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『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』公開記念! サム・ウィルソンのコミック入門

2025年2月14日に映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』が公開されます。まさに“激動”といえる今の時代のアメリカをマーベル・スタジオがどのように描くのか、“黒人のキャプテン・アメリカ”であるサムが、どのような活躍を見せてくれるのか……大いに注目が集まっています。さて今回は、サムのことを応援しているMCUファンの皆さんに向けて、コミック史における彼の歩みをご紹介しましょう。ナビゲーターは、ライター/翻訳家の傭兵ペンギンさんです!

文:傭兵ペンギン

サム・ウィルソン再デビュー!

ついに公開となるMCUの最新作。今作は『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)でスティーブ・ロジャースから盾を託され、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021年)でキャプテン・アメリカとなったサム・ウィルソンがついに映画にも登場するという、ある意味で新たなデビュー作です。

 というわけで、今回はその公開に先駆けて、映画の主人公であるサム・ウィルソンのコミックでの設定とストーリーを簡単に紹介していきます!

ファルコンとしての活躍

サム・ウィルソンは、マーベル・コミックスでの初登場が『Captain America』#117(1969年)となかなかの歴史のあるキャラクターです。彼を作り出したのは、編集者兼ライターのスタン・リーとアーティストのジーン・コーラン。当時のアメリカでは人種差別や人種隔離の撤廃を求めた公民権運動を背景に、公民権法が1964年に制定されたばかりで、主要なコミック出版社での初めての「黒人スーパーヒーロー」としてブラックパンサーがデビューを果たしたのは1966年。サムが登場したのは、そこからまだ数年というタイミングでした。
 
その初登場号のストーリーでは、サム・ウィルソンはカリブ海の島に飛行機事故で不時着したアメリカ人として登場し、その島で偶然にもレッド・スカルと身体を入れ替えられてしまったキャプテン・アメリカに出くわし、相棒のハヤブサ「レッド・ウィング」と共にレッド・スカルの手下と戦ってキャプテン・アメリカ(身体はレッド・スカル)を助けるというものでした。MCUでサムが連携して戦うドローンのレッド・ウィングは、コミックでは本物のハヤブサだったのです!

『Captain America』#117(1969年)

レッド・スカルの手下と戦う過程で、格闘訓練を受けた後にキャプテン・アメリカから「ファルコン」と名乗ってヒーローになることをすすめられ、サムは現地の人に作ってもらったコスチュームを着ます。そしてキャプテン・アメリカと現地の人々とも協力して、レッド・スカルの手下を倒すことに成功します。

スーパーパワーを得る

それからキャプテン・アメリカと共にレッド・スカル本人とも対峙するのですが、その時にコズミック・キューブを使った攻撃を受け、その影響で「レッド・ウィングとテレパシーで交信して視界を共有する」というパワーを獲得します。というわけで、MCU版とは異なり、コミック版のサムはスーパーパワーの持ち主なのです。
 
その後のストーリーでは、キャプテン・アメリカと共にアメリカへと帰国。そこで一旦二人は別れたものの、しばらくしてから共に活動するようになり、キャプテン・アメリカの相棒として長らく活躍し、ディフェンダーズアベンジャーズといったヒーローチームにも加わるのでした。
 
またその過程で、ブラックパンサーにジェット式の滑空翼を作ってもらい、映画版と同じく空を自在に飛び回りながら戦うヒーローとなったのでした。

キャプテン・アメリカとなる

2012年からスタートした『Captain America』誌で、キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースはヴィランのアイアン・ネイルとの戦いの中で超人血清を無効化され、急速に老化してしまったため、後にスティーブは共に戦ったサムに自身の盾を託すというストーリーが展開され、正式にサムが新たなキャプテン・アメリカとなったのでした。

ちなみにコミックでサムが新キャプテン・アメリカになることが明らかになったのは、ちょうどサムがファルコンとしてMCUデビューを果たす映画『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』が公開された2014年で、何かとサムが話題になった年でした。

コミックでは、スティーブ・ロジャースが暗殺された際にバッキーがキャプテン・アメリカとして活動をしていた時期もあったのです。なので、筆者は映画でも先にバッキーがキャプテン・アメリカを引き継ぐのかな……と当時は考えていたことを思い出しますね。

『ALL-NEW CAPTAIN AMERICA』#1(2014年)

そして2014年からキャプテン・アメリカとなったサムが主人公の単独誌『All-New Captain America』がスタート。サムがキャプテン・アメリカの宿敵であるヒドラなどと戦いながら、キャプテン・アメリカが持つ責任や意味は何なのかを考え、自分なりの答えを見出していくというストーリーが展開されました。

『オールニュー・キャプテン・アメリカ:ヒドラの逆襲』
2,640円(10%税込)

ちなみにこちらのストーリーは、ShoPro Booksから『オールニュー・キャプテン・アメリカ:ヒドラの逆襲』というタイトルで邦訳版が発売中。『トーキョー・ゴースト』でもおなじみのリック・リメンダーによるストーリーもさることながら、アーティストのスチュアート・イモネンのダイナミックかつ緻密なアートも注目のタイトルです。

『Captain America: Sam Wilson』 #1(2015年)

その後、2015年から『Captain America: Sam Wilson』という新タイトルがスタート。こちらのシリーズでは、サムが組織ではなく市民のために戦う独立したヒーローとなることを決断したことで、政府やメディアだけでなく市民からもネットを中心に激しいバッシングを受けながら、活躍していく姿が描かれました。
 
またこのシリーズでは、映画でも新ファルコンとなることが予告されている、ホアキン・トレスが初登場。MCU版の彼は軍人でしたが、コミックでは「悪の科学者によって改造され、人間とハヤブサのハイブリット超人にされてしまったメキシコ系移民」という設定になっています。
 
腕から生えた翼で自在に空を飛んで戦うことができるだけでなく、改造の際にサムの相棒のレッド・ウィングの遺伝子が使われた影響で、サムとテレパシーで交信が可能という能力の持ち主で、キャプテン・アメリカの相棒として活躍します。

改めてファルコンからキャプテン・アメリカへ

それから後のストーリーで、スティーブ・ロジャースが若さを取り戻し、いろいろあってキャプテン・アメリカとしての活動を再開することとなったため、サム・ウィルソンはスティーブに盾を返してファルコンとしての活動を再開します。この頃の活躍は、ShoPro Booksから発売中の邦訳版『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』にも収録されています。

『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』
2,310円(10%税込)

そして2021年からスタートしたミニシリーズの『The United States of Captain America』では、キャプテン・アメリカの象徴でもある盾が盗まれる事件が発生し、スティーブ・ロジャースとサム・ウィルソンが共に犯人を追ってアメリカを横断する中で、キャプテン・アメリカを名乗る多種多様な人々と出会っていくという物語が描かれました。

『ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・キャプテン・アメリカ』
3,080円(10%税込)

こちらもShoPro Booksから邦訳版が『ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・キャプテン・アメリカ』という題で発売中。サムとスティーブがアメリカを横断しながらいろいろな人と出会うロードムービー的な物語で、人々にとってキャプテン・アメリカはなんなのかを描くという、キャラクターの誕生80周年記念作品にふさわしい作品。また、様々なクリエイターが交代しながら描いていくところも、ストーリーと重なる部分もあって面白いポイントとなっています。
 
そしてこの記事を執筆している現在(2025年2月)、スティーブ・ロジャースがキャプテン・アメリカとして活動するなか、サムもまたキャプテン・アメリカの活動を再開しています。彼は新たな盾を作って人々のシンボルとして活躍を続けており、2025年からは『Sam Wilson, Captain America』という題の新シリーズもスタートしたばかり。映画もコミックもこれからの活躍が楽しみなキャラクターですね。

『Sam Wilson, Captain America』 #1(2025年)

こうして振り返ってみると、MCUと並行して展開していたここ最近のコミックの展開が、けっこうな割合でMCU版に組み込まれていて感慨深いものがあります。それでいて、大まかな流れ的には似ていながらも、ストーリーを個別に見ていくと、MCUとコミックで違うのがわかるはず。そういう部分もまた、コミックを読んでこそ味わえる楽しみ方なので、映画と併せてコミックをぜひチェックしてみてくださいね!

傭兵ペンギン
ライター/翻訳者。映画、アメコミ、ゲーム関連の執筆、インタビューと翻訳を手掛ける。『マーベル・エンサイクロペディア』『ストーリー・オブ・マーベル・スタジオ』などを翻訳している。

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