【連載第1回】『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』大研究
3月19日から配信がスタートしたドラマシリーズ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』。アメコミライターの傭兵ペンギン氏に、このドラマを解説していただくのが本コラムです。連載第1回目の今回は、エピソード1「新たなる世界秩序」に登場した注目キャラクターを紹介!
※この記事ではドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第1話の内容に触れています。未視聴の方はご注意ください。
文:傭兵ペンギン
『エンドゲーム』後の世界で生きるキャラクターたち
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第1話がついに配信! 映画『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』やその続編『シビル・ウォー』のノリをそのまま持ってきたようなアクションがたっぷりの冒頭から始まりつつ、主人公たちの『エンドゲーム』後の世界での辛い現状を描き、新たな脅威をチラ見せするスタートでしたね。
思った以上にアクションの割合は少なめでしたがそのクオリティは高く、スピンオフドラマだからこそできる贅沢な時間の使い方でファルコン(アンソニー・マッキー)とウィンター・ソルジャー(セバスチャン・スタン)のキャラを掘り下げており、これからの展開に期待が高まる!
さて、そんな第1話には新旧いろんなキャラクターが登場しましたが、彼らがコミックではどんなキャラクターなのか簡単に紹介しておきましょう。
バトロック
映画『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』に登場したバトロックが再登場。キャプテン・アメリカと再戦とはなりませんでしたが、今回はファルコンと短いながらも対決。
コミックでは盾を投げればバトロックに当たるとまでは言いませんが、彼はキャプテン・アメリカのエピソードによく登場する常連ヴィラン。スーパーパワーは持たない常人ながら超人たちとも渡り合える身体能力と格闘能力を持つ傭兵。
1966年の『キャプテン・アメリカ』誌での初登場以降、キャプテン・アメリカ関連の作品にはよく登場し、連載第0回で紹介した『デス・オブ・キャプテン・アメリカ』(ヴィレッジブックス刊)では、新たにキャプテン・アメリカとなったバッキー・バーンズと対決しました。また、『ブラックパンサー:暁の黒豹』などにも登場した他、最近では『グウェンプール』(ヴィレッジブックス刊)のシリーズで、主人公グウェンプールの師匠のような立ち位置のキャラクターとして描かれていましたね。
スティーブ・ロジャースに対しては敵ではあるものの敬意も示していることが描かれたり、独自の価値観の持ち主でヴィランながら魅力的な面を持つキャラクター。ドラマでは死ななかったようなので、ぜひ再び登場して今度はもっと広いところで戦ってほしい!
フラッグ・スマッシャーズ
”指パッチン”によって人口が半減した世界のほうがよかったとするテロ集団フラッグ・スマッシャーズ。
まだ謎の組織ではありますが、これまたキャプテン・アメリカのコミックでのヴィランであるフラッグ・スマッシャーことカール・モジェントハウが元ネタでしょう。「旗を破壊するもの」という名前の通りの反国家主義のテロリスト。彼ははテロ組織「U.L.T.I.M.A.T.U.M.(アルティメイタム)」を率いているのですが、これがおそらくドラマの「フラッグ・スマッシャーズ」に影響を与えているのでしょう。
最近では、フラッグ・スマッシャーは第0回で紹介した『All-New Captain America』(未邦訳)の続編的シリーズ『Captain America: Sam Wilson』(未邦訳)に登場しサム・ウィルソンと対決。実はすでにカール・モジェントハウは故人で、その姿をしたライフモデルデコイであり、密かにヒドラのメンバーとなっていたスティーブ・ロジャースにプログラムされ彼の計画の一環として動いていたというお話だったのですが……果たしてドラマに採用されるかな?
ちなみに、ドラマでの彼らの初登場シーンはスイスが舞台でしたが、コミックでカール・モジェントハウはスイスの裕福な銀行家の息子という設定で、そのへんを反映した小ネタだったのでしょう。自分の家からお金を持ち出してきたにはかなりダイナミックな出金だったので、設定はかなり違いそうではありますが……。
新キャプテン・アメリカ!?
そしてついに登場した新キャプテン・アメリカ。絶妙な偽物っぽさがあり一体誰なんだ……という感じかもしれませんが、エンドロールに登場するポスターを見るとジョン・ウォーカーという名前が書かれていますね。
ジョン・ウォーカーはコミックでは、対価と引き換えにスーパーパワーを与える悪の企業パワーブローカーによって超人的な力を与えられた元軍人で、超人レスラーとして活動した後にスーパー・パトリオットという名でヒーロー活動をスタートした人物。
スティーブ・ロジャースがキャプテン・アメリカを辞めた際に新たなキャプテン・アメリカに任命されるも、実は彼を任命した委員会がレッド・スカルに操られていたことがわかり、スティーブ・ロジャースと共にレッド・スカルを倒すと共にキャプテン・アメリカの名と盾をスティーブ・ロジャースに返し、そこから名前と顔を変えアメリカ政府のために働くU.S.エージェントとして活躍しました。
U.S.エージェントはカプコンの格闘ゲーム『マーヴル・スーパーヒーローズ VS. ストリートファイター』の隠しキャラとして登場した後、『マーヴル VS. カプコン』のスペシャルパートナーとして登場していたので、知っているという人は結構多いかもしれませんね。
最近コミックでは、ドラマの配信に合わせてか彼が主人公のミニシリーズ『U.S.Agent』がスタート。アメリカ政府からクビになってU.S.個人事業主になってしまったジョン・ウォーカーの活躍を、映画『ブラックパンサー』(2018年)にも影響を与えた1998年の『ブラックパンサー』誌のライターのクリストファー・プリーストがコミカルに描く、なかなかに面白いシリーズ。政府から支給されていた盾を返還したため、すぐに壊れちゃう盾を使い捨てながら頑張るところなどを見ると、いずれドラマ版の彼もこんな末路が待っているのかな……なんて想像しちゃいます。
コミックでは思想が偏った愛国者で、スティーブ・ロジャースとくらべて荒っぽい人物として描かれがちですが、果たしてドラマではどんな人なのか。ちなみにドラマ版で演じているのは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017年)でスター・ロードの父エゴを演じたカート・ラッセルの息子、ワイアット・ラッセル。顔が父親に結構似ているので、マスクを脱ぐシーンも要注目です。
ホアキン・トレス
ドラマでは重要なキャラではないかもしれませんが、個人的にぜひとも紹介しておきたいのが、ファルコンをサポートしていたトレス。今の所、気のいい相棒って感じのキャラでしたよね。
コミック『Captain America: Sam Wilson』(未邦訳)で初登場したキャラクター、ホアキン・トレスがモデルで間違いないでしょう。彼は人種差別グループ「サンズ・オブ・サーペント」によって誘拐された後、悪の科学者に改造され人間と隼のハイブリット超人にされてしまったメキシコ移民。
しかしその改造に使われたのはサム・ウィルソンの相棒レッド・ウィング(MCU版では機械ですが、コミックでは鳥)の遺伝子で、当時レッド・ウィングは吸血鬼バロン・ブラッドとの戦いで吸血隼となっていたため、ホアキンは人間と隼と吸血鬼のハイブリッドとなり、腕から羽が生え、目が隼で、ちょっとした回復能力があり、さらにレッド・ウィングを通じてサムとテレパシーで連絡がとれるという、なんだか色々と能力が山盛りなキャラクター。
サムによって解放された後に、その能力が認められて新たなファルコンとしてヒーローとして活動を開始。今はサムもキャプテン・アメリカではなくファルコンに戻っているので、二人ファルコンがいる形となっています。
ドラマではどのへんの設定が拾われるのか注目しておきたいところ。しかし、今の所ファルコンの相棒という感じですが、このドラマはファルコンとウィンター・ソルジャーのバディもののはずなので……彼が今後、どうなってしまうのか心配ですね。
と言った具合にキャラクターの紹介だけで目いっぱいになってしまう感じで盛り沢山だった第1話ですが、果たして第2話にはどんなキャラクターやコミックからの引用が出てくるのか。そして何より新キャプテン・アメリカがどんなやつなのか。次回までコミックを読みながら楽しみに待機しておきましょう!
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傭兵ペンギン
ライター/翻訳者。映画、アメコミ、ゲーム関連の執筆、インタビューと翻訳を手掛ける。『ゴリアテ・ガールズ』(ComiXology刊)、『マーベル・エンサイクロペディア』などを翻訳。