全員マスク
気に入らないな
「気に入らないな」
「やつら生意気だ。オレたちに歯向かって負けたくせに」
「ボス、こういうのはどうです」
「服従の証を着けさせるんですよ」
「お前の言うことは、いつも突拍子もないな」
「だが、そいつはおもしろそうだ」
花粉症
「最近一部の人がくしゃみや原因不明の発熱などで悩まされいる現象について、T大学のK教授は『これは花粉症と言う病気である』という研究結果を発表しました」
「教授によりますと、スギの花粉によるアレルギーに由来するもので、対症療法はあるが一生治ることはないものであるとのことです」
「やばっ、一生治らないんだって」
「知らなかった。そういえばどうも春になると鼻がむずむずしていたんだ」
「ねえねえ、あそこ見て。『花粉症対策マスク』だって」
「さすがにこういうところ早いよね」
これがないと心配で
「山口さん、いつもマスクしてますね」
「ああ、これね花粉症なの」
「そっか、最近多いよね」
「うちの課なんて、半分くらいの人がしているよ」
「顔が隠せていいよね。化粧も楽だし」
「そうそう」
「これがないと心配だしね」
そろそろ慣れて来たか
「どうだ。オレの見込みは当たっただろう」
「そうですね。まさかこんなに自分から進んで着けるようになるとは思ってなかったです」
「そうだろう」
「でもよく花粉症が流行るのを予測できましたね。私は大儲けできたのでいいんですが」
「お前、自然に流行ったと思っているのか?おめでたい奴だな。頭大丈夫か」
「えっ。どういうことですか?」
「杉がそこら中に植林されたのがいつなのか知らないのか」
「えっ、ずっとあるんじゃないんですか?」
「あと、食品添加物って知ってるか」
「それとどう関係が?」
「そろそろみんなマスク姿にも違和感がなくなってきたな」
「頃合いは良しかな」
全員マスク
「なぜ、この国では皆さんマスクをしているんですか」
「だってあなた、怖い病気が世界中に蔓延しているんじゃないですか」
「マスクしていると大丈夫なんですね?」
「当たり前でしょう」
「いつ頃から皆さんやっているんですか?」
「もう2年ずっとですよ。怖いですからね。これなしではもういられません」
「そうですか。じゃあもう病気の感染はこの国ではなくなったんですね」
「いや、それがね」
「まだまだ新しいのが来るんで、全然油断できないんですよ」