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【MTG】雑魚が捕食者を喰う方法

鮫とは、魚を食べる捕食者であり、魚とはその字面のとおり雑魚である。

魚が鮫を食うなんてことは自然界ではほとんど起こらないだろう。あと、鮫も魚だとかいう話も忘れておこう。これは、あくまでたとえ話であり、ここではMTGの話をしている。

鮫(Shark)と魚(Fish)はポーカー用語(以下、ここでいうポーカーは主にテキサスホールデムを指す)だ。語源は他にあるかもしれないけど、知らないし調べてもいないので、とりあえずここではポーカー用語だということにしておく。勝負に負けてチップを提供してくれる弱者をFishと呼び、Fishをカモにする強者をSharkと呼んでいる。まさに鮫が魚を食っている。

ポーカーの話で言うと、「テーブルの中にFishを探して、いなければ自分がFishだ」という言葉がある。基本的に、多人数乱闘戦であるポーカーは、Fishからチップを集めてSharkとの闘いは避けるべきである。Fishからかき集めたチップで余裕ができてから物量でSharkを打倒することができるようになるまでは、じっと機会を窺うべきだ。そして、もしFishがいなければ自分がFishだからその卓から逃げるべきだということになる。

残念ながら、MTGのような1対1のゲームで強者との対戦から逃げることはできない。大型イベントの初戦から有名プレイヤーの名前が対戦相手の欄に見えた時に頭を抱えた経験がある人は少なくないだろう。

しかしながら、MTGにおいても強者との正面からの衝突を避けるという考え方そのものは転用できる。強者が使うであろうデッキとの直接対決、つまり同系対決を避けることで技量の差を直接結果に反映させない選択をすることができる。

もちろん、環境やデッキにも因るだろう。そのデッキが、先手有利1キルコンボデッキだったら相手の技量に依存することが少なく、「まあ相手が上手くても関係ないか」と考えられる。しかし、強者は概ねその技量を十分に発揮できるデッキ選択をする。運の要素を廃して可能な限り技術を発揮できれば、多くの相手を上回ることができるのだから当然だろう。

全く同じデッキで技量に差がある場合、勝つ確率が高いのがどちらになるかは、火を見るよりも明らかである。

ビジネスの世界でも同じことが言える。既に市場が確立され、競争相手が多い業種に後から参入するのは愚行である。「競争とは負け犬がすること」であり、成功を修めたければ「ブルーオーシャン」に飛び込んでいかなければいけない。

もちろん、プレイヤーとして上を目指すのであれば、自身の技量を向上させるためにミラーマッチも受け入れて戦いの中で成長していくべきだ。技術的に劣るからといってデッキ選択を変えるのは逃げでしかない。

また、デッキ選択において、自分の「好き」(得意も含む)以上に優先すべきものもないので、「好きじゃない」選択肢をこれによって選択するくらいなら自分の「好き」を優先すべきなのは変わらない。

少しでも勝利に近付きたいと考えて、みんなが使う一番強いデッキを手にするというのは、その競争の中で勝ち抜く自信のある者が選ぶべき選択だ。自分より技術が高く、練習量が多い相手に対して真正面から技術で争う必要はない。

多分過去の繰り返しにはなるが、ここからは、具体的に自分の経験(もちろんレガシー)を書き出してみる。

≪レンと6番≫が環境を席巻していた2019年。その全期間を≪レンと6番≫を使わなかった。その時期に使っていたのは、BUR Control(Ninja)とUG Omnitellだ。

当時は、≪レンと6番≫を得たRUG Delverが環境のトップだった。元々コンボデッキには耐性があるが、長期戦に弱く、コントロールデッキに負けることが多いDelverが、2マナでゲーム終了まで活躍できるアドバンテージ装置を手に入れ、最強のデッキとしてメタゲームのトップに君臨していた。

そんな中で選択したデッキが、BUR Ninjaというコントロールデッキだった。色事故を起こしそうなレベルの過剰な量の基本土地に加え、≪ボーラスの占い師≫という誰も使っていないカードで盤面を構築し、忍者に繋げる。≪レンと6番≫を無視するためのマナベースとクリーチャーの選択をし、有利から不利に変わってしまったデッキ相性をもう一度ひっくり返すことで高い勝率を記録した。

同年9月頃にデッキを完成させたUG Omnitellはそこからさらに進化している。≪レンと6番≫の構造的な弱さにつけ込んだ。コンボデッキに強いとされる筈のDelverが、2ターン目にプレインズウォーカーを唱えるならライフがなくなる速度は従来より遅くなっている。≪不毛の大地≫が全く効かないコンボデッキならむしろ有利に動けるのではないか。

≪夏の帳≫の登場により検討をしていたUG Omnitellの基本形が完成してから世に知れわたるまで、その勝率は凄まじいものだった。

次は2021年12月。UGW UndoというデッキはMO上で対戦した知人がぶん回していたのを見て構築を教えてもらったデッキだ。独自のチューンは加えたが、ベースは変えていない。

このころは、≪表現の反復≫を得たUR Delverがトップメタの環境だ。またDelverかとは思うが、だいたいレガシーはテンポデッキが最もデッキ相性に左右されず安定して技量を発揮できるデッキとして君臨しているものだ。そしてこの時も同様に、長期戦に強くなったDelverが猛威を振るっていた。

だが、こちらが使うデッキはコントロールデッキだ。多少長期戦に強くなったとしても、どっしりと構えて戦うコントロールデッキには及ばない。コントロールデッキが苦手なコンボデッキに対して強く攻めることができる工夫(HullUndoコンボ)と、トップメタに対する相性差をもって環境に挑んだが、こちらも対処の難しい≪ミンスクとブー≫が登場するまではしっかり勝たせてくれた。

また、≪表現の反復≫は使われる側であり、周囲で禁止論が叫ばれる中でも、1枚アドバンテージを得るだけならそれほど脅威でもないなと考えていた。≪レンと6番≫はどうかって?≪不毛の大地≫を延々と使いまわしつつフィニッシャーも務め、タフ1生物を牽制し続けるのは流石に良くないよ。

そして2024年、青黒の時代。

何か新たなカードを得たわけではないが、1月頃にコンボでもテンポでもないハイブリッド型のリアニメイトデッキがMO上で散見されるようになった。

なお、あのデッキを単に青黒リアニと呼称するのはあまり正しいとは思わない。リアニメイトコンボに特化していないため、コンボの成立確率は低く、コンボ以外の勝ち筋に頼る場合が多いので、「テンポリアニ(アグロリアニ)」「スキャニメイター」といった呼称で分類すべきだと思っているがそれはまた別の話。

このデッキが登場した1月頃は、BUGのコンボ型のリアニメイトを使っていた。そのため、「このテンポ型のリアニメイトとのマッチアップは全然勝てないな」と首を傾げていた。使われて強かったので、試しにそのデッキをプレイしてみたところ、これがしっかり強い。なにより好きなタイプのデッキなので、そのまま使い続けることにして、そのまま現在まで延々と技術を磨いている。

FishからSharkになろうとした。

これまでの自分とは一転して立場が逆である。今度は自分がトップメタ。狩られる側になっている。ミラーマッチでも勝たなければいけないし、このデッキを対策した又は構造的に有利なデッキが周囲を固めている。つえーヤツらと戦えるのは楽しみだし、なにより今は「好き」なタイプのデッキを、登場初期からじっくり使い込んだ経験があるから狩られる側でありつつも勝ちたいという思いが強い。

この三例のような一強(又は二強)環境というのは、逆に言えばその一強を食い荒らすことができるともいえる。MTGは、技量が上である対戦相手を正面から受け止める必要が無いのだから、勝ちたければデッキ選択で上回ってしまえばいい。メタゲームが偏っているなら、偏ったメタゲームに合わせた構築をすればいいのだ。

デッキ構築の段階で、最強のデッキをFishにしてしまえば、ゲームが始まる前からSharkになれる。我々はシゲキでもttwmでものぶでもない。何者でもないFishな自分を受け入れたら、Fishとしてできることはまだある筈だ。








※注:主に特定のイベントに向けた心構えなどの話であって、平時の上手くなるための努力を怠って良いというわけではない。

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