DCユニバース新時代、開幕。『インフィニット・フロンティア』入門ガイド
DCユニバース新時代の幕開けを告げる大作『インフィニット・フロンティア』の日本語版が、11月24日頃に発売されます。その壮大な世界観と個性豊かなキャラクターについて、翻訳者の中沢俊介さんに紹介してもらいましょう。常に進化し続ける、DCコミックスの新たな始まりをお見逃しなく!
文:中沢俊介
インフィニット・フロンティアとは?
“インフィニット・フロンティア”とは、今回発売される単行本の題名であると同時に、2021年3月より始まったDCコミックスの新体制の名称でもあります。
『フラッシュポイント』(ヴィレッジブックス刊)で従来の歴史を一度リセットしたDCコミックスは、以下のような流れで作品世界“DCユニバース”を発展させてきました。
2011年:ニュー52⇒『ジャスティス・リーグ:誕生』(小社刊)からスタート。
2016年:DCリバース⇒『DCユニバース:リバース』(小社刊)からスタート。
2018年:ニュージャスティス⇒『ジャスティス・リーグ:ノー・ジャスティス』(小社刊)からスタート。
そして2021年初頭に『バットマン・デスメタル』(小社刊)が完結すると、DCユニバースは大きく変わりました。“包括宇宙(オムニバース)”という概念を導入すると同時に、これまで封印されていた過去の歴史が、すべて解放されたのです。
個性豊かな登場キャラクターたち
『インフィニット・フロンティア』のカバーに姿を見せ、本編でも中心となるのは以下のキャラクターです。
プレジデント・スーパーマン
地球人名カルビン・エリス/クリプトン星人名カレル。主要なヒーローが黒人である並行世界アース23出身。スーパーマン(クラーク・ケント/カル゠エル)とほぼ同じ生い立ちと能力だが、カルビン・エリスとしての彼はアメリカ合衆国大統領でもある。
アラン・スコット
ヒーロー名グリーンランタン。ヒーローチームJSA(ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカ)の立ち上げメンバーでもあるベテラン。魔力を宿した石スターハート製の指輪を使い、硬さを備えた緑色の光ハードライトによる構築物を生みだせる。
オブシディアン
本名トッド・ライス。アラン・スコットの息子。過去にアランが戦った敵イアン・カーカルの影響で、異次元の闇の領域シャドウランドと結びつき、影を操る能力を得た。
ジェイド
本名ジェニファー(ジェニー)゠リン・ヘイデン。アラン・スコットの娘。アランの能力を受け継ぎ、手のひらから生じるスターハートの光を操る。
ロイ・ハーパー
アメリカ先住民に育てられ、弓矢の名手グリーンアローの相棒スピーディとして世に出る。ティーン・タイタンズ、アウトサイダーズ、ジャスティス・リーグ・オブ・アメリカ、アウトローズといったチームに在籍してきた。アーセナルやレッドアローというヒーロー名でも知られる。
バリー・アレン
ヒーロー名フラッシュ。セントラルシティの鑑識官。異次元のエネルギー源スピードフォースから力を得る高速移動能力者(スピードスター)。DCユニバースにおける、多元宇宙の発見者でもある。
キャメロン・チェイス
政府機関DEO(超常現象対策局)の捜査官。父親はアクロバットというヒーロー名の自警活動家だった。
ダークサイド
半神種族ニューゴッズの一人で、地獄めいた惑星アポコリプスの支配者。長年あらゆる生物の自由意思を奪う数式“反生命方程式”による世界征服をたくらみ、何度もヒーローと激闘を繰り広げてきた。
他にも、『フラッシュポイント』の世界のバットマンであるトーマス・ウェイン、DEOを指揮するボーンズ長官、そして他者の感情を操るヴィランのサイコ・パイレートなどが大きな役割を果たしています。
包括宇宙(オムニバース)──DCコミックスの新たな世界観
新体制インフィニット・フロンティアの特徴の一つとして、“包括宇宙”という概念の導入が挙げられます。
以前のDCユニバースは、52の並行世界からなる多元宇宙と定義されていましたが、『バットマン・デスメタル』にて、無数の多元宇宙からなる包括宇宙に属していると判明したのです。
なお、『バットマン・メタル:プレリュード』(小社刊)には、今回の物語の主要な舞台となる多元宇宙の地図が掲載されています。
DCの今後を担う作家陣が集結!
新体制のかじ取りを任された作家は、ジョシュア・ウィリアムソン。彼はDCリバース期に『フラッシュ:ライトニング・ストライクス・トゥワイス』(小社刊)に始まるシリーズを担当して、同ヒーローの力の源スピードフォースに並ぶ、セージフォース、ストレングスフォースといった設定を考案して、注目を集めました。さらに、スコット・スナイダーが中心となったニュージャスティス期を、ジェームズ・タイノンIVとともに支えた脚本家でもあります。
一方、本編の作画の主軸となったジェルマニコは、ニュージャスティス期に『ジャスティス・リーグ』『グリーンランタン:ブラックスターズ』の仕事で、存在感を増していた折の起用になりました。
本編の他にも、個々のキャラクターに焦点を当てた短編『インフィニット・フロンティア・シークレット・ファイルズ』も収録されている本書ですが、冒頭に掲載された第0号は特別な作品です。新体制全体の導入編的な位置づけで、『バットマン・デスメタル』で“昇天”したワンダーウーマンが狂言回しとなり、短い章立てで、主要キャラクターの現状を紹介しました。各章の担当作家は以下のとおりです。
「インフィニット・フロンティア」
ジョシュア・ウィリアムソン、ジェームズ・タイノンIV、スコット・スナイダー[作]
ジョン・ティムス[画](⇒本書に続いて『スーパーマン:サン・オブ・カル゠エル/ザ・トゥルース』(小社刊)の作画を担当)
「ジャスティス・リーグ」
ブライアン・マイケル・ベンディス[作]
デイビッド・マルケス[画]
(⇒同コンビで、本書に続いて雑誌『ジャスティス・リーグ』を担当)
「バットマン」
ジェームズ・タイノンIV[作]
ホルヘ・ヒメネス[画]
(⇒同コンビは、当時刊行されていた『バットマン:ダーク・デザイン』(小社刊)に始まるシリーズを担当)
「ワンダーウーマン」
ベッキー・クルーナン&マイケル・W・コンラッド[作](⇒同コンビで、本書に続いて雑誌『バットガールズ』『ワンダーウーマン』の脚本を担当)
アリサ・マルチネス[画](⇒本書に続いて、雑誌『ヌビア&アマゾンズ』の作画を担当)
「ワンダーガール」
ジョエル・ジョーンズ[作/画](⇒本書に続いて、雑誌『ワンダーガール』を担当)
「グリーンランタン:アラン・スコット」
ジェームズ・タイノンIV[作]
スティーブン・バーン[画]
「ティーン・タイタンズ・アカデミー」
ティム・シェリダン[作]
ラファ・サンドバル[画]
(⇒同コンビで、本書に続いて雑誌『ティーン・タイタンズ・アカデミー』を担当)
「スーパーマン」
フィリップ・ケネディ・ジョンソン[作](⇒本書に続いて、雑誌『アクションコミックス』『スーパーマン』の脚本を担当)
ジャマール・アイグル[画]
「グリーンアロー&ブラックキャナリー」
ジョシュア・ウィリアムソン[作](⇒2023年から雑誌『グリーンアロー』の脚本を担当)
アレックス・マリーブ[画](⇒本書に続いて、ブライアン・マイケル・ベンディスの脚本による雑誌『チェックメイト』の作画を担当)
「スターガール」
ジェフ・ジョーンズ[作]
トッド・ナウク[画]
(⇒同コンビで、本書に続いて増刊『スターガール・スプリングブレイク・スペシャル』を担当)
「グリーンランタンズ」
ジェフリー・ソーン[作]
デクスター・ソイ[画]
(⇒同コンビで、本書に続いて雑誌『グリーンランタン』を担当)
「フラッシュ」
ジョシュア・ウィリアムソン[作]
ハワード・ポーター[画]
(⇒同コンビで、本書に続いて雑誌『デスストローク・インク』を担当)
「エピローグ」
ジョシュア・ウィリアムソン[作]
ジョン・ロミータ・ジュニア&クラウス・ジャンソン[画]
無数の多元宇宙を含む包括宇宙という、壮大なスケールの設定ではありますが、あくまでも核になるキャラクターを掘り下げた、心に響く物語が追求されています。これを機に、ぜひ新しいDCユニバースに飛び込んでいただければと思います。
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