たちのアクティブな移動的ライフスタイルと、一冊ずつ変化するテーマをお楽しみください。『Hopping Magazine』はAmazonにて発売中です。
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