【おしえて!キャプテン】#24 コミコンは遊びじゃねえ! オタクの祭典を最効率で周回せよ~SDCC体験記~
コミックファンの祭典サンディエゴ・コミコン
今回は東京コミコンでヘトヘトになった編集部からのリクエストで、海外でのコミコンの思い出やその他のエピソードについて書いていきたいと思います。
といっても、自分がアメリカでコミコンに参加したことは2回しかありません。コミック買わなければもっと行けたんじゃないかと思うんですがね……。ですが2018年に最も有名なサンディエゴ・コミコン・インターナショナル(以下SDCC)に初参加したときは、クリエイターにサインをもらったり、事前注文したコミッションイラストを受け取ったり、新作コミックの発表を視聴したり、さらにはサンディエゴ・コンベンションセンターのホールHで行われる映画の予告編公開を見るため待機列で一晩野宿をしたりと、SDCCのあらゆる要素を満喫してきました。
その時の思い出の一部をご紹介して、よそのコミコンレポートとは一味違う記事をお送りしようと思います。
※写真はすべてSDCC(2018年)にて筆者が撮影したものです。
ファン必見のイベント「パネル」
自分が思うにコミコンをコミコンたらしめる要素として大事なのは「アーティストアレイ」と「パネル」じゃないかなと思っています。
日本のコミコンでもお馴染みの「アーティストアレイ」は、アーティストが基本的には個人で出展しているブース。そして今回紹介する「パネル」はいわゆるパネルディスカッションのことです。会場と同じ建物の会議室や、周辺のホテルの宴会場などを借りて、企業やファンの有志がゲストを集めたトークセッションや質疑応答、あるいは新作のアナウンスなどを行います。
企画の内容は本当にさまざまで、マーベルやDCの新作コミック発表は複数のコマに分けて開催されることもあります。ファンたちが作った映像作品や映画、アニメの上映会もあるようですね。DCもOVAのプレミア上映などを行っています。
ちなみに2022年のプログラムを見ると、ゲーム用ミニチュアのペイント教室、コミッククリエイターを目指す人向けのワークショップ、遊戯王カードゲームのトーナメント、コミックと教育に関するディスカッション、特定のクリエイターをテーマにした発表会……と多様極まりないラインナップだったようです。
ファン必見のパネルですが、どのコマも総入れ替え制ではないため、目当てのパネルがあるならその部屋で前のコマに入っているパネルから参加するのが一番確実です。
残念ながらこうしたパネルの内容はあまり報道に乗りません。どうしてもメインホールの出店や展示ブースが目立つし、パネルの内容自体もファン向けのコアなものが多いからでしょう。
しかし、コミコンで最も注目が集まり、開催場所であるサンディエゴ・コンベンションセンターの「ホールH」を有名にした映画の予告編公開イベントにも、パネルと同じ参加ルールが適用されています。そのことからも、この一大イベントもパネルの延長線上にあることが伺えます。自分がDC映画の発表を見終わった後も、残って次のコマを見ようとする人たちが大勢いました。
一般抽選や運が絡み合い、参加費を払うのも狭き門
参加費を払うだけでこうした貴重なイベントを体験できるのは、未だに信じられません。ただ現実はその参加費を払いたくても、まず一般抽選に参加し熾烈なチケット争奪戦を勝ち残らないといけないのですが……。その上で、現地でも先着といった運が絡んでくるので、本当に狭き門といえます。
一般入場が狭き門である一方で、SDCCの業界関係者入場枠の範囲はかなり広く、コミック作家、編集者だけではなく書店員、司書、アニメ・ゲーム会社勤務まで「業界関係者」の対象になります。さらにそれぞれが1~2名の同行者を連れて行けるのです(2018年当時の話ですが)。そのため、思ったよりも多くの人がこの枠で参加していました。近い業界のお知り合いがいれば業界人枠で参加できる可能性があるので、もし参加してみたいという方は、一度SDCCの公式参加要項をチェックしてみるのもいいかもしれません。
前項から窺えると思いますが、「何時からはあっちのブースでサイン会があり、その次には何時からあの会議室でパネルディスカッションがある。同時に、後で発生するイベントの整理券の配布も別の場所で始まる。移動時間や事前に並ぶ時間を考えたらどれかを諦めざるを得ない……」と悩むくらい多くの企画があるのがSDCCです。どこかで取捨選択を迫られるのは間違いありません。それでも可能な限り効率的にやりたいことをやるため「これは作戦行動としてスケジュールを詰め、不測の事態があった際には臨機応変に対応せねばならない!」と思い、事前情報をまとめ、コミコン専門フォーラムに潜ってノウハウを探り、腕時計や地図(配置図)、スケジュール表など様々な準備をしていったら、同行者たちに呆れられました……。
コミコンの戦い、サイン会
なぜこんなに気持ち悪いプランを事前に立てているかというと、一番の目当てはやはりサイン会です。海外のコミックで作家にサインしてもらうのは、どう考えても貴重な機会ですし、直接お礼や感想、場合によっては質問もできるなんて最高じゃないですか。
サイン会は様々な形で開かれていて、企業のブースで行われることもありますし、ライターのサイン会やアーティストのコミッションを専門に扱う業者がサイン会を主催しているブースもあります。アーティストアレイでもクリエイターたちがサインをしてくれます。
ただ、サイン本はコレクター的価値が出る以上、転売の対象ともなります。そのため善意に甘えて何十冊も持ち込む業者が増えてしまい、近年はサインを有料にするべきか否か……という議論も巻き起こっています。事前にどんなルールがあるのか、ちゃんとチェックしてから臨むのがベストです(日本のサイン会も一緒ですが)。
コミコンの闇
一方、怖い体験をしたのは、限定トイの待機列です。ホールHの待機列は隣のグループと和気藹々話し合ったり、音楽をかけているグループと歌いながら歩いて行ったりと、参加したことはないんですがロックフェスってこんな感じなのかな……と思い、並んでいるだけなのに意外と楽しいものでした。
しかしFunko(フィギュア)の待機列はみんな殺気だっていて険悪な雰囲気……。そんな中販売開始を待っていると、列に一人の男性が近づいてきました。何をするかと思ったらバッグを開き、限定品アソーカ・タノのFunkoを取り出して「誰か、これ買わないか?」と声を掛けてきたのです。なんと転売ヤーでした。流石にスタッフがやってきて追い払っていましたが……。いま思えば、並んでる方にも転売ヤーが多くいたんだろうなと思います。確かにコミックやトイ、原画コレクションはファンが生涯手元に置いておくものとは限らず、将来の価値を見越して取引する面もあります(コミックの鑑定なんてまさにそう)。とはいえ、ここまで露骨なのは引いてしまいました。
もう一つギョッとしたのは、会場前の通りで若い女性2人組が「マリファナいかがですか? 医療用ありますよ?」と声を掛けて歩いていたことです。カリフォルニアは2016年にマリファナが合法化されたとはいえ、これまた露骨で驚きました……。
ルールとマナーと品位を守って楽しいコミコン
でもこうした楽しいコンベンションも、運営の努力と参加者の善意によって円滑に運営されているようなものですよね。最盛期のコミケのように、何十万人も来るイベントだったら絶対に無理なことばかりです。オタクとしての欲を周回で叶えるのもいいですが、他の参加者を不快にさせない、そしてクリエイターに対して失礼のないよう、ルールを守り良識と品性を持って参加しましょう!
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