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【やはり、サッカーは複雑なものである】

コロナでおうち時間が増えて、本を読む時間がある。
普段は練習を通じて、アウトプットすることができるが、今はこういった方法でのアウトプットが、ただ本を読むだけよりも良い気がする。
そう思って、軽い気持ちで本を読み直していたら、がっつりと読み直してしまった。しかも、また新しい考えが出てきて、また別の本を読んだり、、脱線しまくっている。。

* * *

「サッカーは複雑なものである」

一年前くらいに前に書いたノートの一番最初のテーマである。
改めて思うことは、選手はそれぞれが全く異なる「個」であること。11の個が相互作用するチームはそれ自体が「不確定」であり、その状態でゲームという予測不可能な環境に対応する必要がある。
そうしたサッカーを「複雑系」として捉えた戦術的ピリオダイゼーション理論。
サッカーに様々なアカデミックな知識や経験を融合させたこの理論が30年以上も前にすでに存在していたことへの驚きである。
ありがたいことに人との出会いと日本でもいくつかの本が出版され、少しずつ知ることができた。当然数冊の本を読んだだけで、理解できるものではない。
しかし、実際に多くの勉強、経験をしている人たちが書いた本からは、学べることがたくさんある。

【ゲームモデルというチーム作り】

少し去年のことを振り返ってみたいと思う。
去年U15の監督をした時に、実際にゲームモデルを作成してチームづくりをしていた。
ゲームモデルと聞くと、なんだか立派なものだが、
ただ、「サッカーを大きく分けた4局面でのチームのやることを統一したもの」である。
ゲームモデルみたいなものは、ほとんどの指導者の頭の中にあるものだが、それを、言葉にしているか、いないかの違いだと思う。
そしてどこまで整理するか、しないかの差だと思う。

実際にゲームモデルを作成して、半年間戦い、振り返る中で以下のことを感じた。

●試合の分析がしやすい。
●ゲームモデルを作成する上で、環境は本当に大事である。
●何より大事なのは、日々のトレーニング。
  ― シンプルな原則
  ― 「組織に分けてTRを行うことの重要性」
  ― 4局面だけではない


"試合の分析がしやすい"
サッカーは何をしても良い。サッカーは自由だ。だからこそ、何が正解なのかをチームで決めなければいけない。自由度が大きすぎると、逆に自由ではなくなってしまう。
何がうまくいって、何ができていないのかわからない。
自分たちのやりたいことを整理しておけば、それが実際の試合でできているのかを確認することができる。試合には相手が存在していて、自分たちのプレーに大きな影響を与える。
自分たちがやりたいことができているか?どれくらいできているか?
どの局面、場面がうまく行っていないのか?それはなぜか?を判断することができる。
スタッフと確認する際にも、スムーズなコミュニケーションを行うことができる。

"ゲームモデル作成する上で、環境は本当に大事である"

ゲームモデルは監督の理想のサッカーではない。理想と現実である。
(そのあたりは、過去に簡単にまとめている)
ゲームモデルにおいて、所属している選手が大事なことは当然予想できるが、環境を考慮することも大事だなと改めて感じた。

例えば、去年のリーグ戦が始まる前に、僕たちはボール非保持の状況において、相手陣地でハイプレッシングを行うかを悩んでいた。所属している選手のフィジカル的な特徴と、心理的な特徴から実施したいと考えていたが、リーグ戦は選手たちが初めて経験する90分ゲームであり、夏の昼にもゲームが開催されることにより、適切じゃないように思っていたからである。
結果的に実施することにしたのは、リーグ戦で7人の選手を交代することができるというルールがあったからである。うまくマネジメントすれば、選手たちの特徴を活かしながら、多くの選手を試合に出すことができると考えた。
このように、所属している大会はリーグ戦かトーナメントか?対戦相手のレベルは?ルール、グラウンド状態?はどうかなどの環境を考慮することは大切。

"何より大事なのは、日々のトレーニング"

綺麗なゲームモデルを作ることが大事なのではない、トレーニングで浸透させることが大切なのである。当たり前だが、どれだけ完璧なゲームモデルを作成したところで、機能しなければなんの役にも立たない。絵に書いた餅である。

人間の学習の仕組みについて、学術的な背景を融合させて、サッカーのトレーニングに取り組んでいる戦術的ピリオダイゼーション理論ではいくつかのトレーニングの法則がある。
このあたりは是非調べてみて欲しい。

― シンプルな原則

ありがたいことに事前にいろんな指導者の方に相談していたので、できるだけシンプルにすることを心がけた。原則はルールではなく、パターンでもない。シンプルでわかりやすいものに設定しなければ、選手が動きににくくなるか、自由になりすぎてしまう。この設定の難しさを感じた。

― 「組織に分けてTRを行うことの重要性」

例えば、同じ4v4の守備のTRでも、右CB、右SB、右ボランチ、右のミッドフィルダーという組織分けをすることで練習でのポイントが変わってくる。どちらもチャレンジ&カバーの要素は入っているが、グループをコントロールすることで試合の中で実際に良く起こる右CBと右SBが相互作用によって守るシーンを多く発生させ、経験することができる。
こういったトレーニングでは、うまくトレーニングを設計しないと、リアリティを求めて効率性が落ちることがある。反対に実際の試合などの相互関係などを設定せず、シンプルな2v2のTRなどで純粋にチャレンジ&カバーを多く体験することも大切である。
良い悪い、の話ではなく、チーム状況でどちらを優先させるか?バランスが取れているか?が大切だと思う。

― 4局面だけではない

サッカーの局面を大きく分けて考えた時に、ボール保持(攻撃)ネガティブトランジション。ボール非保持(守備)ポジティブトランジション。というように分けられる。基本的には、これで問題ないと思うが、ただ、もっと詳しく試合の中で分析したりする上では、これだけだと足りないと感じた。

例えば、ボール非保持(守備)では、相手のビルドアップを防ぐ守備と、相手の崩しを防ぐ守備がある。これらは、目的が異なる。
前者はボールを奪うことが目的であり、後者は、ゴールを守ることが目的である。これらを一つの主原則でまとめることは難しい。
こういった考えがあるのは理解していたが、できるだけ簡単にしたかったことと、そこまで必要性を感じていなかったので、設定していなかった。
ここはもう少し整理する必要があると感じることができた。

【最後に、、。】

言うことは簡単であり、実際にやることは難しい。
僕自身、多くの反省点がある。
全力で取り組んで気づけたことなので、次につなげることができると思う。
選手たちは、良い顔をするようになってきた。練習中の雰囲気は以前よりもすごく良い。
選手も、僕も、もっとよくなれると感じている。

流行っている理論、メソッドが大事なのではなく、本質が大切であると思う。
サッカー自体は、本当にシンプルだ。
相手より多くゴールを入れるために、ゴールを奪う。ゴールを守る。

ゲームモデルはあくまでも、チームをマネジメントする上での一つの方法でしかない。
他にも正解はあると思うし、ゲームモデルを否定するようなものも存在する。
ただ、使用する上でメリットがあるからこそ、普及しているのである。
だからこそ、知っておいて損はない。
しかし、僕もそうだったが、このゲームモデルだけを切り取って考えている人が多いような気がする。
3、4年くらいからプレーモデルやゲームモデルのような言葉が日本で流行り始めた。
ただ、その時も多くの人が知っているといった感じで、説明できる人は多くなかったと思う。
いくつかの本を読み直して思ったことは、改めて根幹にある理論が非常に面白いということである。

「サッカーしか知らない者は、サッカーすらも知りえなくなる」
本の中でのビクトールフラーデがいっている。
他分野での学びが、複雑なサッカーを理解することを大きく助けてくれるかもしれない。
スポーツ科学、組織論、複雑系、心理学、コミュニケーションスキル、本当に多岐に渡る。
一年くらい前に読んだ本だけど、またさらに面白く、そして難しく感じている。
それは、実際に体験して、喜び、悲しみ、悩み、学ぶ必要があると思っているからである。

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