「きまぐれ」:【毎週ショートショートnote】世界一しょぼいタイムスリップ

高名な科学者であるJ博士はタイムマシーンを開発した。

形状は手のひらサイズの筒の先にボタンが付いており、ボタンの周りにはダイヤルがあった。
使い方は実にシンプルでダイヤルを行きたい年代に合わせ、ボタンを押すだけ。

しかし、そのシンプルな構造故に問題があった。
ダイヤルを100年前に合わせているのに、辿り着いたのは15年後といった具合に動作がまるでデタラメだったのだ。
博士は倉庫に封印することにした。

ある日の深夜。
指名手配犯の男が、J博士の倉庫に不法侵入した。
金目の物がないか探っていたら、件の装置を見つけた。
円筒形のそれを手に取った途端、警報が激しく鳴り響いた。

男は逃げ出そうとしたが、倉庫の外にはすでに警察が待機していた。
いちかばちか、手に握っている装置を10年前にダイヤルを合わせ、ボタンを押す。
次の瞬間、カチッという音とともに眼前から警察が消えた。
男は状況を理解すると、ひと安心した。


後ろの倉庫からアラームが鳴り響いた。

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