「永遠の」:【毎週ショートショートnote裏お題】宇宙一エモいバックドロップ
Kとは幼馴染であり、親友であり、ライバルだった。
2人して幼い頃からプロレスが大好きで、実際に2人ともプロレスラーになった。
Kの得意技はバックドロップだった。
豪快かつ美しいフォームで繰り出されるその技は、ほぼ百発百中で相手を昏倒させていた。
Kはその甘いマスクも相まって、プロレス界では一番の人気者だった。
それに、確かに強かったので将来を嘱望されていた。
しかし、そんなKが練習中の事故で亡くなってしまった。
あまりにも不条理な出来事に、オレは受け入れることができなかった。
オレはKが出ていた試合の録画をずっと見ていた。
相手の後ろへの回り込み方、腕を組む位置、相手の体を持ち上げたときの腰の入れ方に至るまで。
とにかく、徹底的に、研究した。
1ヶ月後の追悼試合で、オレはバックドロップで相手を沈めた。
会場内はしんと静まり返っている。
その日から、オレはKを背負って生きることに決めた。
今でも脳裏に焼き付いているのは。
あの日の練習風景。
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