アームチェア・クオーターバック症候群はいつだってワタシのソバにいるハナシ
「そっちにパス展開するのはナイでしょ~」
「このディフェンダーさすがに動きおかしいでしょ~」
「さすがに選手交代するのが遅すぎる。監督は全く学習していない」
私はサッカーが大好きだ。
大好きだが、プレーは全くしない。もっぱら観戦。
TV、現地あわせて年間で80試合、ハイライトも入れると200試合以上見ている自称サッカー通だ。
冒頭に書いたセリフは、過去にサッカーをみていたときに頻繁に私の口から発出されていた罵詈雑言だ。
自宅のソファーに座って、コーラを飲みながら、涼しい部屋で、のんびりサッカーをみて、選手を批判する。なんて安全で犯されない俺の聖域だろう。
サッカーではないかもしれないし、コーラではないかもしれない。ソファじゃなくてアームチェアで、見ているスポーツがアメリカンフットボールだったらどうだろう。
きっと同じようにアメフト観戦をしているアメリカ人がいるだろう。
こうした、経験もないのにあたかもプロフェッショナルな選手・監督よりも知識があるように振舞う人は、「アームチェア・クォーターバック症候群」の傾向があると言えるらしい。
要するに、全くのド素人なのにアメフトを見て、アメフトの花形ポジションであるクォーターバックのスローイング等々に難癖をつける人を揶揄したものだ。
去年、本を通じて知ったこの概念。とても自分を恥ずかしく感じた。
これを知って以来は、スポーツ観戦時の自身の振舞いにはきわめて慎重を期している。(期していると周囲の人もまた、アームチェアにどかっと座って豪快にクォーターバックを批判するように野球をはじめとする様々なスポーツをみていることに気が付く)
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なんでこんな話をしているのかだって?
サッカーをみるときはもう傲慢にはならない私でも、つい先日豪快にアームチェアに座ってしまった恥ずかし体験があったのだ。
恥ずかしいが、ここは三方ヶ原合戦で大敗を期したのち、自身のしかめっ面を絵師にかかせて臥薪嘗胆ならぬ、臥薪嘗しかめ像をした徳川家康よろしく、自分の恥ずかしい経験を残すべく筆をとった。
なお、先の本の著者アダム・グラントは続ける。
イグノーベル賞を受賞した中でも最も著者をうならせた受賞作品は、”ダニング・クルーガー効果”という研究報告だった。
心理学者のダニングさんとクルーガーさんの研究によるもので、
”人は能力が欠如しているとき、自信過剰になる傾向がある”
というものだ。
私は現在ポジウィルさんで同社認定のキャリアカウンセラーになるべく認定講座を受講している。
その中で、キャリア支援対象の相談者に向き合う姿勢のひとつとして、
コップ理論というものを教えてもらった。
話をきくときは、自分の言いたいことや質問したいことはいったんわきにおいて(=コップを空にして)、相手の話で自分のコップを満たす、
という考え方だ。
キャリアカウンセリングは受けたことがあるものの、自身がそれを提供する側になるのは当たり前だが初めて、ピヨピヨの初学者である。
にもかかわらずである。
「オーケー、コップを空にね」とわかったようなフリをしていた。(フリをしていることをその瞬間は知覚できていなかった)
増長せしめた原因は、コップ理論があくまで話を聴くためのスキル・心構えだから。
「話をきく」こと自体はほとんどの人が毎日行っていることだからアームチェアが忍び寄るスキを与えてしまった。
アームチェアに座った私はいう、「オーケー、コップを空にね」
結果どうなったか?
ポジウィル認定講座では、講義日以外に仲間同士でロープレ練習を推奨しているのだが、そこで私は学び舎の友からこんなフィードバックを受けたのだ。
「コップから質問があふれかえっているよ」
齢30も後半に差し掛かってくると率直なフィードバックをもらう機会なんてどんどん減ってくるのでグサッときた。
グサッときたけど、痛快だった。
結局私は、ダニング・クルーガー効果が示す通り、全く経験がない分野の話を「できそう」と安易に理解したつもりになっていたのだ。
その次のロープレはものすごく意識した。きっとまだ足りないけど初回よりはマシになったと思う。
自戒を込めてこの記事を残す。
なお、ダニング・クルーガー効果の逆の状態、つまり特定分野に精通していたり、高い能力を有しているのに自分に全く自身が持てず、自分がペテン師であるかのような気にさせる心の傾向を、インポスターと呼称する。
謙虚を通り越してあまりにも卑屈になっている人をみると周囲も気分がおちてしまうことがある。
「あなたにはせっかく素敵なところがあるのに・・・」
(最近特に謙虚・謙遜と卑屈がくっついちゃってるんじゃないかな?と思うことがあったのでまたnoteに書いてみたい)
アダム・グラントは言う。
「傲慢」にも「卑屈」にもなるな。
キャリアカウンセリング初学者として、謙虚な気持ちで、楽しく学んでいきたい。