原価を考える(転売問題-補講②)
「“勝”手に“小”論文を書く」人、“勝小”です。
(当noteの前提・諸注意等については、こちらの投稿をご参照ください。)
転売問題の補講を始めましょう。
問題と関連記事の保管先
【問題】
転売行為について、あなたの考えを述べなさい
(勝小自作)
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⇒ <補講②:今ココです>
原価マスクとは
2020.4月末頃に話題になった『原価マスク』ですが、既に完売(全在庫を販売済)のようです。
2020.3月頃から開始された『マスク転売規制』(投稿日時点では規制解除)やその前提となるマスク不足の状況もあり、"原価マスク"というワードはそれなりに広く認知されていたのではないでしょうか。
【原価マスクの概要】
・コンピューター周辺機器等の輸出入販売会社が販売
・普段精密機械を製造している会社(中国)で、クリーンルームを生かして臨時で製造したマスクを輸入&販売
・パッケージに「原価」を明記し原価で販売(販売会社に利益が出ない)ことで話題になった
【原価の内訳】
仕入価格:1,469円
輸送費:150円
関税:69円
倉庫手数料:200円
カード決済手数料:70円
消費税:218円
------------------------
原価合計(=販売価格):2,176円(税込)
(Trinity社 HP<記事編集時点>より)
原価をもう少し考える
※以降の記載は、上記で挙げた『原価マスク』やそれを販売する会社とは一切関係しません。(以降の数値例等は私が勝手に作成したものです。)
原価を2つに分けてみる
いろいろと考え方はありますが、原価(費用)を「変動費」と「固定費」に分ける考え方があります。
変動費:売上(数量・金額)に比例して変動する費用
例)商品仕入高・外注費・販売手数料など
固定費:売上の増減に無関係に発生する費用
例)人件費・地代家賃・減価償却費など
上記はあくまでも例示ですので、
・売上に連動しない販売手数料(金額固定契約)
・売上に連動するテナント料
のように、費目だけでは判断できない部分もありますのでご留意ください。
収支をゼロにする原価
全ての原価が「変動費」であったなら、「販売単価=原価単価」とすれば販売数量に関わらず収支はゼロになります。
しかし、「固定費」が発生することが通常だと思いますので、"販売単価"だけではなく"販売数量"にも留意する必要があります。
具体的には…
仕入価格:1,000円/個
輸送費:20,000円/1ロット(100個以内)
倉庫料:200,000円/月(10,000個 収容可能)
販売手数料:決済金額に対して 5/105 を乗じた額
だったとします。(全て架空の条件)
そして、当該商品は人気商品のため仕入後1ヶ月以内に完売することを前提とすると…
上図のように、販売数量によって収支をゼロにする単価が変化することがわかります。
これは主に、固定費である「倉庫料」が影響しています。
<1個あたりに換算した倉庫料(参考)>
100個:200千円÷100個 = 2,000円/個
1,000個:200千円÷1,000個 = 200円/個
10,000個:200千円÷10千個 = 20円/個
完売できなかった場合(在庫リスク)
上図の場合では、10,000個を販売すれば良さそうに思います。
しかし「すべての在庫が完売する」という条件がない場合には、必ずしもそうとは言えない場合があります。
仮に5,000個までしか売れなかった場合は…
100個や1,000個の場合には収支がゼロになりますが、
10,000個を仕入済の場合には▲6,100千円の赤字を抱えることになります。
さらに、在庫を保有している月数分だけ倉庫料が発生することにもなります。(「在庫一掃セール」を掲げた値下げ販売は、在庫を保有しているだけで生じるコストを勘案した企業の合理的な行動とも言えます。)
まとめ
今回は原価を少しだけ掘り下げてみました。
現実には他にも考慮しなければならないこともあるとは思いますが、なるべく単純化した数値例を挙げてみました。
おまけ
「食べ放題で元を取る方法」は、どこまでの原価が加味されているのでしょうかね。
「店の仕入価格」換算で「お客さんの支払う金額」を食べたとしたら…早々にそのお店は潰れてしまうので、「お客さんが他のお店で食べられる金額」換算とするのが妥当でしょうか。
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