CTOとして立ち上げしたベンチャーを退職しました
事業や組織の立ち上げとグロースに4年ほど従事した後に退職しました
↓のような経緯で入社した会社です。退職は約1年前(2020年12月)で状況や気持ちの整理がついたので記事にしました。
創業者と副社長が各々2つの事業を担当する構造でスタートした会社。僕は副社長の方と縁があり彼とほぼ同タイミングで(二人とも)副業から始め、こういうプロダクトを立ち上げ、組織やビジネスを育てました。
副社長と僕が入社するタイミングで体制変更を行い、創業者が事実上引退、副社長が社長に、自分がCTOになりました。最終的に立ち上げから数えて合計約4年間、会社や事業の切り盛りをしていました。
退職により関係者皆様方にはご迷惑をおかけして申し訳ございません。
会社は、創業者を中心に体制を変えて継続中です。引き続きよろしくおねがいします。
道半ばではあるが、経験自体はとても価値があるものだったので、道中で大切にしたことを感想交えながらシェアしたいと思います。
ここから先の前提背景
サブスクリプション型のBtoB SaaS事業でARRで0からおよそ1億円程までの事業フェーズを経験しました。
筆者の経歴は、新卒リクルートマーケティングパートナーズで約3年間、様々な新規事業の立ち上げ・グロースを経験。後にCTOとして前職に入社。
事業立ち上げについては、開発者やPdMなどの立場で実務的な経験を積んでいましたが、会社経営は初めての体験でした。
ベンチャーをこれから始める人などを対象に、楽しく続けていくための注意点などが伝わればと考えています。全体通してネガティブな書きぶりですが、ベンチャーは一部が辛い部分以外、基本的に全部楽しいので無理ない範囲でチャレンジして損はないものだと思っています!
また大前提、事業を成長させてこれたのは、一緒に戦ってきた仲間、挑戦を支えてくれた株主の方々、アドバイスを頂いた方々、プロダクトを利用いただき様々な意見をくださったお客様、などなど周囲の皆様のおかげです。この場を借りて感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。
記事の内容は一部の工夫くらいの形で捉えていただけると有り難いです。
では、始めます。
命を大事に!精神を健全に保ち滅びないようにする
ベンチャーでは特に立ち上げ期には多くのストレスが発生します。1つ1つは我慢できても、重なるとキャパを超えるリスクが上がるので、ストレスを溜めない構造を作るのがおすすめです。
継続するタイプの問題は先に手を打って解決する。それが無理なら都度周りに相談して毎回ガス抜きするか、理想的には手助けしてもえると最も有り難いです。
漠然とした不安や悲愴感が発生したときは、仕事を抑えて丁寧な睡眠・運動・食事をして身体側を健康にして改善を待つ。これで十分な休暇がとれなず、改善できない場合は危険信号であることを自覚したほうが良いかと思います。
僕はその状態になるとどうせ仕事が手につかなくなってしまっていたので遊びに行っていました。真面目に仕事を継続してしまうと悪化するかもしれないのでお気をつけください。
一度精神に不調をきたして回復に長期間を要したり、完全回復ができなくなってしまった体験談を良く聞きます。再起不能するくらいであれば撤退したほうが絶対良いです。
あとパニックを起こすレベルのストレスを感じた時は、その場での意思決定は保留する。身体を動かして脳に血を巡らせ冷静に考えられる状態で再考するのが良いです。突発的で誤った決断をするのを防ぎましょう。僕のおすすめはとにかくウォーキングすることです。
常に前向きで建設的にあり続ける
ベンチャーで思い描いた理想に到達するには時間がかかります。最初は良くても、長い間成果が出なかったり、ショッキングな事が起きたり、精神・肉体的な疲弊が続くとネガティブな気持ちになります。
そうなると本能的にできない理由を探して止めたくなったり、諦めに似た負け癖がつくことがあります。
ただ常に建設的に勝ち筋を探して行動し続けないと、問題を突破することは難しいです。事業立ち上げを成功させることは、針に糸を通すような作業であり偶然問題が解決されるようなことは少ないと考えます。
また組織などに所属していたときと違って、上司などが外部から問題を解決してくれたり、次のプロジェクトがアサインされることもないので、問題に向き合い続ける必要があります。
中途半端にやるのは時間を浪費して緩やかに死を待つことと同義です。なので諦めず本気で向き合い続けるか、本当に勝ち筋がないか心が疲れてしまったら冷静に撤退するのが良いと思います。その仕事だけが人生ではないので・・。撤退の判断は精神的に本当に難しいとは思いますが・・。
一緒に立ち上げをやる人は妥協しない
立ち上げフェーズでは重要な意思決定がかなり連続的に発生します。その時々で何を掴むかによって事業の着地点がガラッと別物に変わることがあります。
意思決定にはかなり多面的に個人の特性が反映されるので、専門性とか業務能力だけを頼りに仲間を選ぶのは辞めたほうがよいと思いました。
例えば、ドメイン知識、専門スキル、思考能力、性格、主義思想、身体的・精神的な体力、限界ストレス下における行動習性、協力をお願いできる人間関係など、は今までの経験の中で、意思決定の分け目となりました。
自分は幸運にもとてもやりやすい人たちと立ち上げできたので苦労が少なかったです。仕事の相性がとても良かったか、合わせてくれていたのだと思います。ただうまくいかなかったケースだと、徐々にずれていって最終的に空中分解したみたいな話はよく聞きます。
人生フルベットする前に一度は一緒にしんどい仕事を経験するなりして双方で相性を見極めた方が良いかと考えてます。
副業から起業を始める功罪
フェーズごとにメリットとデメリットがあると考えています。
創業期には、本業があることで個々人のお金的な体力から仮説検証期間が長く取れる、気軽に始められて同僚の凄い人が呼びやすい、などのメリットが大いにあります。
自分も副業という形だったからこそビビらずにスタートできました。
一方事業を立ち上げてから真面目にコミットし始めてからは、時間的に難しいことが多く成長がスローペースになってしまうデメリットが発生し始めます。
なのでなるべく早くフルコミットした方が良いが、メンバー間で意識の違いで空中分解するのがこのタイミングです。
特に優秀な仲間こそ、本業でも高い評価を得ているので退職するのが難しいです。
(優秀さとは無関係ですが、)自分自身も経済・社会的な不安などでビビって中々会社をやめられないという精神状態は長く続きました。起業している同期の大勢に背中を押してもらってようやく決断できた腰抜けでした。
なのでそういうことを諸々考慮して、副業から起業する場合はグロースの予定を立てて計画的に覚悟を決める必要があることは織り込んだほうがよいと考えています。
人にアドバイスを求め、小さくまとまらない
油断すると自分達のチームで出来ることからの積み上げや延長で目標を立ててしまいます。当たり前ですが本当は理想から逆算して、採用等も前提とした戦略を立てる方が良いです。
でも経験が不十分だと理想なんてわかりません。自分は困りました。
色々試した結果、理想を知るためには様々なエキスパートにアドバイスをもらうことが一番着想を得やすかったです。
自分の考えに固執してしまう傾向があったり、ネット検索に慣れすぎていると、わざわざ人を紹介してもらってヒアリングするという発想に至れないかもしれません。自分はできませんでした。
ただすべての情報がネットで公開されているわけではなく、ヒアリングしてわかることは本当に多かったです。
論理的思考のエキスパートである外資戦略コンサルの人たちも良く使う手法であり実用性も保証されているのでぜひお試しください。
事業は一言で説明できるようにする
価値や使い方をシンプルに説明出来ないと、プロダクト導入の難易度とコストが上がります。営業時の訴求に一手間必要になったり、従業員ごとにメッセージングがぶれて、営業難易度の高い商材になってしまいます。また、利用者からみてもゴールや使い方が不明瞭でオンボーディングのコストが大きくなります。
例えば、新しい価値観や運用を導入する場合、パラダイムシフトを促す必要があったり、既存業務から追加で運用工数が掛かるプロダクトは現場に受け入れられにくく、導入に苦労することが多いと思います。
顧客獲得難易度(≒CAC)を高いまま放置してしまうと、将来的に販売単価や顧客獲得方法や採用などで大きな制約となるので気をつけましょう。
日々プロダクトの導入や実績を作りに必死になっていると、獲得に費やしたコストを振り返ることは忘れてしまい、ファイナンスのタイミングで改めて振り返り課題に気づくような状況になってしまうかもしれません。
とはいえ、ビジネスモデルを決めた時点である程度は決まってしまうので、起業アイデアの時点で気をつけるポイントかと思います。
個人的には、既になんらかの形をとって業務が存在していて、解決策がユーザーにとって単純明快かを基準に選ぶと良いかと考えています。例えば業務のクラウド化(SmartHR, freeeとか)などがわかりやすいと思います。
でも現代においては比較的重要度の高い課題でシンプルなプロダクト開発で着手可能な領域には殆ど既存ソリューションがあったり、Microsoft 365やGoogle Appsを利用すれば運用でカバーできるような領域が広がっていて、0から何かを始めるのは中々難しくなってきているとも感じます。
なので新規事業を考える際に、「今まで解けてこなかった課題をユーザーにとって簡単な方法で解く」という命題を考えていると、自分の想像力では、よほど尖ったドメインを選ぶ(市場規模のトレードオフがあるが)か、通常のプロダクトから一歩踏み込んで入力に対して特別な処理を施して自動で何か結論を出してくれる何か、みたいな打ち手に行き着きます。
これからの時代はAIなどと言われたりするのはそういうことが関係しているのでしょうか。
機能は簡単に増やさない
無駄な機能が増えると、段々開発のメンテナンスやユーザーのオンボーディングのコストが増えていきます。特に初期段階に不確定な仮説を元に作ったオリジナリティの高いUIなどは将来不要になる確率がとても高かったです。
不要になったのであれば消すことができればよいのですが、利用してくれるユーザーがいれば消しづらかったり、普通に消すとデグレのようにも見えてしまうので営業的には慎重になりたいポイントです。
なので仮説が不確定な状態では機能開発をなるべく後回しにするのが良いと考えています。その間の対策としては、別の機能で代用して運用してもらい仮説検証しましょう。
よくあって無駄になりにくく運用の柔軟性が高いものの例として、コメントやハッシュタグ機能などが思いつきます。もしあればそういう機能で代用したりしていました。
そもそも仮説検証のためにどうしても作る必要がある場合は、 競合などの類似機能は死ぬほど分析して pros/cons を整理しましょう。多くのプロダクトで生き残っている機能は有用な使いみちがある可能性が高いです。
あとは壊せる前提で作ると良いと思います。技術的に取り外しやすい形で作るのはもちろんのこと、どちらかというとユーザーとの間での期待値調整の方が大切で、クライアントに説明できるのであれば β 機能であるようなコミュニケーションは事前にとっておきましょう。
株や契約はいくら考えても考えすぎることはない
個別性の高い話ではありますが、基本的に株や契約などの話については一度決めた意思決定が不可逆であることが多いです。また知識や経験の乏しい初期の段階で決めることが数多く存在します。
ですので、時間をかけられるだけ、エキスパートに話を聞いて意思決定するのが良いかと考えています。
これらの手続きで、 多くの期待や責任を背負うことになります。これは非常に強力な援護にもなりうるし、大きな制約にもなりえます。
最後にもう一度、過去に一度決めてしまったことは覆せないので、本当によく考えて行動しましょう。
最後に、次に自分がやること
退職後、この1年間で新しい会社を創業して再挑戦をしています。
先日プロダクトもローンチしました。 営業の商談の動画をアップロードすれば自動で提案の要点を分析できるプロダクトです。
組織で共有しきれない情報が必要な人に届いて、挑戦や改革が起きやすい世の中にしたいと考えています。
ロゴにはブラックボックスな状態から価値ある情報を引き出すこと、社名には個人の素晴らしい才覚を引き出すという意味を込めています。
ビジネスの1st stepとしては、今までブラックボックスだった営業商談の可視化と要点の伝達を行い、改善行動が促せるプロダクトを作りました。
SFAなどにより成果の可視化は進んでいるもの、行動の実態を把握するのが難しく(コストが高く)、成功・失敗の因果関係の分析や改善に向けた行動が取りづらいという問題を解消しようとしています。
有り難いことに多種多様な業界の多くの営業組織から引き合いを頂いており、トライアルが進んでおります。
導入に興味を持っていただけた方はぜひDMかHPから連絡いただけると有り難いです。
また開発や営業、全方面で採用中ですので、こちらもDMかHPからよろしくおねがいします。
今後もちょこちょこ情報発信していきたいので、引き続きよろしくおねがいします。